第4話「家族会議①」

文字数 2,195文字

 俺と嫁ズがエモシオンから戻った、その夜……
 いろいろ相談確認して、時間の折り合いが上手くついたので、早速、家族会議が開かれる事となった。
 『お題』は勿論、エモシオンのアンテナショップを始めとした『人材募集』の件である。

 ちなみに、残念ながら、またもグレースは欠席。
 生まれて間もない、お子様軍団の末っ子……
 愛娘ベルティーユのお世話が、最重要ミッションだから、当たり前。
 まあ、後で情報共有しておけば、OKでしょう!  
 
 そして、意外な事に、今夜はサキも欠席なのである。
 あの『元気印』『好奇心旺盛』のサキがどうしたの?  
 一体、どういう風の吹き回し?
 って疑問が、当然ながら出るでしょう。

 そのサキの欠席は、本人の名誉の為に言っておくと……
 めんどくさいから『会議をさぼる』というズルでもないし、他の嫁ズ全員から『お仕置き』を受けた精神的ショックでもない。
 『体調不良?』とかいう、鬼のかく乱でもありません。
 
 で、気になる?理由は、何かというと…… 
 何と!
 グレースと一緒に寝て、「ベルの世話をする!」って言い出したのだ。
 それも、『昼間の件』があったから詫びたい……とか、じゃない。

 サキに聞けば、前々から決めていたらしいし、グレースにも、ソフィにもOKを貰っていたという。
 
 理由は「グレースとベルのお世話を、ぜひぜひしたい!」という真っすぐで純粋な動機である。
 加えて、ずっとグレースとベルの世話をして来た、姉と慕うソフィへ……
「負担を少しでも和らげたい!」「たまには休んで、羽を伸ばして」
というから、殊勝である。
 だから、今夜の家族会議の出席者の中には、久々にソフィの顔もあった。
 
 サキの教育係、クーガーが肩をすくめ、苦笑している。

「うふふ、あの子ったら……だから憎めないのよ」

 そうクーガーが口火を切ると、嫁ズから一斉に、

「そうそう、とっても優しいのよ」
「それに、ちゃっかりしているようで、超が付くドジっ子なの」
「切り替えが凄く早くって、全然くよくよしないわ」
「無邪気な笑顔が可愛いよね」
「ちょっと生意気だった、昔の私を思い出す……懐かしい」
「何でも、前向きなサキを見ていると、凄くやる気になるの」

 という、温かいフォローのコメントがずらり。

 うん!
 嬉しい!
 他の嫁ズからの、サキの評判はすこぶる良い。
 凄く可愛がって貰ってるようだから、俺もホッとひと安心。

 何故かといえば、他の嫁ズと違って、サキは、俺が元居た世界の転生者。
 元々、この世界の住人ではない。

 嫁ズへ、
『サキの本当の正体って、実はクミカなんだ』『クッカとクーガーと同じなんだ』
 つまり魔王クーガーの分身であり、且つ行方不明になった夢魔リリアンだとは……

 まだ、さすがに言えない。
 管理神様に、固く口止めされているから。
 
 けれど、
「サキは俺と同じ世界に居た、異世界転生者なのだ!」くらいは伝えてある。
 まあ、真実の半分といったところだ。
 
 最初に『この半分』を教えた時、
 サキが、自分の分身だと気が付かないクーガーを含め……
 嫁ズは、全員が驚いていた。
 
 でも、嫁ズへ、正直に伝えたのは理由がある。
 
 だって結婚したら、サキとは同じ俺の嫁同士、一生付き合って行く事になるじゃない。
 ある程度、お互いに素性とか事情は知っておかないと、何かあった時、疑心暗鬼になりかねない。
 
 もうひとつ、別の理由もある。
 
 はっきり言ってこの世界に来た当初、生活習慣や考え方の違いに、俺は相当戸惑った。
 サキも、俺と同じ価値観を持っていると思ったから。
 それ故、すぐ馴染めるか、人間関係が上手く行くか、少し心配だったのだ。
 
 そんな俺の余計な心配は、サキから言われた(ことわざ)
『明日には明日の風が吹く』って通り、杞憂に終わった……
 
 あくまでもサキの人柄ありきだけど、受け入れてくれた嫁ズには感謝である。 

「みんな、ありがとう」
 
 俺が、改めて礼を言うと……
 クーガーが拳骨を振り上げて、俺を「ぶつ」真似をした。

「旦那様ったら! 今更、何、寝ぼけた事、言ってるの?」

「え?」

 大仰な『アクション』と、きつい『責め言葉』に、俺が驚いて見れば……
 クーガーは優しくにっこり。

「うふふ、なんやかんや、事あるごとに厳しく言うけれど、私はサキが大好きなの」

「お、おお そうか」

「そうよ! あの子がこの村へ来てくれて、本当に良かったと思ってる。もし見捨てて違う世界へ置いて来たら、旦那様を思いっきり、しばいてたよ」

 ドラゴンママの怒りは、当然、素敵な冗談。
 ず~っと、悪戯っぽく、笑っているし。

「その通りですよぉ」
「そうです! クーガー姉の言う通り、サキちゃんなしの生活なんて、今更!」
「彼女は我がユウキ家の大切な仲間です」
「来たばかりなのに、私達家族を、しっかり支えて貰っています」
「サキちゃんが抜けたら、大幅な戦力ダウン必至です」
「旦那様、サキちゃんにはいっぱい元気を貰ってます。凄く感謝してます」
 
 他の嫁ズも、同意見。
 「サキが来てくれて良かった!」と、全員一致で言ってくれたのである。
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登場人物紹介

☆ケン・ユウキ(俺)
本作の主人公。
学校卒業寸前、22歳の時に突然謎の死を遂げ、管理神から、サポート女神付きの異世界への転生を打診される。いくつかの選択肢を与えられたが、結局新人女神クッカを選び、外見は15歳の少年として西洋風異世界へ転生。その際、究極ともいえるレベル99の力を与えられた。

結局、転生して流れ着いた先はヴァレンタインという王国の南方、辺境ともいえるボヌール村。その後、数奇な運命に翻弄され、苦難の末に幸せを掴んだ。
転生して約3年後の現在……『ふるさと勇者』としてだけではなく、『ボヌール村村長代理』としても、大車輪の活躍振り。愛する家族と仲間を守る為に日々奮闘中である。

☆クッカ・ユウキ(クッカ)
元々はケンが異世界へ転生した時に、管理神から付けられた新人サポート美女神。レベル99の力を使いこなせるよう、異世界に不慣れなケンを全身全霊でサポート。

出自に重大な秘密を持っており、その後、人間に転生。相思相愛で、ケンの妻となった。
ユウキ家長女タバサの母。ハーブの知識に長けた、優れた魔法使い兼治癒士で上級の力を持つ。

☆クーガー・ユウキ(クーガー)
突如ケンの住む異世界へ降臨した、クッカそっくりの美しい女魔王。クッカと同じく出自に重大な秘密を持っており、ケンに深く執着、世界を滅ぼそうとした。その後、人間に転生し、相思相愛でケンの妻となる。
ユウキ家長男レオの母で、上級の力を持つ優れた魔法使いで戦士。厳しい教育方針の為、子供達から怖れられ、付けられた渾名は『ドラゴンママ』


☆リゼット・ユウキ(リゼット)
ボヌール村村長、ジョエル・ブランシュの娘。

病気になった祖母の為にハーブを摘みに行った際、ゴブリンの大群に襲われ、絶体絶命のピンチに陥る。だが転生したばかりのケンに救われ、運命の出会いを遂げる。
現在はケンの妻でユウキ家第一夫人、母フロランス似のしっかり者。良妻賢母タイプの美人で、フラヴィの母。ライフワークであるハーブ園の経営にも力を入れている。


☆レベッカ・ユウキ(レベッカ)
ケンの妻のひとりで、イーサンの母。唯一ケンを「ダーリン」と呼ぶ。門番ガストンの娘で、整った顔立ちをしたモデル風スレンダー美人。弓術に長けた、優秀な戦士で狩人。結婚しても面食いで、イケメン好きは変わらず。
ケンと初めてした『デート』の際、超ツンデレな性格から、暴走。オーガに襲われ、危うく喰い殺されそうになるが、ケンにより命を救われ、ふたりは結ばれた。

☆ミシェル・ユウキ(ミシェル)
ケンの妻のひとりでボヌール村唯一の商店、大空屋の店主。シャルロットの母。経済感覚に長けた金髪碧眼の超グラマラス美人で、拳法の達人。
明るい性格故、表には出さなかったが、父を魔物の大群に殺され、生きる事に絶望していた。ケンとの出会いで立ち直り、本来のポジティブな性格で家族を支えている。レベッカとは親友同士。母のイザベルは、領主オベールの妻となった。

☆クラリス・ユウキ(クラリス)
ケンの妻のひとりでポールの母。リゼットの親友で、優しそうな垂れ目が特徴。顔立ち通り、大人しい性格の、癒し系美人。洋服作り、絵画、工作などマルチな才能を発揮する。ケンだけしか呼ばないが、別名ボヌール村の、レオナルド・ダ・ヴィンチ。
子供の頃、両親を魔物に殺され、孤独に耐えて懸命に生きて来たが……農作業を手伝ってくれたケンにひとめぼれ。恋に落ち、見違えるように明るくなって、ケンに愛を告白し、結ばれる。


☆ソフィ・ユウキ(ソフィもしくはステファニー)
ケンの妻のひとりで、品のある凛とした美人。ララの母。
正体を隠す為、ケンの魔法で髪と瞳の色を変えてはいるが、実は領主オベールの愛娘ステファニー。貴族社会のしがらみから、寄り親へ『妾』として差し出される寸前に、ケンに救われて結ばれた。

☆グレース・ユウキ(グレースもしくはヴァネッサ)
 ケンの妻のひとりで、ソフィ同様、品のある凛とした美人。
 魔法で正体を隠してはいるが、実は元貴族で、ドラポール伯爵家令嬢ヴァネッサである。
 領主オベールの元・後妻でもあり、血の繋がらない娘ソフィことステファニーとは犬猿の仲だった。
 家の駒として3度も政略結婚をさせられ、心身が疲弊してしまったが……

 ケンに救われ、後に結ばれる。
 村で暮らすようになって、角が取れたのか、芯は強いが本来のおっとりした性格に……

 ユウキ家は勿論、村の子供達全員から、人気ナンバーワンのグレースママとして慕われている。

 ソフィとも和解、実の姉妹以上の間柄となった。

☆サキ・ヤマト(サキ)

16歳の少女。可愛いが、とてもわがままできまぐれ。

ケンが元居た世界・日本で暮らしていたが、不慮の交通事故で死亡し、転生。

管理神により、ケンとは違う異世界へ送られた。

サポート女神の休暇から、臨時の神様を命じられたケンが『担当』となり、いろいろ世話を焼くが……


☆管理神

ケンの住む異世界を含め、いくつかの世界を管理する神。

口癖に独特な特徴がある。

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