第23話
文字数 724文字
まりあは上茶谷を珍しそうに見つめてきたけれど、それはハムスターや子犬が初めてみた物体をこれはなんだろうと不思議そうに見上げる瞳に似ていて、邪な感情はまるで感じられなかった。今後それほど接触しないとしても、そういうタイプの人間が隣人なのは上茶谷としては有り難い。
(まあ、またGが出たとかいって大騒ぎされたら困るけど)
歯磨きしながら笑いそうになってしまうのをなんとか堪えて口をゆすぐ。上茶谷はもう一度鏡を覗きこんで顔を確認した。絆創膏を人差し指で軽くつついて顔をしかめる。
「蒼佑 に間違いなくツッコまれるわ、この顔」
小さくため息をつくとそっと視線を鏡から逸してトイレを出た。
☆
「おまたせしました上島様。本日はいかがいたしましょうか」
上茶谷が真面目くさった表情で軽く頭をさげて鏡のなかの上島を見つめる。目があって数秒、しーんとした沈黙のあと上島がぶっと吹きだした。
「なにその顔。どうしたんだよ大悟 、お前でも喧嘩するの?」
上茶谷は予想していたとおり上島がツッコミをいれてきたから小さくため息をつく。
「喧嘩なんてする訳ないでしょ。隣のちんちくりんちゃんにドアをぶつけられたの。ところで今日はどうするの? この前切ったばかりでたいして長くなってないじゃない」
さっさと話題を転換して上島の髪をひと房摘む。多少伸びたものの前回切ってからまだ一ヶ月経っていないから、スタイルもキープしていてたいして切る必要がない。その言葉に上島は首をすくめた。
「明るめな色に変えようかなって思ってさ」
「社長さんはいいわね。気軽に髪の色を変えられて。サラリーマンじゃそうはいかないんでしょ」
「ヨソは知らないけど、うちの社員は自由だよ。金髪の長髪やピンクの奴も普通にいるしね」
(まあ、またGが出たとかいって大騒ぎされたら困るけど)
歯磨きしながら笑いそうになってしまうのをなんとか堪えて口をゆすぐ。上茶谷はもう一度鏡を覗きこんで顔を確認した。絆創膏を人差し指で軽くつついて顔をしかめる。
「
小さくため息をつくとそっと視線を鏡から逸してトイレを出た。
☆
「おまたせしました上島様。本日はいかがいたしましょうか」
上茶谷が真面目くさった表情で軽く頭をさげて鏡のなかの上島を見つめる。目があって数秒、しーんとした沈黙のあと上島がぶっと吹きだした。
「なにその顔。どうしたんだよ
上茶谷は予想していたとおり上島がツッコミをいれてきたから小さくため息をつく。
「喧嘩なんてする訳ないでしょ。隣のちんちくりんちゃんにドアをぶつけられたの。ところで今日はどうするの? この前切ったばかりでたいして長くなってないじゃない」
さっさと話題を転換して上島の髪をひと房摘む。多少伸びたものの前回切ってからまだ一ヶ月経っていないから、スタイルもキープしていてたいして切る必要がない。その言葉に上島は首をすくめた。
「明るめな色に変えようかなって思ってさ」
「社長さんはいいわね。気軽に髪の色を変えられて。サラリーマンじゃそうはいかないんでしょ」
「ヨソは知らないけど、うちの社員は自由だよ。金髪の長髪やピンクの奴も普通にいるしね」