第11話「俺の戦いを見よ!」

文字数 2,142文字

 でっかい拳で正門を叩きまくり、村を襲おうとするオーガの群れ。
 怖ろしい咆哮が轟き、地面が踏み鳴らされている。
 本能をむき出しにしたオーガ共は、中の村民を喰う気満々だ。

 その背後に、俺は降り立った。
 
 しかし奴等はこれから喰らおうとする柵の中の『餌』に夢中で、俺の方など見向きもしない。
 逆に俺にとっては好都合だ。
 背後から、無防備な奴等を容赦なく攻撃出来る。
 
 卑怯?
 関係ない。
 大群で、『仲間』を喰らおうとする捕食者に抗う戦いだから。
 そもそも俺ひとりに対して、相手は200だしね。

 腰から提げた魔法剣を、「しゅらっ」と俺は抜いた。
 女神ケルトゥリ様から授かった、黄金の剣である。

 今の俺なら分かる。
 この剣は俺が死んだ直後に見た金銀銅3つの剣のうち、最高のスペックを誇ると。
 ちなみにクッカから得た、銅の剣の約3倍の能力を持っている。

 さあ、いよいよその黄金剣を使う。
 俺が軽く魔力を籠めると、刀身が眩く光った。
 後は属性魔法を魂にイメージすれば、良い。
 異なる属性魔法の攻撃が自在に出来る筈だ。

 俺はふと、初めてリゼットを助けた時の事を思い出す。
 あれが初めての戦いだった。
 勇気を奮った俺だったが、敵に囲まれビビって後悔していたっけ。

 でも良かった!
 リゼットを助けると決めた、俺の運命の選択は……正しかったのだ!

 当時の相手はゴブだし、状況は全く違うけど。
 ああ、とても懐かしい気がする。
 あの戦いから、全てが始まったから。
 
 で、あれば!
 火属性魔法で攻撃だ。

 一層気合が入った俺は、つい口に出してみる。
 必殺技をいちいち声に出して戦う、ヒーローと同じノリだ。

「燃え盛る炎よ! 剣に(まと)えっ! 放射~っ!!!」

 すっげぇ!
 さすが黄金の剣だ。
 あの時は30mの竜の吐く炎(ドラゴンブレス)であったが、その3倍以上出たぁ!
 約100mの猛炎がオーガに向かって一直線に伸びる。

 ぼうわっ!
 ごおっ!

 おお、悲鳴をあげる間もなく、炎に包まれたオーガが瞬時に炭化した。
 それも数体一度に。
 見た目以上に、威力も凄い!
 仲間をやられてさすがに気付いたか、オーガ共が吃驚してこちらを振り向く。

 しかし遅いっ!

 振り向いたオーガの顔面へ、俺が拳をぶち込む。
 俺は炎を噴射した後、高速で接近していたのだ。
 もろに拳を喰らったオーガの身体は吹っ飛び、他のオーガを何体も巻き込む。
 いわばドミノ倒しである。

 慌てたオーガ共は大きな声で咆哮し、俺を捕まえようとした。

 だが元々、オーガの動きは俊敏とはいえない。
 凄まじい速度で、縦横無尽に移動する俺を捕まえる事など不可能である。

 仲間が次々に倒されると、パニックに陥るのは人間もアールヴもオーガも同じ。
 知能も良くないオーガ共は、遂に同士討ちまで始めてしまう。

 フレデリカ、良~く見てろよ。

 俺は口の中で呟き、フレデリカの視線を背中で受けながら、片手を振った。

 そんな俺をオーガは力任せに襲って来る。
 どすどす足音を立てながら迫って来た。

 至近距離までオーガを引き付け、俺は炎弾を撃つ。
 両手を振り挙げたオーガの巨大な身体を炎弾が容易く撃ち抜き、大きな風穴を開けた。
 当然、オーガはぶっ倒れて即死である。
 
 それを何回も繰り返す。

 奴等の死体がどんどん増えて行く。
 比例して敵はどんどん少なくなる——当たり前か!
 
 これだけ魔法無双出来るのは、無詠唱で無尽蔵に魔法を発動出来る、俺の強みだ。
 だが魔法だけではなく、相手の動きにより剣技と天界拳を自在に織り交ぜる。
 決まった法則などはなく、本能の命ずるままに。

 この戦法は体術、剣技、そして魔法それぞれが一定以上のレベルに達していないと到底こなす事など出来ない。

 但し、見本と言ってもタイプが違う俺。
 フレデリカが無理して、全てを真似る事はない。
 彼女が魔法剣士として自分を高められる参考程度になれば良いのだ。

 こうして……戦いに戦いを重ね、遂にオーガは……ボスらしき一体のみとなった。

 その頃には恐怖に柵の向こうで怯えていた村民達も、俺とオーガの戦いに気付いた。
 さすがに全員とまではいかないが、正門脇の見張り櫓には戦士を含め大勢の村民が登っている。
 そして、固唾を飲んで戦いの行く末を見守っていた。

 一族&仲間が全て斃され、ボスオーガは怒りと悲しみ、そして恐怖で錯乱している。
 だが決して可哀そうだとは思わない。
 もし俺とフレデリカが通りかからなければ、アールヴの村は蹂躙され状況は逆になっているからだ。

 があああああああっ!

 遂に覚悟を決めたのであろうか。
 ボスオーガは今迄よりひと際大きく吠えて、俺に向かって突っ込んで来た。
 黄金剣を構えた俺は高くジャンプして、唐竹割りをお見舞いする。
 
 さすが魔剣、黄金剣は切れ味が凄まじかった。
 
 頭から一刀両断!
 真っぷたつにされたボスオーガは、血を盛大にまき散らして、あっさり絶命したのであった。
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登場人物紹介

☆ケン・ユウキ(俺)
本作の主人公。
学校卒業寸前、22歳の時に突然謎の死を遂げ、管理神から、サポート女神付きの異世界への転生を打診される。いくつかの選択肢を与えられたが、結局新人女神クッカを選び、外見は15歳の少年として西洋風異世界へ転生。その際、究極ともいえるレベル99の力を与えられた。

結局、転生して流れ着いた先はヴァレンタインという王国の南方、辺境ともいえるボヌール村。その後、数奇な運命に翻弄され、苦難の末に幸せを掴んだ。
転生して約3年後の現在……『ふるさと勇者』としてだけではなく、『ボヌール村村長代理』としても、大車輪の活躍振り。愛する家族と仲間を守る為に日々奮闘中である。

☆クッカ・ユウキ(クッカ)
元々はケンが異世界へ転生した時に、管理神から付けられた新人サポート美女神。レベル99の力を使いこなせるよう、異世界に不慣れなケンを全身全霊でサポート。

出自に重大な秘密を持っており、その後、人間に転生。相思相愛で、ケンの妻となった。
ユウキ家長女タバサの母。ハーブの知識に長けた、優れた魔法使い兼治癒士で上級の力を持つ。

☆クーガー・ユウキ(クーガー)
突如ケンの住む異世界へ降臨した、クッカそっくりの美しい女魔王。クッカと同じく出自に重大な秘密を持っており、ケンに深く執着、世界を滅ぼそうとした。その後、人間に転生し、相思相愛でケンの妻となる。
ユウキ家長男レオの母で、上級の力を持つ優れた魔法使いで戦士。厳しい教育方針の為、子供達から怖れられ、付けられた渾名は『ドラゴンママ』


☆リゼット・ユウキ(リゼット)
ボヌール村村長、ジョエル・ブランシュの娘。

病気になった祖母の為にハーブを摘みに行った際、ゴブリンの大群に襲われ、絶体絶命のピンチに陥る。だが転生したばかりのケンに救われ、運命の出会いを遂げる。
現在はケンの妻でユウキ家第一夫人、母フロランス似のしっかり者。良妻賢母タイプの美人で、フラヴィの母。ライフワークであるハーブ園の経営にも力を入れている。


☆レベッカ・ユウキ(レベッカ)
ケンの妻のひとりで、イーサンの母。唯一ケンを「ダーリン」と呼ぶ。門番ガストンの娘で、整った顔立ちをしたモデル風スレンダー美人。弓術に長けた、優秀な戦士で狩人。結婚しても面食いで、イケメン好きは変わらず。
ケンと初めてした『デート』の際、超ツンデレな性格から、暴走。オーガに襲われ、危うく喰い殺されそうになるが、ケンにより命を救われ、ふたりは結ばれた。

☆ミシェル・ユウキ(ミシェル)
ケンの妻のひとりでボヌール村唯一の商店、大空屋の店主。シャルロットの母。経済感覚に長けた金髪碧眼の超グラマラス美人で、拳法の達人。
明るい性格故、表には出さなかったが、父を魔物の大群に殺され、生きる事に絶望していた。ケンとの出会いで立ち直り、本来のポジティブな性格で家族を支えている。レベッカとは親友同士。母のイザベルは、領主オベールの妻となった。

☆クラリス・ユウキ(クラリス)
ケンの妻のひとりでポールの母。リゼットの親友で、優しそうな垂れ目が特徴。顔立ち通り、大人しい性格の、癒し系美人。洋服作り、絵画、工作などマルチな才能を発揮する。ケンだけしか呼ばないが、別名ボヌール村の、レオナルド・ダ・ヴィンチ。
子供の頃、両親を魔物に殺され、孤独に耐えて懸命に生きて来たが……農作業を手伝ってくれたケンにひとめぼれ。恋に落ち、見違えるように明るくなって、ケンに愛を告白し、結ばれる。


☆ソフィ・ユウキ(ソフィもしくはステファニー)
ケンの妻のひとりで、品のある凛とした美人。ララの母。
正体を隠す為、ケンの魔法で髪と瞳の色を変えてはいるが、実は領主オベールの愛娘ステファニー。貴族社会のしがらみから、寄り親へ『妾』として差し出される寸前に、ケンに救われて結ばれた。

☆グレース・ユウキ(グレースもしくはヴァネッサ)
 ケンの妻のひとりで、ソフィ同様、品のある凛とした美人。
 魔法で正体を隠してはいるが、実は元貴族で、ドラポール伯爵家令嬢ヴァネッサである。
 領主オベールの元・後妻でもあり、血の繋がらない娘ソフィことステファニーとは犬猿の仲だった。
 家の駒として3度も政略結婚をさせられ、心身が疲弊してしまったが……

 ケンに救われ、後に結ばれる。
 村で暮らすようになって、角が取れたのか、芯は強いが本来のおっとりした性格に……

 ユウキ家は勿論、村の子供達全員から、人気ナンバーワンのグレースママとして慕われている。

 ソフィとも和解、実の姉妹以上の間柄となった。

☆サキ・ヤマト(サキ)

16歳の少女。可愛いが、とてもわがままできまぐれ。

ケンが元居た世界・日本で暮らしていたが、不慮の交通事故で死亡し、転生。

管理神により、ケンとは違う異世界へ送られた。

サポート女神の休暇から、臨時の神様を命じられたケンが『担当』となり、いろいろ世話を焼くが……


☆管理神

ケンの住む異世界を含め、いくつかの世界を管理する神。

口癖に独特な特徴がある。

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