第104話
文字数 630文字
坂口は今の部署に配属されまりあが先輩として一から仕事を教えてくれた頃から、ずっと好きだったこと。それでも彼氏がいるから諦めようと思ったけれど、できなかったこと。彼氏と別れたと聞いた時は内心小躍りしたけれど、年下男子は懲り懲りだとボヤいていたまりあに、なかなか告白する勇気がでなかったこと。
あんなにまっすぐな目をして告白された事など、まりあは一度もなかった。それまで告白されるにしてもするにしても、流れでなんとなくというパターンがほとんどだったから。ただ、さくら亭で食事をしている時は告白する素振りが全く無かったのに今どうして? とまりあが驚きながらたずねると、坂口が拗ねた子供みたいな顔をしてぼそりと呟いた。
『……あの人、油断できないって思ったから』
ここまで思い出したところでまりあはいきなり手首を掴まれた。
「ひゃあっ!」
びっくりして振り返ると、笑いを堪えた上茶谷がそこにいた。グレーに近い淡いピンクのTシャツの上に麻のジャケットを腕まくりで羽織り、カーキ色のアンクルパンツを合わせている。服装はアパートにいる時とそれ程変わらないはずなのに、改めてお洒落な街のど真ん中でみると、彼の格好 のよさ、そしてキレイな顔立ちが一層際立つようだった。坂口の心配がいよいよ的外れな気がして恥ずかしくなってしまう。呆けたように見上げて来るまりあに構わず、上茶谷は楽しげに微笑んだ。
「店からまりあが歩いてくるの見てたんだけど、通りすぎそうになっていたから迎えにきたわよ」
あんなにまっすぐな目をして告白された事など、まりあは一度もなかった。それまで告白されるにしてもするにしても、流れでなんとなくというパターンがほとんどだったから。ただ、さくら亭で食事をしている時は告白する素振りが全く無かったのに今どうして? とまりあが驚きながらたずねると、坂口が拗ねた子供みたいな顔をしてぼそりと呟いた。
『……あの人、油断できないって思ったから』
ここまで思い出したところでまりあはいきなり手首を掴まれた。
「ひゃあっ!」
びっくりして振り返ると、笑いを堪えた上茶谷がそこにいた。グレーに近い淡いピンクのTシャツの上に麻のジャケットを腕まくりで羽織り、カーキ色のアンクルパンツを合わせている。服装はアパートにいる時とそれ程変わらないはずなのに、改めてお洒落な街のど真ん中でみると、彼の
「店からまりあが歩いてくるの見てたんだけど、通りすぎそうになっていたから迎えにきたわよ」