第214話
文字数 624文字
「……まりあ」
「わたしはただ、ダイゴさんの傍にいたいんです。そのために全てを賭けてもいい。本気でそう思っているんです」
まりあの真剣な言葉は上茶谷の疼きを甘い痺れに変えていく。心の内側に滲んでしまいそうな幸福感を必死で押し返す。この感覚が甘ければ甘いほど反動の痛みが強くなることを彼は嫌というほど知っていた。
「……無理よ」
「え?」
「私たちは……お互いが求めている幸せを満たすことはできない。今は一緒にいて楽しくても……いつか失望してしまう日がくるから。まりあとはそうなりたくないの」
視線を落としてあえて温度を感じさせない声でいう。彼にとってまりあが特別な存在であるという事実から、もう目をそらすことはできない。自身の弱さがそんな大切な存在を傷つけているのかもしれない。だからこそちゃんと言わなくてはいけない。張りつめた空気のなかで、エアコンの小さな稼働音だけがしばらく響いていた。俯いていた上茶谷の視界に、ふと伸びてきたまりあの白い腕。上茶谷の手のひらに小さなその手のひらが重ねられ、上茶谷は驚いて顔をあげた。
「ダイゴさん」
静かに彼を見つめている瞳にぶつかった。決して傷ついたりしていないそれは上茶谷をまっすぐ見つめていた。
「どうしてそんなに苦しそうな表情 をしているんですか」
上茶谷は自分が感情を制御し切れず表情に出てしまっていたことを知る。なにかフォローしようと思うものの言葉がうまくでてこない。まりあが上茶谷の言葉を引き取るように続ける。
「わたしはただ、ダイゴさんの傍にいたいんです。そのために全てを賭けてもいい。本気でそう思っているんです」
まりあの真剣な言葉は上茶谷の疼きを甘い痺れに変えていく。心の内側に滲んでしまいそうな幸福感を必死で押し返す。この感覚が甘ければ甘いほど反動の痛みが強くなることを彼は嫌というほど知っていた。
「……無理よ」
「え?」
「私たちは……お互いが求めている幸せを満たすことはできない。今は一緒にいて楽しくても……いつか失望してしまう日がくるから。まりあとはそうなりたくないの」
視線を落としてあえて温度を感じさせない声でいう。彼にとってまりあが特別な存在であるという事実から、もう目をそらすことはできない。自身の弱さがそんな大切な存在を傷つけているのかもしれない。だからこそちゃんと言わなくてはいけない。張りつめた空気のなかで、エアコンの小さな稼働音だけがしばらく響いていた。俯いていた上茶谷の視界に、ふと伸びてきたまりあの白い腕。上茶谷の手のひらに小さなその手のひらが重ねられ、上茶谷は驚いて顔をあげた。
「ダイゴさん」
静かに彼を見つめている瞳にぶつかった。決して傷ついたりしていないそれは上茶谷をまっすぐ見つめていた。
「どうしてそんなに苦しそうな
上茶谷は自分が感情を制御し切れず表情に出てしまっていたことを知る。なにかフォローしようと思うものの言葉がうまくでてこない。まりあが上茶谷の言葉を引き取るように続ける。