第88話
文字数 654文字
まりあは不意をつかれてしまい動けなくなる。坂口は視線を逸らさないままゆっくりと口を開いた。息をのんでそれをまりあは見つめる。けれど数秒、さらに時間が経っても、目の前にいる人は口を開いた状態で固まっている。今度はなんともいえない不思議な沈黙が二人の間に横たわった。
「……えーと、坂口くん?」
進展がなさそうなので恐る恐るまりあが声をかけると、坂口は自分でも驚いたように手のひらを口にあてて視線を泳がせた。耳たぶのふちが赤くなっている。
「あ。すいません。あのですね……」
彼は困ったように眉を寄せた。それからとってつけたように早口で言った。
「やっぱり罰ゲームにしときます!」
子供みたいなその言い方。普段は仕事ぶりも口ぶりもキレ味鋭く隙がないのに、今の坂口はツッコミどころ満載の隙だらけだ。なんだか可愛い。そう思ってしまったらまりあは笑いそうになってしまいなんとか堪える。そんな彼女をみて坂口が軽く睨む。
「なに笑ってんすか」
「え、笑ってないよ?」
小学生みたいに拗ねた彼の顔をみたら、さらに笑いがこみあげてきてしまう。それをなんとか堪えようとしていよいよまりあは変な顔になってしまう。彼女を見ていた坂口もふきだした。二人して笑っていたらそこにあった湿った空気はどこかに飛んでいって、いつものカラリとした楽しい空気が戻ってきた。
「じゃあその罰ゲームですけど」
笑いが収まったあと、坂口がようやくいつもの調子を取り戻して真面目な顔でさらりと言った。
「今日は五時に速攻で仕事をおわらせて、俺と飯につきあってください」
「……えーと、坂口くん?」
進展がなさそうなので恐る恐るまりあが声をかけると、坂口は自分でも驚いたように手のひらを口にあてて視線を泳がせた。耳たぶのふちが赤くなっている。
「あ。すいません。あのですね……」
彼は困ったように眉を寄せた。それからとってつけたように早口で言った。
「やっぱり罰ゲームにしときます!」
子供みたいなその言い方。普段は仕事ぶりも口ぶりもキレ味鋭く隙がないのに、今の坂口はツッコミどころ満載の隙だらけだ。なんだか可愛い。そう思ってしまったらまりあは笑いそうになってしまいなんとか堪える。そんな彼女をみて坂口が軽く睨む。
「なに笑ってんすか」
「え、笑ってないよ?」
小学生みたいに拗ねた彼の顔をみたら、さらに笑いがこみあげてきてしまう。それをなんとか堪えようとしていよいよまりあは変な顔になってしまう。彼女を見ていた坂口もふきだした。二人して笑っていたらそこにあった湿った空気はどこかに飛んでいって、いつものカラリとした楽しい空気が戻ってきた。
「じゃあその罰ゲームですけど」
笑いが収まったあと、坂口がようやくいつもの調子を取り戻して真面目な顔でさらりと言った。
「今日は五時に速攻で仕事をおわらせて、俺と飯につきあってください」