第36話
文字数 832文字
「昨日Gが暴れまわったから、夜中までかかって消毒液で床をふきまくったんですよ。これでもだいぶ匂いは落ち着いたんだけどなあ。いつもはお香を焚いたりしているんですけど、その匂いと混じったら気持ち悪くなりそうでやめたんです。そのぶん清潔さは確保されていますから安心してください。そのうち鼻が麻痺してきますから気にならくなりますよ。わたしも最初くっさーっておもいましたけど、いま全然わかりません。もし嫌だったら、もっと窓をあけて換気してください」
相変わらずのまりあ節を聞いていると、上茶谷はやっぱり笑いそうになってしまう。
「鼻が麻痺ってあなた……。まあ仕方ないわよね。夜中までお疲れ様」
自分の部屋と間取りは一緒だから、慣れた様子で窓まで歩いていきガラリと開ける。外から冷たい新鮮な空気が一筋入ってきて上茶谷をほっとさせる。それから部屋を見回した。玄関からみえた風景とだいたい同じだ。かわいらしい小物も多少あるけれど、女子の部屋としてはモノが少ない。必要なモノだけ置いてある印象だ。シンプルイズベスト。まりあが得意気な顔をしてそう答えるところが簡単にイメージできて、また笑いそうになるのを咳払いで誤魔化した。
「なにか手伝うことある?」
「あ、じゃあこの布巾でテーブル拭いてもらっていいですか? うどんはできたからすぐ持っていきます」
「了解」
上茶谷は手慣れた様子で布巾を受け取り綺麗に畳むと、丁寧にローテーブルを拭く。彼も一人暮らし歴は長い。料理はあまりしないけれど、一人で暮らしていくくらいの家事能力は十分にある。ふと視線を背中に感じて振り返ると、どんぶりふたつをお盆にのせたまりあが、上茶谷のことをじいっと見ていた。
「やだ。な、なに?」
上茶谷はビクリと肩を揺らして、まりあを警戒するように見た。以前こんなふうに思い詰めた目をしてじっと彼を見つめてきた女に、道端でいきなり抱きつかれたことがフラッシュバックしたのだ。一方のまりあは憂い顔のまま苦笑して、ため息をついた。
相変わらずのまりあ節を聞いていると、上茶谷はやっぱり笑いそうになってしまう。
「鼻が麻痺ってあなた……。まあ仕方ないわよね。夜中までお疲れ様」
自分の部屋と間取りは一緒だから、慣れた様子で窓まで歩いていきガラリと開ける。外から冷たい新鮮な空気が一筋入ってきて上茶谷をほっとさせる。それから部屋を見回した。玄関からみえた風景とだいたい同じだ。かわいらしい小物も多少あるけれど、女子の部屋としてはモノが少ない。必要なモノだけ置いてある印象だ。シンプルイズベスト。まりあが得意気な顔をしてそう答えるところが簡単にイメージできて、また笑いそうになるのを咳払いで誤魔化した。
「なにか手伝うことある?」
「あ、じゃあこの布巾でテーブル拭いてもらっていいですか? うどんはできたからすぐ持っていきます」
「了解」
上茶谷は手慣れた様子で布巾を受け取り綺麗に畳むと、丁寧にローテーブルを拭く。彼も一人暮らし歴は長い。料理はあまりしないけれど、一人で暮らしていくくらいの家事能力は十分にある。ふと視線を背中に感じて振り返ると、どんぶりふたつをお盆にのせたまりあが、上茶谷のことをじいっと見ていた。
「やだ。な、なに?」
上茶谷はビクリと肩を揺らして、まりあを警戒するように見た。以前こんなふうに思い詰めた目をしてじっと彼を見つめてきた女に、道端でいきなり抱きつかれたことがフラッシュバックしたのだ。一方のまりあは憂い顔のまま苦笑して、ため息をついた。