第215話
文字数 685文字
「ダイゴさんの言っていること……わかります。わたしもそう思っていました。男性じゃないから、ダイゴさんの完璧なパートナーにはなれないって。だから諦めようと思っていました。でも……考えてみたら普通 なカップルだって完璧なんてないんですよね。これまでつきあってきた彼氏だって……一緒にいてもなにかがすれ違っていって、合わせようとしても合わせることができなくなって結局別れて」
まりあはそこで照れたように微笑んだ。
「でもダイゴさんとはなにか違う。合わせようとか、もっと言えばジェンダーがどうとかすら、そんなことを考える前に一緒にいたいって思っちゃうんです。そんなふうに思える人にはたぶんもう一生出会えないって思ったから。上島さんと話をしていて、この気持を全部さらけ出さないと後悔するってはっきりわかったんです」
上茶谷は大きく瞳を見開いて彼女を見つめる。まりあは本気だった。そうして彼にも怖れずに本気で彼女に向き合うことを求めていた。しばらく二人で見つめ合う。ゆらゆらとどっちつかずに瞬いていた疼きは、痛みからゆっくりと甘さを帯び始めていく。その感触に上茶谷は戸惑う。
「まりあ……私は」
上茶谷がそこまで言った時だった。静かな空気を微かに揺らすように、くぐもったブザー音が何度も響いてきた。
「……あれ」
まりあと上茶谷は目をみあわせた。
「……まりあの部屋に誰か来たんじゃない?」
今度は上茶谷の部屋のブザーが鳴った。上茶谷が立ち上がりインターホンのスイッチを押す。
「はい」
『……夜遅くすいません。まりあさん、そちらにいますか?』
インターホンのモニターには坂口の姿が映っていた。
まりあはそこで照れたように微笑んだ。
「でもダイゴさんとはなにか違う。合わせようとか、もっと言えばジェンダーがどうとかすら、そんなことを考える前に一緒にいたいって思っちゃうんです。そんなふうに思える人にはたぶんもう一生出会えないって思ったから。上島さんと話をしていて、この気持を全部さらけ出さないと後悔するってはっきりわかったんです」
上茶谷は大きく瞳を見開いて彼女を見つめる。まりあは本気だった。そうして彼にも怖れずに本気で彼女に向き合うことを求めていた。しばらく二人で見つめ合う。ゆらゆらとどっちつかずに瞬いていた疼きは、痛みからゆっくりと甘さを帯び始めていく。その感触に上茶谷は戸惑う。
「まりあ……私は」
上茶谷がそこまで言った時だった。静かな空気を微かに揺らすように、くぐもったブザー音が何度も響いてきた。
「……あれ」
まりあと上茶谷は目をみあわせた。
「……まりあの部屋に誰か来たんじゃない?」
今度は上茶谷の部屋のブザーが鳴った。上茶谷が立ち上がりインターホンのスイッチを押す。
「はい」
『……夜遅くすいません。まりあさん、そちらにいますか?』
インターホンのモニターには坂口の姿が映っていた。