第190話
文字数 734文字
まりあの感情を逆撫でしてくるようなからかい口調。彼の挑発に乗るのも悔しいので冷静に答える。
『そんなことありません。嫌だったら電話なんてしませんから』
迷いながらも彼に電話したのも結局彼の話というものが気になっているから。上島がまりあに話したいことといったら上茶谷のことしかない。
まりあは上茶谷に距離を置かれているのだ。例えさらになにか決定的なことを上島に言われたとしても、泣き腫らした顔をしてうじうじ悩んでいるより、吹っ切れてよほどいいかもしれない。そう思ったのだ。電話の向こうで上島がふと笑いを漏らすような音が響いたあと彼が言った。
『そりゃ良かった。じゃあ電話じゃなくてちゃんと会って話そうよ。その方が話がしやすいし。善は急げで今夜空いてる?』
びっくりするようなフットワークの軽さをみせて上島はそう斬りこんできた。一方まりあも、幸か不幸か夜に予定など全くなくて断る理由もなかった。それなら腹を括るしかない。そうして今、まりあは車で迎えにきてくれるという上島を待っている。金髪で体格のいい上島は存在自体が目立つ。さらにはNuts Musicの社長だという彼はそれなりに有名人だろうから、何かのメディアで彼を見たことがある人が会社にいるかもしれない。勤めている会社の前に来られて、やましい事などなにもないのに変な噂でもたてられたら困る。だからあえて、会社から少し離れたコンビニの前で待ち合わせしたのだった。
「あーあ」
緊張と、やっぱりやめておけば良かったという尻込みする気持ちと、一体なんの話なのかと気になってしまう感情がまざりあって無意識にまりあがそう呟いた時だった。
「なにがあーあ、なんですかー」
いきなり背後から話しかけられて、まりあは文字通り飛び上がった。
『そんなことありません。嫌だったら電話なんてしませんから』
迷いながらも彼に電話したのも結局彼の話というものが気になっているから。上島がまりあに話したいことといったら上茶谷のことしかない。
まりあは上茶谷に距離を置かれているのだ。例えさらになにか決定的なことを上島に言われたとしても、泣き腫らした顔をしてうじうじ悩んでいるより、吹っ切れてよほどいいかもしれない。そう思ったのだ。電話の向こうで上島がふと笑いを漏らすような音が響いたあと彼が言った。
『そりゃ良かった。じゃあ電話じゃなくてちゃんと会って話そうよ。その方が話がしやすいし。善は急げで今夜空いてる?』
びっくりするようなフットワークの軽さをみせて上島はそう斬りこんできた。一方まりあも、幸か不幸か夜に予定など全くなくて断る理由もなかった。それなら腹を括るしかない。そうして今、まりあは車で迎えにきてくれるという上島を待っている。金髪で体格のいい上島は存在自体が目立つ。さらにはNuts Musicの社長だという彼はそれなりに有名人だろうから、何かのメディアで彼を見たことがある人が会社にいるかもしれない。勤めている会社の前に来られて、やましい事などなにもないのに変な噂でもたてられたら困る。だからあえて、会社から少し離れたコンビニの前で待ち合わせしたのだった。
「あーあ」
緊張と、やっぱりやめておけば良かったという尻込みする気持ちと、一体なんの話なのかと気になってしまう感情がまざりあって無意識にまりあがそう呟いた時だった。
「なにがあーあ、なんですかー」
いきなり背後から話しかけられて、まりあは文字通り飛び上がった。