第173話
文字数 673文字
まりあは上茶谷に坂口のことを相談したかった。坂口と飲みにいったあのときに、彼と付き合うことは断ったはずだった。けれど保留にしてくれと言われ、さらにはあの後パフェを食べに行ってしまったら、坂口に乗せられて楽しくしゃべってしまい断ったことが曖昧になってしまっていた。
但し彼はあれ以来、積極的にどこかに行こうと誘ってくることはないし、以前と変わらずまりあのことをからかってきたりする。それでいて気づくと時折、せつなげな表情でまりあを見つめていたりするのだ。まりあはどうしていいのかわからなくなっていた。
抱え込んだ膝に頭をのせて目を閉じる。もう夜の十一時。一日仕事をした疲れもあったからだんだんまりあは眠たくなってしまう。相談はできなくてもせめて上茶谷に会いたかった。そのままの状態でうとうとと意識が彷徨い始めた時だった。
とんとんとん
久々に聞いた階段を上ってくる足音に、まりあは顔をあげた。このリズムは間違いなく上茶谷だ。まりあは急いで立ちあがるともどかしげに鍵をまわし、ドアを開けた。そこには予想どおり上茶谷がいた。彼はほんの少し驚いたように瞳を見開いたあと、ふわりと微笑んだ。
「まりあ、ひさしぶりね」
「よかった、会えて」
まりあは力が抜けてしまい、嬉しいのか泣きたいのかわからない曖昧な笑みを浮かべてしまう。本当にこの人と会いたかったんだ、と顔をみた瞬間にはっきりと感じた。
「ダイゴさん、忙しいみたいでなかなか会えなかったから。どうしようかと思いました」
まりあはついつい拗ねたようにそういってしまう。上茶谷はごめんなさいと言って微笑んだ。
但し彼はあれ以来、積極的にどこかに行こうと誘ってくることはないし、以前と変わらずまりあのことをからかってきたりする。それでいて気づくと時折、せつなげな表情でまりあを見つめていたりするのだ。まりあはどうしていいのかわからなくなっていた。
抱え込んだ膝に頭をのせて目を閉じる。もう夜の十一時。一日仕事をした疲れもあったからだんだんまりあは眠たくなってしまう。相談はできなくてもせめて上茶谷に会いたかった。そのままの状態でうとうとと意識が彷徨い始めた時だった。
とんとんとん
久々に聞いた階段を上ってくる足音に、まりあは顔をあげた。このリズムは間違いなく上茶谷だ。まりあは急いで立ちあがるともどかしげに鍵をまわし、ドアを開けた。そこには予想どおり上茶谷がいた。彼はほんの少し驚いたように瞳を見開いたあと、ふわりと微笑んだ。
「まりあ、ひさしぶりね」
「よかった、会えて」
まりあは力が抜けてしまい、嬉しいのか泣きたいのかわからない曖昧な笑みを浮かべてしまう。本当にこの人と会いたかったんだ、と顔をみた瞬間にはっきりと感じた。
「ダイゴさん、忙しいみたいでなかなか会えなかったから。どうしようかと思いました」
まりあはついつい拗ねたようにそういってしまう。上茶谷はごめんなさいと言って微笑んだ。