第57話
文字数 631文字
早足にしなくてもあっという間に上茶谷は追いついてしまう。やはりまりあだった。会社帰りなのだろう。グレーのフレアパンツに丸首のジャケットを羽織って歩いている。そう言う格好をしていると、確かに仕事ができそうな中堅社員みたいにみえると微笑む。それにしても歩くのが遅い。なにかぼんやり考えごとをしているみたいだ。
(もう暗いのに。こんなふうに隙だらけでノロノロ歩いていたら、変な人間を吸い寄せかねないわ)
上茶谷はあえて足音をたてないように背後に近づくと、まりあの肩にわざとそうっとと手を置いた。
「ひぃっーー!!」
ムンクの叫びのような顔をして振り返ったまりあをみて、上茶谷はガマンできずにふきだした。
「な、な、なんだ。ダイゴさんだったのか。へんな人かと思ってめちゃくちゃびっくりしましたよ」
「なんで歩くのがそんなに遅いの? ぼんやり歩いていたら、変質者やひったくりに狙われるわよ」
「はあ。そうですよね。スイマセン。少し考え事をしてて」
そう言ってため息をついたまりあは、どこか遠くを見ていたような視線をゆっくりと上茶谷にむけて微笑んだ。
「あ、お店の予約をとってもらってありがとうございました」
「よかったわ、うまくスケジュールあう日があって」
ちょうど撮影がキャンセルされた日とまりあの平日休みが重なって、一週間後に彼女の髪を切る事に打ち合わせしたのだった。
「すごく楽しみです。ダイゴさんに髪を切って貰えるの」
そういって微笑んだまりあに上茶谷は小さな違和感を覚えた。
(もう暗いのに。こんなふうに隙だらけでノロノロ歩いていたら、変な人間を吸い寄せかねないわ)
上茶谷はあえて足音をたてないように背後に近づくと、まりあの肩にわざとそうっとと手を置いた。
「ひぃっーー!!」
ムンクの叫びのような顔をして振り返ったまりあをみて、上茶谷はガマンできずにふきだした。
「な、な、なんだ。ダイゴさんだったのか。へんな人かと思ってめちゃくちゃびっくりしましたよ」
「なんで歩くのがそんなに遅いの? ぼんやり歩いていたら、変質者やひったくりに狙われるわよ」
「はあ。そうですよね。スイマセン。少し考え事をしてて」
そう言ってため息をついたまりあは、どこか遠くを見ていたような視線をゆっくりと上茶谷にむけて微笑んだ。
「あ、お店の予約をとってもらってありがとうございました」
「よかったわ、うまくスケジュールあう日があって」
ちょうど撮影がキャンセルされた日とまりあの平日休みが重なって、一週間後に彼女の髪を切る事に打ち合わせしたのだった。
「すごく楽しみです。ダイゴさんに髪を切って貰えるの」
そういって微笑んだまりあに上茶谷は小さな違和感を覚えた。