第164話
文字数 721文字
「本日はヘアカットでよろしいですか?」
坂口も営業スマイルを浮かべて答えた。
「はい。それでお願いします」
「ではこちらにどうぞ」
席に案内しケープを掛けたあと鏡越しに坂口と上茶谷は向き合った。
「担当させていただきます上茶谷です。本日はどのようなスタイルにされますか?」
ヘアカタログ一覧があるタブレット画面を差し出そうとした上茶谷に、坂口は手を上げて制した。
「上茶谷さんにお任せします。……俺
そう言ってにっこり笑う様子は、なかなかふてぶてしい。上茶谷の口元もふと緩む。
「……まりあのことは可愛くできる自信はありましたけど、あなたにもそうできるかは保証できかねますけど、ね」
あえて"まりあ”と呼び捨てすると、坂口は一瞬眉を寄せて強い瞳で見つめてきた。
「覚えてましたか? 俺のこと」
この挑むような瞳は忘れたくても忘れられないだろう。上茶谷は苦笑する。
「忘れませんよ。坂口さんインパクトありますから」
一旦そこで言葉を切って鏡越しにその瞳にむかってクールに微笑んでみせた。坂口も全く動じる様子もみせずニヤリと笑う。
「……あなたの話をまりあさんから聞いて、直接話をしてみたくて。生まれて初めて青山の、こんなオシャレな美容室に来ちゃいましたよ」
店内をみまわしてそう言う坂口に上茶谷が問いかけた。
「まりあから聞いたんですか?此処 の店のこと」
坂口は口元にだけ笑みを残して首を振った。
「いえ。上茶谷さんのお名前だけは聞いていたんで。それで青山、美容院で検索したら一発でわかりましたよ。上茶谷さんの予約ってなかなか取れないんですね。ようやく取れたのが今日、この時間しかなかったんで、無理やり仕事を調整してきました」
坂口も営業スマイルを浮かべて答えた。
「はい。それでお願いします」
「ではこちらにどうぞ」
席に案内しケープを掛けたあと鏡越しに坂口と上茶谷は向き合った。
「担当させていただきます上茶谷です。本日はどのようなスタイルにされますか?」
ヘアカタログ一覧があるタブレット画面を差し出そうとした上茶谷に、坂口は手を上げて制した。
「上茶谷さんにお任せします。……俺
も
似合う髪型にしてもらいたくて」そう言ってにっこり笑う様子は、なかなかふてぶてしい。上茶谷の口元もふと緩む。
「……まりあのことは可愛くできる自信はありましたけど、あなたにもそうできるかは保証できかねますけど、ね」
あえて"まりあ”と呼び捨てすると、坂口は一瞬眉を寄せて強い瞳で見つめてきた。
「覚えてましたか? 俺のこと」
この挑むような瞳は忘れたくても忘れられないだろう。上茶谷は苦笑する。
「忘れませんよ。坂口さんインパクトありますから」
一旦そこで言葉を切って鏡越しにその瞳にむかってクールに微笑んでみせた。坂口も全く動じる様子もみせずニヤリと笑う。
「……あなたの話をまりあさんから聞いて、直接話をしてみたくて。生まれて初めて青山の、こんなオシャレな美容室に来ちゃいましたよ」
店内をみまわしてそう言う坂口に上茶谷が問いかけた。
「まりあから聞いたんですか?
坂口は口元にだけ笑みを残して首を振った。
「いえ。上茶谷さんのお名前だけは聞いていたんで。それで青山、美容院で検索したら一発でわかりましたよ。上茶谷さんの予約ってなかなか取れないんですね。ようやく取れたのが今日、この時間しかなかったんで、無理やり仕事を調整してきました」