第247話
文字数 603文字
「上茶谷さん、お疲れ様でした」
ラリュール銀座店のビル二階にある事務所。その一角を撮影用にアレンジして、ホームページに載せる宣伝動画の撮影を昼から始めて、夕方近くにようやく撮り終えた。そのタイミングで、司会進行役をつとめたフリーアナウンサーの女性が上茶谷に挨拶に来たのだ。
「お疲れ様でした。スムーズに進行して頂いて助かりました」
上茶谷も丁寧に頭を下げる。地方の局アナからフリーに転じたばかりだという彼女は、年齢も上茶谷より若い。仕事も恋愛でも野心家なのだろう。撮影中も司会進行をソツなくこなしながら、絡みつくような視線を度々感じた。それを笑顔でさらりとかわし、上茶谷は何度かため息をつきそうになるのを堪えた。
「こちらの美容室、とてもステキですよね。ぜひ通わせていただきたいです。なかなかお気に入りのお店って見つからないものですから。上茶谷さんならきっと似合う髪型にしていただけそう」
全開の笑顔を向けてくる人に上茶谷もにっこりと微笑んで答える。
「ぜひいらしてくださいね。
彼女が瞳を見開いたところで、上茶谷はにこやかな笑みを浮かべたままちょっと失礼しますと頭をさげて廊下にでた。思わず大きなため息がこぼれた。こういうやり取りは上茶谷の心を軽くすり減らす。後々面倒になりそうな相手には適度な距離を置くのが上茶谷のやり方ではあるが、仕事絡みの相手には気も遣う。
ラリュール銀座店のビル二階にある事務所。その一角を撮影用にアレンジして、ホームページに載せる宣伝動画の撮影を昼から始めて、夕方近くにようやく撮り終えた。そのタイミングで、司会進行役をつとめたフリーアナウンサーの女性が上茶谷に挨拶に来たのだ。
「お疲れ様でした。スムーズに進行して頂いて助かりました」
上茶谷も丁寧に頭を下げる。地方の局アナからフリーに転じたばかりだという彼女は、年齢も上茶谷より若い。仕事も恋愛でも野心家なのだろう。撮影中も司会進行をソツなくこなしながら、絡みつくような視線を度々感じた。それを笑顔でさらりとかわし、上茶谷は何度かため息をつきそうになるのを堪えた。
「こちらの美容室、とてもステキですよね。ぜひ通わせていただきたいです。なかなかお気に入りのお店って見つからないものですから。上茶谷さんならきっと似合う髪型にしていただけそう」
全開の笑顔を向けてくる人に上茶谷もにっこりと微笑んで答える。
「ぜひいらしてくださいね。
私ではなくても
腕のいい美容師が揃っていますから」彼女が瞳を見開いたところで、上茶谷はにこやかな笑みを浮かべたままちょっと失礼しますと頭をさげて廊下にでた。思わず大きなため息がこぼれた。こういうやり取りは上茶谷の心を軽くすり減らす。後々面倒になりそうな相手には適度な距離を置くのが上茶谷のやり方ではあるが、仕事絡みの相手には気も遣う。