第24話「超心配性」

文字数 2,296文字

 それから、3日後……
 俺と同じ世界から来た、異世界転生者サキ・ヤマト16歳は……
 我がボヌール村の、正式な村民となった。
 
 村へ来てからは、俺達家族と、同じ家で暮らしている。
 俺と結ばれ、暮らして行くというサキの決意は固いし、気合が入っていた。
 ジュリエットこと戦女神(いくさめがみ)ヴァルヴァラ様との、『約束と誓い』もあり、サキ自身は俺とすぐに結婚したがったのだ。
 
 しかし、元は学生だったサキ。
 辺鄙(へんぴ)な農村で暮らすのも、ユウキ家のような大家族で暮らすのも、初体験であるサキ。
 自分の事は全て、自分でやるのも初めて。
 
 今迄恵まれて育って来たサキにとって、全てが、生まれて初めて尽くしだから。
 ちょっとだけ、心配なんだ。
 
 そして「結婚しようよ」「うん!」って、言うは易し。
 でも、実際一緒に住んでみたら……
 え? あれれ?
 違うんじゃない、これ?
 というのも良くある話。

 ああ、俺って、サキの事を凄く心配してるんだなって思った。
 というか、元々、超が付く心配性なのかな、俺は……
 
 まあ、今迄に思い当たる事も何度かある。
 ソフィの時も、グレースの時も……
 俺は変に『心配』し過ぎて、相手や嫁ズから怒られた。
 特に何度か言われたのが、「もっと相手を信用しろ」とか、「女の気持ちを分かっていない!」ってお叱り。

 念の為、俺はサキの愛を疑っているわけではない。
 彼女が嫌いになったわけでもない。
 だが物事は実際にやってみないと、どう転ぶか分からない。
 
 但し……
 どんな結果になっても、責任をもって、サキの面倒はしっかり見るって決めている。
 以前サキに話した通り、エモシオンへの移住及びまだオープンしていないアンテナショップへの就職も視野に入れている。
 そして、エモシオン以外の可能性も検討……
 つまり王都を含めた、違う街への移住と仕事探しも忘れていないって事。
  
 ここまで考えているって、サキ本人も含め、誰にも言えない、絶対に。
 今回はさすがに、嫁ズにだって全部は言えない。
 なので俺は、嫁ズと言葉を選びつつ相談。
 サキの様子見も含め、念の為に、お試しの『暫定期間』を設ける事にしたのだ。
 ちなみに期間は約3か月……まあ順調なら短縮しても良いだろう。
 
 何故ここまで、俺が気にするのか?
 俺とサキは固い約束と強い誓いをしたが、けしてふたりだけの人生を送るわけではないからだ。
 ユウキ家という新たな家族とボヌール村の村民、このような大勢の人々と、果たしてサキが上手くやっていけるのか?
 という大きな心配がある。

 当然、俺はサキを全力でサポートする。
 もはや神ではなくなった俺だが、サキへの役割は変わらないもの。
  
 こうした決定事項を伝えたところ……
 3か月の『お預け』を喰らい、超が付くほど、むくれたサキから、
 「何それ!? ケンは私を信じてないの?」と、ぶ~、ぶ~、言われた。
 つまり、今迄と同じお叱りを受けたのはご愛敬。

 でも俺は、絶対にサキを幸せにしたいんだ。
 こんなに深い想いと覚悟をもって、俺について来てくれたから。
 当然、俺だって彼女と結ばれたい……強く誓い願った。
 だが、万が一そうならなくとも、サキが一番幸せになれる方法が見つかれば、それでも良いとも思ったのは内緒。

 そんなサキの、『受け入れ』に関してだが……
 イレギュラーな村民は、ソフィを始めとして、今迄に何度も受け入れている。
 なので、俺も嫁ズも慣れたもの。
 こっちは全然、心配していなかった。
 やはりサキ本人が、どれだけユウキ家とボヌール村に順応出来るかが、最大の『鍵』なのである。

 ちなみに「さくっ」と帰還後の経過を説明すると……
 例の別宅からすぐ念話で、リゼット、クッカ&クーガーへ事前連絡。
 3人の嫁から、嫁ズ全員へ伝達、情報共有。
 自宅の受け入れ準備が整ったら、他の村民にばれないよう、転移魔法で一旦移動。
 『おねむ』のお子様軍団には絶対に見つからないよう、サキの顔合わせと経緯(いきさつ)の説明を改めて、嫁ズ全員へした上……
 
 サキを新たな家族として、迎え入れるよう俺から説得。
 嫁ズ全員のOKを貰ったら、お約束である『出会い』の設定相談。
 例によって、村にほど近い街道で、さもサキと知り合ったように見せかけ、村へ迎え入れるパターンだ。

 新村長となった俺が、全村民へサキを紹介。
 まあ可愛い美少女の、新規加入を断る人は居ないだろうから……
 村に滞在し、気に入ったサキが、ごく自然に定住を宣言。
 この間、住み込み先は、当然俺の家。
 
 同居するうちに仲良くなって、俺と恋仲へ、
 そして、なる早で『結婚』するというお馴染みの筋書きなのである。

 でもサキは、今迄持っていた不安がなくなった解放感からか、最初から凄く俺に甘えたがった。

 しかし……
 あまりにもサキが、俺に対して「ベタベタ」だと……
 全然初対面っぽくなく、はた目から見て、非常に不自然となってしまう。
 なので、あまり甘えないよう時々戒めたが……やっぱりぶ~たれた。
 まあそれくらいなら、許容範囲内で許したけど。
 
 まあ、実際に暮らしてみて……
 サキが物怖じしないタイプなのは幸いと言うか、とても助かった。
 彼女は挨拶はしっかりするし、常に明るいもの。
 
 新たな生活への期待に笑顔いっぱい、幸せいっぱいって感じで、サキは本当に嬉しそうであった。
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登場人物紹介

☆ケン・ユウキ(俺)
本作の主人公。
学校卒業寸前、22歳の時に突然謎の死を遂げ、管理神から、サポート女神付きの異世界への転生を打診される。いくつかの選択肢を与えられたが、結局新人女神クッカを選び、外見は15歳の少年として西洋風異世界へ転生。その際、究極ともいえるレベル99の力を与えられた。

結局、転生して流れ着いた先はヴァレンタインという王国の南方、辺境ともいえるボヌール村。その後、数奇な運命に翻弄され、苦難の末に幸せを掴んだ。
転生して約3年後の現在……『ふるさと勇者』としてだけではなく、『ボヌール村村長代理』としても、大車輪の活躍振り。愛する家族と仲間を守る為に日々奮闘中である。

☆クッカ・ユウキ(クッカ)
元々はケンが異世界へ転生した時に、管理神から付けられた新人サポート美女神。レベル99の力を使いこなせるよう、異世界に不慣れなケンを全身全霊でサポート。

出自に重大な秘密を持っており、その後、人間に転生。相思相愛で、ケンの妻となった。
ユウキ家長女タバサの母。ハーブの知識に長けた、優れた魔法使い兼治癒士で上級の力を持つ。

☆クーガー・ユウキ(クーガー)
突如ケンの住む異世界へ降臨した、クッカそっくりの美しい女魔王。クッカと同じく出自に重大な秘密を持っており、ケンに深く執着、世界を滅ぼそうとした。その後、人間に転生し、相思相愛でケンの妻となる。
ユウキ家長男レオの母で、上級の力を持つ優れた魔法使いで戦士。厳しい教育方針の為、子供達から怖れられ、付けられた渾名は『ドラゴンママ』


☆リゼット・ユウキ(リゼット)
ボヌール村村長、ジョエル・ブランシュの娘。

病気になった祖母の為にハーブを摘みに行った際、ゴブリンの大群に襲われ、絶体絶命のピンチに陥る。だが転生したばかりのケンに救われ、運命の出会いを遂げる。
現在はケンの妻でユウキ家第一夫人、母フロランス似のしっかり者。良妻賢母タイプの美人で、フラヴィの母。ライフワークであるハーブ園の経営にも力を入れている。


☆レベッカ・ユウキ(レベッカ)
ケンの妻のひとりで、イーサンの母。唯一ケンを「ダーリン」と呼ぶ。門番ガストンの娘で、整った顔立ちをしたモデル風スレンダー美人。弓術に長けた、優秀な戦士で狩人。結婚しても面食いで、イケメン好きは変わらず。
ケンと初めてした『デート』の際、超ツンデレな性格から、暴走。オーガに襲われ、危うく喰い殺されそうになるが、ケンにより命を救われ、ふたりは結ばれた。

☆ミシェル・ユウキ(ミシェル)
ケンの妻のひとりでボヌール村唯一の商店、大空屋の店主。シャルロットの母。経済感覚に長けた金髪碧眼の超グラマラス美人で、拳法の達人。
明るい性格故、表には出さなかったが、父を魔物の大群に殺され、生きる事に絶望していた。ケンとの出会いで立ち直り、本来のポジティブな性格で家族を支えている。レベッカとは親友同士。母のイザベルは、領主オベールの妻となった。

☆クラリス・ユウキ(クラリス)
ケンの妻のひとりでポールの母。リゼットの親友で、優しそうな垂れ目が特徴。顔立ち通り、大人しい性格の、癒し系美人。洋服作り、絵画、工作などマルチな才能を発揮する。ケンだけしか呼ばないが、別名ボヌール村の、レオナルド・ダ・ヴィンチ。
子供の頃、両親を魔物に殺され、孤独に耐えて懸命に生きて来たが……農作業を手伝ってくれたケンにひとめぼれ。恋に落ち、見違えるように明るくなって、ケンに愛を告白し、結ばれる。


☆ソフィ・ユウキ(ソフィもしくはステファニー)
ケンの妻のひとりで、品のある凛とした美人。ララの母。
正体を隠す為、ケンの魔法で髪と瞳の色を変えてはいるが、実は領主オベールの愛娘ステファニー。貴族社会のしがらみから、寄り親へ『妾』として差し出される寸前に、ケンに救われて結ばれた。

☆グレース・ユウキ(グレースもしくはヴァネッサ)
 ケンの妻のひとりで、ソフィ同様、品のある凛とした美人。
 魔法で正体を隠してはいるが、実は元貴族で、ドラポール伯爵家令嬢ヴァネッサである。
 領主オベールの元・後妻でもあり、血の繋がらない娘ソフィことステファニーとは犬猿の仲だった。
 家の駒として3度も政略結婚をさせられ、心身が疲弊してしまったが……

 ケンに救われ、後に結ばれる。
 村で暮らすようになって、角が取れたのか、芯は強いが本来のおっとりした性格に……

 ユウキ家は勿論、村の子供達全員から、人気ナンバーワンのグレースママとして慕われている。

 ソフィとも和解、実の姉妹以上の間柄となった。

☆サキ・ヤマト(サキ)

16歳の少女。可愛いが、とてもわがままできまぐれ。

ケンが元居た世界・日本で暮らしていたが、不慮の交通事故で死亡し、転生。

管理神により、ケンとは違う異世界へ送られた。

サポート女神の休暇から、臨時の神様を命じられたケンが『担当』となり、いろいろ世話を焼くが……


☆管理神

ケンの住む異世界を含め、いくつかの世界を管理する神。

口癖に独特な特徴がある。

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