第165話
文字数 647文字
上茶谷は坂口を見つめた。まりあによると彼はかなり優秀だと言っていたから仕事も忙しいはず。その合間を縫ってわざわざ此処 にくるなんて、余程何か言いたいことがあるのだろう。上茶谷は静かに吐息をついて背筋を伸ばした。
「お忙しいなか、ご来店ありがとうございます」
業務用の笑みを浮かべて頭をさげ坂口の髪の毛に触れる。コシのあるまっすぐな髪の毛。坂口の性格を表しているようだと思う。
「そうですね……とりあえず全体的にまとまりをよくしますね。ドライカットをしてからシャンプーして、最後にもう一度仕上げのカットをします」
指の間に髪の毛を挟み、髪の状態をチェックしながらそう話しかけると、坂口もお任せします、と頷いた。上茶谷がハサミを入れだして暫く、沈黙が続く。切れ味のいいハサミ特有のシャキシャキという音だけが二人の間に響いた。上茶谷もあえて会話をしようとせずカットに集中する。その固まっていた空気を最初に崩したのは、坂口だった。
「先日、まりあさんと二人で飲んだんです」
上茶谷の手が止まる。鏡のなかの坂口を見つめると、彼も探るような目をして上茶谷を見つめていた。
「……そうなんですか」
淡々とあえて温度のない声で呟く。坂口は上茶谷と目を合わせたまま話し続ける。
「ぶっちゃけてしまうと」
坂口はそこまで言って苦笑した。
「告白した返事を貰おうとおもっていたんです」
以前まりあから坂口に告白されたと聞いたことを思い出す。上茶谷は何も言わず彼を見つめていると、その視線に対して坂口は不敵にみえる微笑みをみせた。
「お忙しいなか、ご来店ありがとうございます」
業務用の笑みを浮かべて頭をさげ坂口の髪の毛に触れる。コシのあるまっすぐな髪の毛。坂口の性格を表しているようだと思う。
「そうですね……とりあえず全体的にまとまりをよくしますね。ドライカットをしてからシャンプーして、最後にもう一度仕上げのカットをします」
指の間に髪の毛を挟み、髪の状態をチェックしながらそう話しかけると、坂口もお任せします、と頷いた。上茶谷がハサミを入れだして暫く、沈黙が続く。切れ味のいいハサミ特有のシャキシャキという音だけが二人の間に響いた。上茶谷もあえて会話をしようとせずカットに集中する。その固まっていた空気を最初に崩したのは、坂口だった。
「先日、まりあさんと二人で飲んだんです」
上茶谷の手が止まる。鏡のなかの坂口を見つめると、彼も探るような目をして上茶谷を見つめていた。
「……そうなんですか」
淡々とあえて温度のない声で呟く。坂口は上茶谷と目を合わせたまま話し続ける。
「ぶっちゃけてしまうと」
坂口はそこまで言って苦笑した。
「告白した返事を貰おうとおもっていたんです」
以前まりあから坂口に告白されたと聞いたことを思い出す。上茶谷は何も言わず彼を見つめていると、その視線に対して坂口は不敵にみえる微笑みをみせた。