第31話「作戦成功!」

文字数 2,134文字

 街道を進むと……
 100mほど先に、ゴブリン共が立ちふさがっているのが見えて来た。
 考えてみれば、こいつらを排除するのも、ふるさと勇者である俺の仕事。
 じゃあ、力を押さえつつも、気持ち良く暴れてやろうじゃないか!

 既に作戦は開始されていた。
 
 俺の家族と、商隊の馬車5台は思い切り後方へと下げられている。
 一応、敵が来たら、反撃するよう指示はされていた。

 俺達護衛の陣形は2段。
 前衛と後衛。

 その前衛の中に俺は居て、他には戦士5人の計6人。
 ちなみに後衛は、リーダー含めた戦士ふたりと魔法使いふたり、回復役ひとりの計5人である。

 あがおおおおおん!
 うおおおおおおん!
 ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃあ!

 街道に立つゴブリン共は、獲物の人間が来たと知り、激しく咆哮し、威嚇していた。
 俺にとっては散々聞き慣れた声だが、初めて聞く者はとても怖ろしいだろう。

 特に、お子様軍団は怖がっているに違いない。

「さあ、準備は良いかぁ? 行けぇ!!!」

 クランリーダーの声が響き渡った。
 所属する魔法使いへの攻撃命令だ。

「炎弾!」
「炎弾!」

 ふたりの魔法使いから、直径50㎝ほどの火球が放たれた。
 俺の使う炎弾に比べ、威力は小さいが、ふたりの腕は中々。
 ゴブリン共の群れの、真ん中に着弾。
 結構な数のゴブリンが吹っ飛び、炎上するのが見えた。

 仲間をやられた怒りからか、ゴブリンは俺達へ向かい、凄い勢いで殺到して来る。

「今だ! お願いしますっ、ケン様!」

「了解! 風の壁(ウインドウォール)!」

 俺は行きの戦いの時同様、風の壁(ウインドウォール)を発動。
 今度は左右が前回の倍以上で約20m、丁度俺達と、正面のゴブリンとの間、広範囲に展開させる。

 人間よりずっと勘が良いものの、怒りで冷静さを失っているゴブリンは風の壁に気付かず押し戻されてしまう。
 こけてしまうのも大勢居る。

 そう、人間の襲撃者の時と同じだ。
 後から来る奴らが、どんどん追突するような形となり、群れは大混乱に陥った。

「よしっ! ケン様に聞いたが、風の壁(ウインドウォール)は発動から約20分持つ。第二波の攻撃魔法行けっ! 足止めしている間に、少しでもゴブ共を倒すんだ!」

「炎弾!」
「炎弾!」

 またも魔法使い達から、風の壁を超え、同じ規模の炎弾が放たれる。
 やはり密集した中へ着弾。
 再び、吹っ飛び燃え上がるゴブリン共。

 やられる一方で、焦りと怒りの感情がゴブリンの群れを襲う。
 混乱に、どんどん拍車がかかって行く。

 しかし、比較的冷静な奴等が、風の動きを読み、大回りして左右から突進して来た。

 それを見たリーダーが、更に次の指示を言い放つ。

「よし、前衛! 打合せ通り、ふたり一組で敵を掃討せよっ! 討ち漏らして後方に来たのは俺と後衛が絶対に倒す! 申し訳ないっ。ケン様、加勢を! 向かって左側のフォローをお願いしますっ!」

「了解! じゃあ行くぞ! 囲まれないように注意して戦おう!」

「はいっ!」
「行きましょう!」

 共に『左』を受け持つのは、俺とあまり年齢が変わらない、若い男性冒険者ふたり。

 前回も一緒に戦ったから、もう気心は知れている。
 俺を見て、ふたりとも、にこっと笑った。
 良く日焼けした顔に、開いた口からのぞく白い歯が眩しい。

 前を見れば、もうゴブリンが数体、こちらへ向かって来ている。
 頷き合った俺達は、雄叫びをあげると、一斉に駆け出した。

 その後は、一方的な戦いが展開された。
 ある程度数さえ減らせば、ゴブリンなど、レベル99の俺や、上級冒険者の敵ではないもの。

 俺が発動した、風の壁(ウインドウォール)は予想通り効果抜群だった。
 足止めしたゴブ共は、クラン所属の魔法使いが火の魔法で狙い、面白いように倒されたから。
 その為、気合が入りまくったクランの魔法使い達が、体内魔力のなくなるまで炎弾を撃ちまくったのはご愛敬。
 魔力が戻って再び魔法が使えるまで、帰り道は、俺が密かにフォローしてやる事にした。

 風の壁(ウインドウォール)を回り込み、商隊を襲おうとしたゴブは、前衛で出た俺を含む部隊が斬り伏せた。
 レベル99の力であまり無双し過ぎないよう、だいぶ加減して戦ったのは内緒。

 その為か、少々のゴブが俺達を突破したが、状況を想定済みのクランリーダーが後衛部隊と共に待ち受け、殲滅。

 でも今回のゴブは中々しぶとかった。
 これは、後から聞いた話だが……

 リーダー達、後衛をも突破した『つわもの』5体が居たそうである。
 奴等は後方に居た商隊の馬車を襲ったが、大丈夫、問題なかった。

 いくら護衛が居ても、商人達だって、ただ守って貰うだけじゃない。
 過酷な旅をするから、最低限の護身術くらいは身につけている。
 襲って来たゴブ3体を、商隊15人全員がかりで袋叩き、難なく倒したって。

 ちなみに残り2体は商隊をスルーし、我が家族の乗る馬車まで迫ったらしいが、レベッカがあっさり弓で倒したのであった。
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登場人物紹介

☆ケン・ユウキ(俺)
本作の主人公。
学校卒業寸前、22歳の時に突然謎の死を遂げ、管理神から、サポート女神付きの異世界への転生を打診される。いくつかの選択肢を与えられたが、結局新人女神クッカを選び、外見は15歳の少年として西洋風異世界へ転生。その際、究極ともいえるレベル99の力を与えられた。

結局、転生して流れ着いた先はヴァレンタインという王国の南方、辺境ともいえるボヌール村。その後、数奇な運命に翻弄され、苦難の末に幸せを掴んだ。
転生して約3年後の現在……『ふるさと勇者』としてだけではなく、『ボヌール村村長代理』としても、大車輪の活躍振り。愛する家族と仲間を守る為に日々奮闘中である。

☆クッカ・ユウキ(クッカ)
元々はケンが異世界へ転生した時に、管理神から付けられた新人サポート美女神。レベル99の力を使いこなせるよう、異世界に不慣れなケンを全身全霊でサポート。

出自に重大な秘密を持っており、その後、人間に転生。相思相愛で、ケンの妻となった。
ユウキ家長女タバサの母。ハーブの知識に長けた、優れた魔法使い兼治癒士で上級の力を持つ。

☆クーガー・ユウキ(クーガー)
突如ケンの住む異世界へ降臨した、クッカそっくりの美しい女魔王。クッカと同じく出自に重大な秘密を持っており、ケンに深く執着、世界を滅ぼそうとした。その後、人間に転生し、相思相愛でケンの妻となる。
ユウキ家長男レオの母で、上級の力を持つ優れた魔法使いで戦士。厳しい教育方針の為、子供達から怖れられ、付けられた渾名は『ドラゴンママ』


☆リゼット・ユウキ(リゼット)
ボヌール村村長、ジョエル・ブランシュの娘。

病気になった祖母の為にハーブを摘みに行った際、ゴブリンの大群に襲われ、絶体絶命のピンチに陥る。だが転生したばかりのケンに救われ、運命の出会いを遂げる。
現在はケンの妻でユウキ家第一夫人、母フロランス似のしっかり者。良妻賢母タイプの美人で、フラヴィの母。ライフワークであるハーブ園の経営にも力を入れている。


☆レベッカ・ユウキ(レベッカ)
ケンの妻のひとりで、イーサンの母。唯一ケンを「ダーリン」と呼ぶ。門番ガストンの娘で、整った顔立ちをしたモデル風スレンダー美人。弓術に長けた、優秀な戦士で狩人。結婚しても面食いで、イケメン好きは変わらず。
ケンと初めてした『デート』の際、超ツンデレな性格から、暴走。オーガに襲われ、危うく喰い殺されそうになるが、ケンにより命を救われ、ふたりは結ばれた。

☆ミシェル・ユウキ(ミシェル)
ケンの妻のひとりでボヌール村唯一の商店、大空屋の店主。シャルロットの母。経済感覚に長けた金髪碧眼の超グラマラス美人で、拳法の達人。
明るい性格故、表には出さなかったが、父を魔物の大群に殺され、生きる事に絶望していた。ケンとの出会いで立ち直り、本来のポジティブな性格で家族を支えている。レベッカとは親友同士。母のイザベルは、領主オベールの妻となった。

☆クラリス・ユウキ(クラリス)
ケンの妻のひとりでポールの母。リゼットの親友で、優しそうな垂れ目が特徴。顔立ち通り、大人しい性格の、癒し系美人。洋服作り、絵画、工作などマルチな才能を発揮する。ケンだけしか呼ばないが、別名ボヌール村の、レオナルド・ダ・ヴィンチ。
子供の頃、両親を魔物に殺され、孤独に耐えて懸命に生きて来たが……農作業を手伝ってくれたケンにひとめぼれ。恋に落ち、見違えるように明るくなって、ケンに愛を告白し、結ばれる。


☆ソフィ・ユウキ(ソフィもしくはステファニー)
ケンの妻のひとりで、品のある凛とした美人。ララの母。
正体を隠す為、ケンの魔法で髪と瞳の色を変えてはいるが、実は領主オベールの愛娘ステファニー。貴族社会のしがらみから、寄り親へ『妾』として差し出される寸前に、ケンに救われて結ばれた。

☆グレース・ユウキ(グレースもしくはヴァネッサ)
 ケンの妻のひとりで、ソフィ同様、品のある凛とした美人。
 魔法で正体を隠してはいるが、実は元貴族で、ドラポール伯爵家令嬢ヴァネッサである。
 領主オベールの元・後妻でもあり、血の繋がらない娘ソフィことステファニーとは犬猿の仲だった。
 家の駒として3度も政略結婚をさせられ、心身が疲弊してしまったが……

 ケンに救われ、後に結ばれる。
 村で暮らすようになって、角が取れたのか、芯は強いが本来のおっとりした性格に……

 ユウキ家は勿論、村の子供達全員から、人気ナンバーワンのグレースママとして慕われている。

 ソフィとも和解、実の姉妹以上の間柄となった。

☆サキ・ヤマト(サキ)

16歳の少女。可愛いが、とてもわがままできまぐれ。

ケンが元居た世界・日本で暮らしていたが、不慮の交通事故で死亡し、転生。

管理神により、ケンとは違う異世界へ送られた。

サポート女神の休暇から、臨時の神様を命じられたケンが『担当』となり、いろいろ世話を焼くが……


☆管理神

ケンの住む異世界を含め、いくつかの世界を管理する神。

口癖に独特な特徴がある。

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