第12話「親交作戦発令!」

文字数 2,159文字

 俺とタバサの連携プレーで、オベール様の息子フィリップは落ち着きを取り戻し、元気良く『挨拶』をこなすと……いつものペースに戻れた。

 完全に落ち着き、正面から俺達を見て、にこにこしているもの。

 こうなれば、最早問題はない。
 当初から俺が考えていた、特別な『親交作戦』の同時発令である。

「オベール様、イザベル様。子供達は子供達同士で仲良くなって貰いましょう。監督役でクッカを付けますから、俺達の泊まる部屋で遊ばせるってどうでしょう?」

 俺と嫁ズがエモシオンで宿泊する際、いつもオベール家城館の続き部屋を用意して貰っている。
 この部屋は、館内でも一番の客間。
 ホテルで言えば、スイートルームというくらい豪華であり、今回お子様軍団が増えても全然問題ない広さ。

 うん!
 子供達が遊んだって、全然問題ない広さなんだって事。

 そもそも、ひとりっ子のフィリップは、普段寂しい思いをしている。
 この城館には、同世代の子で一緒に遊べる者が居ないから。
 遊び相手をしてくれるのが、自分の両親以外には、爺や婆やと呼ぶ俺の義両親、ジョエルさん、フロランスさん夫婦くらいなのである。

 今回、俺がフィリップと同世代の子供達を連れて行くと聞いて、オベール様夫婦は大きな期待を抱いていたに違いない。

 まさに渡りに船。
 俺の子供達が息子の良い遊び相手になると。

 フィリップと触れ合える、同世代の安心安全な子供が居ないというのが、夫婦の深い悩みだったから。

 でも、いざとなれば……
 初対面の子供達だけで遊ぶのは、ちょっとだけ心配したみたい。
 
 だが、そこは俺も抜かりがない。
 大人を、それも子供の母のひとり、クッカが監督についていれば安心だもの。
 俺の提案を聞いて案の定、オベール様、イザベルさんふたりとも、嬉しそうに顔をほころばせる

「おお! それは良い」

 と、オベール様が相好を崩せば、

「ええ! ぜひぜひ!」

 と、イザベルさんも身を乗り出して来たから。

 うん!
 そして計画通りイザベルさんには、アンテナショップ『エモシオン&ボヌール』の総監督としての仕事を頼もう。

「ええっと……イザベル様にもお仕事があります。この大広間で、お茶でも飲みながらウチの嫁ズと『エモシオン&ボヌール』の打合せをお願いしたい」

 これも願ったり叶ったりなのだろう。
 ミシェルは我が子だから勿論、もうウチの嫁ズは愛娘そのもの。
 『アンテナショップ繁盛、エモシオン&ボヌール村の繁栄、発展』という共通の目的の下で話し合えば、もっともっと親密になれる。
 
 当然、イザベルさんは快諾する。

「うん、了解! 頑張るわ!」

 そして、俺はオベール家の政務を当主と相談する事に。

「で、オベール様と俺は、書斎で政務の打合せをしましょう」

「お、おおお……」

 男同士サシで打合せしようという、俺の『仕切り』を聞き、オベール様はピンと来たようだ。
 よほど嬉しいのか、唸ってしまっている。

 そして、

「うむ! ぜひやろう!」

 似た者夫婦とは良く言ったもの。
 オベール様もイザベルさんと同じく身をぐいっと乗り出し、にっこり笑ったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 こうして……
 クッカ&我がお子様軍団はフィリップに。
 クッカを除いた我が嫁ズはイザベルさんと。
 そして、俺がオベール様を。

 作戦は開始され、ユウキ家の各自が3組に分かれて、オベール家の様々な『仕事』をする事となった。
 まあ皆、上手くやるだろう。
 俺は全然心配していない。

 さてさて、俺も自分の仕事をしよう。
 
 そもそもオベール様へ、サシで話す事を誘ったのはいろいろな理由がある。
 まずは男同士気兼ねなく話すのが第一。

 呼び方もオベール様から、親父さんに変わる。
 そして、妻には言えない、『夫の愚痴』も同性の俺なら聞いてあげやすい。
 当然イザベルさんには内緒である……

 オベール様は書斎で俺とふたりきりになって、開口一番、今回の礼を言ってくれた。
 勿論、愛息フィリップへの、俺の気遣いについてだ。
 自分の子供時代に比べ、フィリップは若干線が細いと不安がるオベール様。
 これって良くある話。
 自分を美化して、同じくらい立派になって欲しいと語る父親の典型。
 まともに聞き過ぎると、オベール様の自慢話になだれ込むからほどほどに。
 時間もそんなにないから。

 フィリップの話はそこそこにして、宰相の俺は最初に……たまった政務を相談し、処理する。
 本当はオベール家の実権を握る、『影の領主』イザベルさんがこの場に居た方が良い……
 だから、ここで結論を出した事は仮決定とし、最後にイザベルさんへ決裁を仰ぐ事に。
 そうすればイザベルさんの顔が立ち、満足する、家庭は円満。

 でもさすがにそれをストレートに、オベール様には言えない。
 なので、上手く言葉を選んで伝え、趣旨を伝えておく。

 イザベルさんを心の底から信頼し、べたぼれのオベール様は当然OKだ。
 そんなオベール様を見て、「ああ、この人、凄く幸せなんだなぁ」と俺はしみじみ思ったのであった。
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登場人物紹介

☆ケン・ユウキ(俺)
本作の主人公。
学校卒業寸前、22歳の時に突然謎の死を遂げ、管理神から、サポート女神付きの異世界への転生を打診される。いくつかの選択肢を与えられたが、結局新人女神クッカを選び、外見は15歳の少年として西洋風異世界へ転生。その際、究極ともいえるレベル99の力を与えられた。

結局、転生して流れ着いた先はヴァレンタインという王国の南方、辺境ともいえるボヌール村。その後、数奇な運命に翻弄され、苦難の末に幸せを掴んだ。
転生して約3年後の現在……『ふるさと勇者』としてだけではなく、『ボヌール村村長代理』としても、大車輪の活躍振り。愛する家族と仲間を守る為に日々奮闘中である。

☆クッカ・ユウキ(クッカ)
元々はケンが異世界へ転生した時に、管理神から付けられた新人サポート美女神。レベル99の力を使いこなせるよう、異世界に不慣れなケンを全身全霊でサポート。

出自に重大な秘密を持っており、その後、人間に転生。相思相愛で、ケンの妻となった。
ユウキ家長女タバサの母。ハーブの知識に長けた、優れた魔法使い兼治癒士で上級の力を持つ。

☆クーガー・ユウキ(クーガー)
突如ケンの住む異世界へ降臨した、クッカそっくりの美しい女魔王。クッカと同じく出自に重大な秘密を持っており、ケンに深く執着、世界を滅ぼそうとした。その後、人間に転生し、相思相愛でケンの妻となる。
ユウキ家長男レオの母で、上級の力を持つ優れた魔法使いで戦士。厳しい教育方針の為、子供達から怖れられ、付けられた渾名は『ドラゴンママ』


☆リゼット・ユウキ(リゼット)
ボヌール村村長、ジョエル・ブランシュの娘。

病気になった祖母の為にハーブを摘みに行った際、ゴブリンの大群に襲われ、絶体絶命のピンチに陥る。だが転生したばかりのケンに救われ、運命の出会いを遂げる。
現在はケンの妻でユウキ家第一夫人、母フロランス似のしっかり者。良妻賢母タイプの美人で、フラヴィの母。ライフワークであるハーブ園の経営にも力を入れている。


☆レベッカ・ユウキ(レベッカ)
ケンの妻のひとりで、イーサンの母。唯一ケンを「ダーリン」と呼ぶ。門番ガストンの娘で、整った顔立ちをしたモデル風スレンダー美人。弓術に長けた、優秀な戦士で狩人。結婚しても面食いで、イケメン好きは変わらず。
ケンと初めてした『デート』の際、超ツンデレな性格から、暴走。オーガに襲われ、危うく喰い殺されそうになるが、ケンにより命を救われ、ふたりは結ばれた。

☆ミシェル・ユウキ(ミシェル)
ケンの妻のひとりでボヌール村唯一の商店、大空屋の店主。シャルロットの母。経済感覚に長けた金髪碧眼の超グラマラス美人で、拳法の達人。
明るい性格故、表には出さなかったが、父を魔物の大群に殺され、生きる事に絶望していた。ケンとの出会いで立ち直り、本来のポジティブな性格で家族を支えている。レベッカとは親友同士。母のイザベルは、領主オベールの妻となった。

☆クラリス・ユウキ(クラリス)
ケンの妻のひとりでポールの母。リゼットの親友で、優しそうな垂れ目が特徴。顔立ち通り、大人しい性格の、癒し系美人。洋服作り、絵画、工作などマルチな才能を発揮する。ケンだけしか呼ばないが、別名ボヌール村の、レオナルド・ダ・ヴィンチ。
子供の頃、両親を魔物に殺され、孤独に耐えて懸命に生きて来たが……農作業を手伝ってくれたケンにひとめぼれ。恋に落ち、見違えるように明るくなって、ケンに愛を告白し、結ばれる。


☆ソフィ・ユウキ(ソフィもしくはステファニー)
ケンの妻のひとりで、品のある凛とした美人。ララの母。
正体を隠す為、ケンの魔法で髪と瞳の色を変えてはいるが、実は領主オベールの愛娘ステファニー。貴族社会のしがらみから、寄り親へ『妾』として差し出される寸前に、ケンに救われて結ばれた。

☆グレース・ユウキ(グレースもしくはヴァネッサ)
 ケンの妻のひとりで、ソフィ同様、品のある凛とした美人。
 魔法で正体を隠してはいるが、実は元貴族で、ドラポール伯爵家令嬢ヴァネッサである。
 領主オベールの元・後妻でもあり、血の繋がらない娘ソフィことステファニーとは犬猿の仲だった。
 家の駒として3度も政略結婚をさせられ、心身が疲弊してしまったが……

 ケンに救われ、後に結ばれる。
 村で暮らすようになって、角が取れたのか、芯は強いが本来のおっとりした性格に……

 ユウキ家は勿論、村の子供達全員から、人気ナンバーワンのグレースママとして慕われている。

 ソフィとも和解、実の姉妹以上の間柄となった。

☆サキ・ヤマト(サキ)

16歳の少女。可愛いが、とてもわがままできまぐれ。

ケンが元居た世界・日本で暮らしていたが、不慮の交通事故で死亡し、転生。

管理神により、ケンとは違う異世界へ送られた。

サポート女神の休暇から、臨時の神様を命じられたケンが『担当』となり、いろいろ世話を焼くが……


☆管理神

ケンの住む異世界を含め、いくつかの世界を管理する神。

口癖に独特な特徴がある。

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