第144話
文字数 672文字
「俺もブチ切れてさ。いまはセックスしなくても病院にいけば子供はできるよって言い返してた。彼女は首を大きく振って、そういうことじゃない。やっぱり無理だった。ごめんねって。普段は冷静に理詰めで話す彼女がそう言って泣きじゃくるんだよ」
上茶谷は身動ぎ一つせず上島を見つめる。上島は微笑んだまま、話し続けた。
「俺が女性に対して微妙に性欲がわかないっていうか、そそられないってのがそもそもの原因なんだろうけれど。彼女はそれを承知で結婚したわけだから、今思えばセックスだけの問題じゃなかったんだな」
上島は吐息をついたあとまたゆっくりと口を開く。
「友人としてならきっと上手くやっていけたと思う。だけど身体だけじゃなく心の部分でも、女として妻として陽菜をちゃんと愛することができなかった。それを彼女は敏感に感じ取っていたんだな。陽菜なりになんとかしよう、出来るはずだってもがいていたんだ。それを限界まで口に出さないって変なとこが日本人なんだよね」
その時のことを思い出したように、上島は遠くを見つめながら続ける。
「別れようか。俺がそう言ったら、明らかにホッとした表情を浮かべてこくりとうなづいた」
上島は自嘲しながら、視線を床に落とす。
「でも正直俺もホッとした。彼女も俺もこれ以上傷つかなくてすむってね」
大きく吐息をついたあと上島は視線をあげた。上茶谷はただ見つめ返すことしかできない。心が小さく泡立っている。それを感じていないふりをして温度のない口調でようやくたずねる。
「……なにが言いたいの?」
「大悟には、俺と同じ間違いを犯してほしくないって思ってる」
上茶谷は身動ぎ一つせず上島を見つめる。上島は微笑んだまま、話し続けた。
「俺が女性に対して微妙に性欲がわかないっていうか、そそられないってのがそもそもの原因なんだろうけれど。彼女はそれを承知で結婚したわけだから、今思えばセックスだけの問題じゃなかったんだな」
上島は吐息をついたあとまたゆっくりと口を開く。
「友人としてならきっと上手くやっていけたと思う。だけど身体だけじゃなく心の部分でも、女として妻として陽菜をちゃんと愛することができなかった。それを彼女は敏感に感じ取っていたんだな。陽菜なりになんとかしよう、出来るはずだってもがいていたんだ。それを限界まで口に出さないって変なとこが日本人なんだよね」
その時のことを思い出したように、上島は遠くを見つめながら続ける。
「別れようか。俺がそう言ったら、明らかにホッとした表情を浮かべてこくりとうなづいた」
上島は自嘲しながら、視線を床に落とす。
「でも正直俺もホッとした。彼女も俺もこれ以上傷つかなくてすむってね」
大きく吐息をついたあと上島は視線をあげた。上茶谷はただ見つめ返すことしかできない。心が小さく泡立っている。それを感じていないふりをして温度のない口調でようやくたずねる。
「……なにが言いたいの?」
「大悟には、俺と同じ間違いを犯してほしくないって思ってる」