第233話
文字数 674文字
小さくて抱きしめるとふわふわしたこの生き物は、存在そのものが愛おしい。こんな感情は一般的な恋とは微妙に違うかもしれない。けれど上茶谷の傍からこの存在が離れていったとしたら。とてつもなく大きな喪失感を味わうことになることをこの同居で思い知った。それはかつて恋人たちと別れたときに感じたものを凌駕 するかもしれない。少し苦しくて尖っているくせに甘さを帯びたこの想いが、恋じゃないとしたらなんて表現したら良いのだろう。
自分こそ酔っているみたいだと上茶谷は苦笑するものの、小さく首を振る。これくらいのアルコールで酔ったりしない。この同居で坂口がまりあとの距離を縮めたように、上茶谷も自分の心に向き合い、気付かされただけなのだ。黙ってそんな事を考えていた上茶谷を、先程の問いの答えを待ってまりあがじっと見つめていたから、上茶谷は微笑む。
「もちろん、それが普通 な恋人の姿なのかもしれないけれど」
そこまで言ってから、軽くワインを口に含んで飲み込んでからゆっくりと続ける。
「でも。恋人の愛情表現はただセックスすればいいだけじゃない。もっと他にもある。違う?」
まりあがヒョッ、というようなおかしな息を吸い方をしたので、上茶谷は思わず声をだして笑ってしまう。
「へんな声出さないで」
「いやいやいやいや! 出ちゃいますよ。綺麗なお顔でそんなコトを言われたら」
慌てたようにそういってワインを継ぎ足したまりあの頬はほんの少し赤かった。今まで決して言わなかった、言うまいとしていた言葉を口にしようとしている。それをわかっていながら上茶谷は呟いた。
「……試してみる?」
自分こそ酔っているみたいだと上茶谷は苦笑するものの、小さく首を振る。これくらいのアルコールで酔ったりしない。この同居で坂口がまりあとの距離を縮めたように、上茶谷も自分の心に向き合い、気付かされただけなのだ。黙ってそんな事を考えていた上茶谷を、先程の問いの答えを待ってまりあがじっと見つめていたから、上茶谷は微笑む。
「もちろん、それが
そこまで言ってから、軽くワインを口に含んで飲み込んでからゆっくりと続ける。
「でも。恋人の愛情表現はただセックスすればいいだけじゃない。もっと他にもある。違う?」
まりあがヒョッ、というようなおかしな息を吸い方をしたので、上茶谷は思わず声をだして笑ってしまう。
「へんな声出さないで」
「いやいやいやいや! 出ちゃいますよ。綺麗なお顔でそんなコトを言われたら」
慌てたようにそういってワインを継ぎ足したまりあの頬はほんの少し赤かった。今まで決して言わなかった、言うまいとしていた言葉を口にしようとしている。それをわかっていながら上茶谷は呟いた。
「……試してみる?」