第8話「四つ葉のクローバー②」 

文字数 2,075文字

 俺はクーガーからラッキーアイテム『四つ葉のクローバー』を貰った。
 その次の休日……

 俺達家族は、全員で農地に来ている。
 改めて、四つ葉のクローバー探しをしようという話になって繰り出したのだ。
 嫁ズの中でも花が好きなクッカ、リゼット、クラリスが特に、はしゃいでいる。
 グレースも宝探しみたいだと、にこにこしていた。 

 リゼットは満面の笑みを浮かべ、娘のフラヴィとしっかり手を繋いでいた。
 フラヴィは目元が俺に似ていて、つい愛おしくなり抱き締めたくなる。
 
 親馬鹿だけど……
 子供達は皆、どこかが俺に似ている……
 だから結局は、全員を「きゅっ」と抱き締めてしまう。
 
 ふと俺は、傍らに立つリゼットに尋ねる。

「リゼット、四つ葉のクローバーの花言葉って知っているかい?」

「知っています! 真実の愛ですよね」

 即答するリゼット。
 傍らで頷くクッカとクラリス。
 常識よ! って事かな?
 女子って、大概こういうの大好きだからな。

「クローバーあった! よおっし! クーガーに負けないように探すぞぉ! ダーリン、見ててねぇ」

 外見はツンデレ姉さんのレベッカがクローバーの群生を指差して、子供のように大きな声をあげた
 俺の為に頑張って、四つ葉のクローバー探しをしてくれるらしい。
 
 嫁として狩人として、レベッカの良きライバルであるクーガー。
 そのライバルが先んじて俺にプレゼントしたから、張り合う気持ち満々なのだろう。

 レベッカの大声を聞いたクーガーは「にこっ」と笑うと、これまたもっと大きな声を出す。

「みんなぁ! 四つ葉のクローバーを探しながら、お花も摘んでくれるかなぁ! 茎の長いのをなるべくいっぱいね!」

 どうやらクーガーには考えがあるようだ。
 すかさずクッカがフォローする。

「あ、そうだ! みんなぁ! レンゲソウも摘んでねぇ」

 ふたりの呼び掛けを聞いた俺にもピンと来た。
 
 うん!
 確信した。
 今日もまた、素晴らしいイベントになる。
 もう二度と戻れない前世の故郷を思い出すと。

「よおっし、いっぱい摘もう!」

「皆、頑張って! ああ、あそこにあったよ」

「ホントだ!」

 ララを抱いたソフィ、ポールを抱いたクラリスはタバサを始めとした子供達に指示を出す。
 赤ん坊を抱いたまま、草花摘みは出来ない。
 なので、今日は司令塔役だ。

「がんばるぞ、お~っ」

「「「お~っ」」」

 女子ながら俺の子供達の纏め役、リーダーはタバサだ。
 一番早く生まれて、全員からお姉ちゃんと呼ばれているせいか責任感が強い。

 こうして、ユウキ家全員が一斉に行動を開始した。

 1時間後……

 探してみたら、四つ葉のクローバーは案外多かった。
 なんと16枚も見つかったのだ。
 見つかる確率は一万分の一とか、十万分の一とか言われている。
 だから吃驚である。
 しかし、これでOK。

 家族全員分のクローバーが見つかり、全員が幸せになれる。
 いやいや元々幸せだから、幸せ大幅アップだな。

 花摘みも凄く楽しかった。
 クローバーとレンゲソウがいっぱい摘まれたのだ。

 しかしイベント本番は、ここからなのである。

「こうこう、こうやるの」

「こうよぉ」

 クーガーとクッカが他の嫁へ伝授する。
 ふたりでさくさくっと作って、俺の頭に乗せてくれた。
 クッカはまたもやクミカの記憶が戻って来たらしい。
 満面の笑みを浮かべている。

「ああ、可愛いっ!」

「ホント、ホント!」

「旦那様、チャーミング!」

 嫁ズから歓声があがった。

 シーンとしてはとっても恥ずかしかったが、俺は手を振って笑顔でアピール。
 クーガーとクッカが作ったもの、それは花で編んだ冠である。

 更に思い出したらしく、クーガーが花をいじっている。

「こんなのも作れるよ! こうしてっと」

 何と!
 俺の左手の薬指に輝くのはクローバーの指輪だ。
 ああ、これって見覚えがあるぞ。
 
 かつて、クミカが俺に作ってくれたものじゃないか!
 古き良き思い出が心に満ちて来る。
 何故か……目の奥が熱い。
 涙よ、止まってくれ。

「ああっ、可愛い!」
「綺麗!」
「私も作るっ」

 あちこちでまたもや歓声が上がる。

「できた!」
「できたよ!」

 やがてタバサとシャルロットの声が響いた。
 大人達に手伝って貰うも、ふたりの素晴らしい力作はレオとイーサンに被せられる。

 レオは白いクローバー、イーサンはピンク色したレンゲソウの冠だ。
 俺同様、レオとイーサンはとても恥ずかしがっている。
 
 男の子だものね。
 仕方がない。

 しかし、クーガーとレベッカがすかさずフォローしてくれた。

「レオ、凄く恰好良いよ」

「イーサン、パパみたいなイケメンの王子様だよっ」

 大好きなママに褒められた息子ふたりは顔を見合わせると、笑顔でVサインを出したのであった。
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登場人物紹介

☆ケン・ユウキ(俺)
本作の主人公。
学校卒業寸前、22歳の時に突然謎の死を遂げ、管理神から、サポート女神付きの異世界への転生を打診される。いくつかの選択肢を与えられたが、結局新人女神クッカを選び、外見は15歳の少年として西洋風異世界へ転生。その際、究極ともいえるレベル99の力を与えられた。

結局、転生して流れ着いた先はヴァレンタインという王国の南方、辺境ともいえるボヌール村。その後、数奇な運命に翻弄され、苦難の末に幸せを掴んだ。
転生して約3年後の現在……『ふるさと勇者』としてだけではなく、『ボヌール村村長代理』としても、大車輪の活躍振り。愛する家族と仲間を守る為に日々奮闘中である。

☆クッカ・ユウキ(クッカ)
元々はケンが異世界へ転生した時に、管理神から付けられた新人サポート美女神。レベル99の力を使いこなせるよう、異世界に不慣れなケンを全身全霊でサポート。

出自に重大な秘密を持っており、その後、人間に転生。相思相愛で、ケンの妻となった。
ユウキ家長女タバサの母。ハーブの知識に長けた、優れた魔法使い兼治癒士で上級の力を持つ。

☆クーガー・ユウキ(クーガー)
突如ケンの住む異世界へ降臨した、クッカそっくりの美しい女魔王。クッカと同じく出自に重大な秘密を持っており、ケンに深く執着、世界を滅ぼそうとした。その後、人間に転生し、相思相愛でケンの妻となる。
ユウキ家長男レオの母で、上級の力を持つ優れた魔法使いで戦士。厳しい教育方針の為、子供達から怖れられ、付けられた渾名は『ドラゴンママ』


☆リゼット・ユウキ(リゼット)
ボヌール村村長、ジョエル・ブランシュの娘。

病気になった祖母の為にハーブを摘みに行った際、ゴブリンの大群に襲われ、絶体絶命のピンチに陥る。だが転生したばかりのケンに救われ、運命の出会いを遂げる。
現在はケンの妻でユウキ家第一夫人、母フロランス似のしっかり者。良妻賢母タイプの美人で、フラヴィの母。ライフワークであるハーブ園の経営にも力を入れている。


☆レベッカ・ユウキ(レベッカ)
ケンの妻のひとりで、イーサンの母。唯一ケンを「ダーリン」と呼ぶ。門番ガストンの娘で、整った顔立ちをしたモデル風スレンダー美人。弓術に長けた、優秀な戦士で狩人。結婚しても面食いで、イケメン好きは変わらず。
ケンと初めてした『デート』の際、超ツンデレな性格から、暴走。オーガに襲われ、危うく喰い殺されそうになるが、ケンにより命を救われ、ふたりは結ばれた。

☆ミシェル・ユウキ(ミシェル)
ケンの妻のひとりでボヌール村唯一の商店、大空屋の店主。シャルロットの母。経済感覚に長けた金髪碧眼の超グラマラス美人で、拳法の達人。
明るい性格故、表には出さなかったが、父を魔物の大群に殺され、生きる事に絶望していた。ケンとの出会いで立ち直り、本来のポジティブな性格で家族を支えている。レベッカとは親友同士。母のイザベルは、領主オベールの妻となった。

☆クラリス・ユウキ(クラリス)
ケンの妻のひとりでポールの母。リゼットの親友で、優しそうな垂れ目が特徴。顔立ち通り、大人しい性格の、癒し系美人。洋服作り、絵画、工作などマルチな才能を発揮する。ケンだけしか呼ばないが、別名ボヌール村の、レオナルド・ダ・ヴィンチ。
子供の頃、両親を魔物に殺され、孤独に耐えて懸命に生きて来たが……農作業を手伝ってくれたケンにひとめぼれ。恋に落ち、見違えるように明るくなって、ケンに愛を告白し、結ばれる。


☆ソフィ・ユウキ(ソフィもしくはステファニー)
ケンの妻のひとりで、品のある凛とした美人。ララの母。
正体を隠す為、ケンの魔法で髪と瞳の色を変えてはいるが、実は領主オベールの愛娘ステファニー。貴族社会のしがらみから、寄り親へ『妾』として差し出される寸前に、ケンに救われて結ばれた。

☆グレース・ユウキ(グレースもしくはヴァネッサ)
 ケンの妻のひとりで、ソフィ同様、品のある凛とした美人。
 魔法で正体を隠してはいるが、実は元貴族で、ドラポール伯爵家令嬢ヴァネッサである。
 領主オベールの元・後妻でもあり、血の繋がらない娘ソフィことステファニーとは犬猿の仲だった。
 家の駒として3度も政略結婚をさせられ、心身が疲弊してしまったが……

 ケンに救われ、後に結ばれる。
 村で暮らすようになって、角が取れたのか、芯は強いが本来のおっとりした性格に……

 ユウキ家は勿論、村の子供達全員から、人気ナンバーワンのグレースママとして慕われている。

 ソフィとも和解、実の姉妹以上の間柄となった。

☆サキ・ヤマト(サキ)

16歳の少女。可愛いが、とてもわがままできまぐれ。

ケンが元居た世界・日本で暮らしていたが、不慮の交通事故で死亡し、転生。

管理神により、ケンとは違う異世界へ送られた。

サポート女神の休暇から、臨時の神様を命じられたケンが『担当』となり、いろいろ世話を焼くが……


☆管理神

ケンの住む異世界を含め、いくつかの世界を管理する神。

口癖に独特な特徴がある。

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