第15話
文字数 846文字
職場のパソコンの前でまりあはあくびを噛み殺した。お昼近くだというのに、まだ頭がぼおっとしていてパソコンのキーボードを叩く指がたびたびとまってしまう。
Gとの死闘後、近くのコンビニに漂白剤と消毒液を買いに走った。敷物についたワインの染み抜きをして目立たない程度には落ちたからようやくホっとした。それからGがはしりまわったところを片っ端から消毒液片手に水ぶきした。終った頃には夜中の一時をまわってしまった。それでもまだ完璧ではない。このあと会社帰りにドラックストアに寄って、置き型の殺虫薬を大量に買って部屋からベランダかまであらゆる場所に設置してG対策はようやく完了 する。そんなこんなでG関連の諸業務に忙殺され、まりあの睡眠は足りていない。
三十一歳の誕生日。散りゆくさくらを肴にワインを飲んで、おいしいケーキもたべて感傷に浸るはずだった。それが風情をかなぐり捨てて必死の形相でGと闘っていたのだ。
(まさに生きていくっていうのはこういうことだよね)
そんなことを考えてうなずいているのに気づき、まりあは笑いそうになった。何かの拍子に人生哲学を長々と語りだし、茶の間のバックミュージックと化してしまった祖父を思い出したのだ。とっくに亡くなってしまったけれどDNAはちゃんと残っている。じいちゃん恐るべしと笑いを噛み殺す。
それとなんといってもあの隣人だ。G騒動で知り合った彼のことがとにかく気になって仕方がない。まりあはポチリとマウスをクリックしたあと頬杖をつく。怪我をさせてしまったのだから、お見舞いをもって今夜にでも謝りにいかないといけないだろう。それほど大怪我にはみえなかったけれど、今日になったら腫れ上がってしまったなんてこともある。
仕事柄保険には各種、保険会社であるこの勤め先で半強制的にはいらされている。ほとんど使った事がなかったからまさかのこの時、必要なら存分に使ってやろうと思っている。怪我のこともあるけれど、とにかく上茶谷は気になる要素満載で、ついつい彼のことを考えてしまう。
Gとの死闘後、近くのコンビニに漂白剤と消毒液を買いに走った。敷物についたワインの染み抜きをして目立たない程度には落ちたからようやくホっとした。それからGがはしりまわったところを片っ端から消毒液片手に水ぶきした。終った頃には夜中の一時をまわってしまった。それでもまだ完璧ではない。このあと会社帰りにドラックストアに寄って、置き型の殺虫薬を大量に買って部屋からベランダかまであらゆる場所に設置してG対策はようやく
三十一歳の誕生日。散りゆくさくらを肴にワインを飲んで、おいしいケーキもたべて感傷に浸るはずだった。それが風情をかなぐり捨てて必死の形相でGと闘っていたのだ。
(まさに生きていくっていうのはこういうことだよね)
そんなことを考えてうなずいているのに気づき、まりあは笑いそうになった。何かの拍子に人生哲学を長々と語りだし、茶の間のバックミュージックと化してしまった祖父を思い出したのだ。とっくに亡くなってしまったけれどDNAはちゃんと残っている。じいちゃん恐るべしと笑いを噛み殺す。
それとなんといってもあの隣人だ。G騒動で知り合った彼のことがとにかく気になって仕方がない。まりあはポチリとマウスをクリックしたあと頬杖をつく。怪我をさせてしまったのだから、お見舞いをもって今夜にでも謝りにいかないといけないだろう。それほど大怪我にはみえなかったけれど、今日になったら腫れ上がってしまったなんてこともある。
仕事柄保険には各種、保険会社であるこの勤め先で半強制的にはいらされている。ほとんど使った事がなかったからまさかのこの時、必要なら存分に使ってやろうと思っている。怪我のこともあるけれど、とにかく上茶谷は気になる要素満載で、ついつい彼のことを考えてしまう。