第8話「暴発」

文字数 2,221文字

 レベッカは、大きな声を出して挙手をし、

「リゼット、クッカ、ミシェル、ソフィ、良いかな?」

 と、4人の嫁ズへ問う。

 レベッカったら、『同意』を求めてる?
 一体、何の同意だろう?

 すると、

「はい! あの件ですねっ!」
「了解ですよぉ」
「OK!」
「バッチリです」

 爽やか健康系美人、元女神のたおやかな美人、相変わらず飄々(ひょうひょう)としたグラマラス美人、そして上品な美しさに大人の魅力が加わった元貴族令嬢……
 リゼット、クッカ、ミシェル、ソフィ4人の嫁ズは、手を挙げて爽やかに応えた。
 「もう話は、バッチリ通ってる」って感じで。

 え?
 でも、レベッカを入れたこの5人って、どういう組み合わせだろう?
 当然仲は良いけれど、特別な共通項って……すぐ思い浮かばない。

 って、俺が思ったら……

「実は近々、村内でサプライズイベントを行います」

 と、レベッカが言うので、

「サプライズイベント?」

 思わず、俺が聞けば、
 
「そうでっす。今ここには居ない、グレース姉とサキもメンバーです」

 更に「しれっ」と言う、レベッカ。
 俺は、?マークをいっぱい飛ばしてしまう。

「???」

 はぁ?
 グレースとサキも、メンバーだって?
 むむむ、計7人の共通項って?
 ……益々、分かんないや……

「うふふ、これは、もう私の心の奥底を読まないと、真実は分からないよ、ダーリン」

 レベッカが首を傾げる俺を見て、悪戯っぽく笑った。
 その種明かしとは……

「じゃあ、教えるね」

「あ、ああ……」

「……あの王都の宿、白鳥亭へ行った時の事」

「…………」

「ダーリンと一緒に美味しく食べた、アマンダさんの真心が籠ったアールヴ特製のハーブ料理……当然、憶えているでしょ?」

「……あ、ああ、憶えてるぞ」

「実は! その料理が更にパワーアップしましたぁ! ボヌール村の新鮮食材を使った、オリジナルのスペシャルハーブ料理として生まれ変わったので~っす」

「えええっ!?」

「サプライズイベントは、新料理のお披露目試食会でっす!」

「お、おお! 新料理か! 凄いな」

「うん! そうなの! ねぇ、ダーリン、聞いてっ! 私とグレース姉が絶対にリベンジしようねって、誓い合ったのが、きっかけなのっ!」

 ああ、記憶が鮮やかに甦って来る……
 グレースと王都へ行った時、初めて食べたアマンダさんのハーブ料理は、とても衝撃的だった。
 前世も含め、生まれてから今迄食べた事がない、何か、カルチャーショックっていう奴かも。

 グレースも俺と同様であり、更に思いが募った。
 何とか家族に振る舞いたいと考えたのだ。
 
 それで無理を言い、アマンダさんにレシピを教えて貰い、村に帰ってから『再現』を試みたんだけど……結局、うまくいかなかった。

 アマンダさんの料理を食べ、感動したレベッカがその話を聞き……
 愛する『姉』とタッグを組み、リベンジを果たした。
 否、タッグじゃない。
 嫁ズの、『有志チーム』って事だ。

「ああ、そうか、そうなんだな」

「うん、そうなの! 出来た料理はアマンダさんのものとはちょっと違うけど……創作メンバー全員が美味しいって認めました。だからね、ボヌール村の、そしてアンテナショップに出せる名物料理として、全く問題ないクオリティだと自負しているのよっ」

 ああ、凄いよ、本当に凄いっ!
 でも、俺全然気付かなかった。
 日々生活していても、そんな気配を感じなかった。

 新たなボヌール村の名物、特製ハーブ料理を、アンテナショップで出すって……素晴らしいや。
 強烈な、村のアピールになる!
 
「すげぇ、美味そうだな、それ……俺、何か想像が先走って、ヨダレが出て来たよ」

 うん、今言ったのは本音。
 だって、アマンダさんの作ったハーブ料理は本当に美味しかったから。

 しかし!

「な、何、それ!」

 いきなり、声を上げた嫁が居た。
 真剣な、怒気を含んだ声である。

 怒っていた嫁は、意外にも……クーガーであった。
 
 ドラゴンママと渾名されるくらい、怒ると凄く怖いけれど……
 反面とてもクールで、我が道を行くマイペースなタイプと見られていたのに、本気で怒ってる。

「レベッカ、何で!? 何で、私に黙ってたの? 酷いよっ!」

「クーガー……」

「私が何か、のけ者にされるような事って、したのっ!」

「してない……よ」

「じゃあ、何でっ!」

「…………」

 ああ、クーガーに問い質されても、答えずにレベッカは無言だ。
 普段あんなに仲が良くて、他の嫁ズから、ふたりは親友だって見なされていたのに。
 悪気はないと思うけど、理由をすぐ言わないって、何かわけがある筈だ。
 だが、どちらにしても、このまま放置はまずい。

「旦那様、今夜の権利、譲りますっ」

 すかさずフォローしてくれたのは、リゼット。
 ちなみに『今夜の権利』というのは、俺とふたりきりで寝る順番の事。

 爆発しろ?
 どうも済みませんって、……それどころじゃない。

 クーガーから放たれる怒りの波動が凄くて、彼女の魔力が今にもそう暴発しそうだから……
 俺は慌てて、クーガーに飛びついて抱きしめると、超が付く強力な鎮静の魔法を掛けたのであった。
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登場人物紹介

☆ケン・ユウキ(俺)
本作の主人公。
学校卒業寸前、22歳の時に突然謎の死を遂げ、管理神から、サポート女神付きの異世界への転生を打診される。いくつかの選択肢を与えられたが、結局新人女神クッカを選び、外見は15歳の少年として西洋風異世界へ転生。その際、究極ともいえるレベル99の力を与えられた。

結局、転生して流れ着いた先はヴァレンタインという王国の南方、辺境ともいえるボヌール村。その後、数奇な運命に翻弄され、苦難の末に幸せを掴んだ。
転生して約3年後の現在……『ふるさと勇者』としてだけではなく、『ボヌール村村長代理』としても、大車輪の活躍振り。愛する家族と仲間を守る為に日々奮闘中である。

☆クッカ・ユウキ(クッカ)
元々はケンが異世界へ転生した時に、管理神から付けられた新人サポート美女神。レベル99の力を使いこなせるよう、異世界に不慣れなケンを全身全霊でサポート。

出自に重大な秘密を持っており、その後、人間に転生。相思相愛で、ケンの妻となった。
ユウキ家長女タバサの母。ハーブの知識に長けた、優れた魔法使い兼治癒士で上級の力を持つ。

☆クーガー・ユウキ(クーガー)
突如ケンの住む異世界へ降臨した、クッカそっくりの美しい女魔王。クッカと同じく出自に重大な秘密を持っており、ケンに深く執着、世界を滅ぼそうとした。その後、人間に転生し、相思相愛でケンの妻となる。
ユウキ家長男レオの母で、上級の力を持つ優れた魔法使いで戦士。厳しい教育方針の為、子供達から怖れられ、付けられた渾名は『ドラゴンママ』


☆リゼット・ユウキ(リゼット)
ボヌール村村長、ジョエル・ブランシュの娘。

病気になった祖母の為にハーブを摘みに行った際、ゴブリンの大群に襲われ、絶体絶命のピンチに陥る。だが転生したばかりのケンに救われ、運命の出会いを遂げる。
現在はケンの妻でユウキ家第一夫人、母フロランス似のしっかり者。良妻賢母タイプの美人で、フラヴィの母。ライフワークであるハーブ園の経営にも力を入れている。


☆レベッカ・ユウキ(レベッカ)
ケンの妻のひとりで、イーサンの母。唯一ケンを「ダーリン」と呼ぶ。門番ガストンの娘で、整った顔立ちをしたモデル風スレンダー美人。弓術に長けた、優秀な戦士で狩人。結婚しても面食いで、イケメン好きは変わらず。
ケンと初めてした『デート』の際、超ツンデレな性格から、暴走。オーガに襲われ、危うく喰い殺されそうになるが、ケンにより命を救われ、ふたりは結ばれた。

☆ミシェル・ユウキ(ミシェル)
ケンの妻のひとりでボヌール村唯一の商店、大空屋の店主。シャルロットの母。経済感覚に長けた金髪碧眼の超グラマラス美人で、拳法の達人。
明るい性格故、表には出さなかったが、父を魔物の大群に殺され、生きる事に絶望していた。ケンとの出会いで立ち直り、本来のポジティブな性格で家族を支えている。レベッカとは親友同士。母のイザベルは、領主オベールの妻となった。

☆クラリス・ユウキ(クラリス)
ケンの妻のひとりでポールの母。リゼットの親友で、優しそうな垂れ目が特徴。顔立ち通り、大人しい性格の、癒し系美人。洋服作り、絵画、工作などマルチな才能を発揮する。ケンだけしか呼ばないが、別名ボヌール村の、レオナルド・ダ・ヴィンチ。
子供の頃、両親を魔物に殺され、孤独に耐えて懸命に生きて来たが……農作業を手伝ってくれたケンにひとめぼれ。恋に落ち、見違えるように明るくなって、ケンに愛を告白し、結ばれる。


☆ソフィ・ユウキ(ソフィもしくはステファニー)
ケンの妻のひとりで、品のある凛とした美人。ララの母。
正体を隠す為、ケンの魔法で髪と瞳の色を変えてはいるが、実は領主オベールの愛娘ステファニー。貴族社会のしがらみから、寄り親へ『妾』として差し出される寸前に、ケンに救われて結ばれた。

☆グレース・ユウキ(グレースもしくはヴァネッサ)
 ケンの妻のひとりで、ソフィ同様、品のある凛とした美人。
 魔法で正体を隠してはいるが、実は元貴族で、ドラポール伯爵家令嬢ヴァネッサである。
 領主オベールの元・後妻でもあり、血の繋がらない娘ソフィことステファニーとは犬猿の仲だった。
 家の駒として3度も政略結婚をさせられ、心身が疲弊してしまったが……

 ケンに救われ、後に結ばれる。
 村で暮らすようになって、角が取れたのか、芯は強いが本来のおっとりした性格に……

 ユウキ家は勿論、村の子供達全員から、人気ナンバーワンのグレースママとして慕われている。

 ソフィとも和解、実の姉妹以上の間柄となった。

☆サキ・ヤマト(サキ)

16歳の少女。可愛いが、とてもわがままできまぐれ。

ケンが元居た世界・日本で暮らしていたが、不慮の交通事故で死亡し、転生。

管理神により、ケンとは違う異世界へ送られた。

サポート女神の休暇から、臨時の神様を命じられたケンが『担当』となり、いろいろ世話を焼くが……


☆管理神

ケンの住む異世界を含め、いくつかの世界を管理する神。

口癖に独特な特徴がある。

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