第26話「再び、夢で」

文字数 2,413文字

 辺境の田舎村暮らしなど、全てにおいて初心者。
 違い過ぎる生活環境、やった事もない仕事の数々、複雑な人間関係等々……
 でもサキは、全てを真っ向から受け止め、一生懸命頑張っている。
 
 元サポート神?の俺や担当のクーガーは勿論、「まるで昔の自分の姿を見ているみたいだ」と、元貴族令嬢コンビのソフィ、グレースからも強力なバックアップを受けていた。
 
 当然、他の嫁ズも、新参のサキを優しく(いた)わってくれている。
 皆の助けを受けて、(くじ)けず(あきら)めずに、笑顔で大奮闘するサキ。
 その姿はまさに、ジュリエットへ熱い宣言をした通りだ。
 
 そして……
 サキがボヌール村へ来て、丁度10日目の晩の事……
 夜も更け、時刻はもう深夜。
 末っ子のベルことベルティーユは、ママのグレースと速攻で夕飯後に就寝したのを皮切りに、我が8人のお子様軍団が宵の口にはダウン。
 次いで俺と嫁ズ&サキも、家事等々を終わらせて寝る事に……
 
 ちなみに今夜は、サキが俺と、ふたりっきりで寝る番だ。
 嫁ズと話し合いの結果、サキも『ローテション入り』したのだ。

 だって、あの宿屋で寝たように「俺に添い寝してくれ」って言うから……
 
 え?
 いい加減にしろ?
 いくら、こういう展開の話でも9人の嫁なんて多すぎる?
 大爆発しろ?
 仰る通りです。
 よくよく考えてみれば……
 俺って、神様や女性に、ひたすら流されるだけの人生なんです。
 本当に……御免なさい。

 という事で、話を元に戻すと……
 一緒に寝ても、「結婚するまで、エッチは絶対なしだ」とサキには厳命。
 俺に念押しされ、「結婚していなくても私達は恋人でしょ!」と、頬を膨らませながら寝る『ぶ~たれサキ』

 「もう16歳だから、この王国の法律でも結婚出来る」とか、
 「私の事、愛していないの、ケンは?」とか、
 「ジュリエット様とも約束したでしょ?」とか……
 こんな時に、サキの猛烈な抗議は、最低でも約10分間は続く。
 
 しかし残念ながら、どこぞのスポーツのように抗議で『判定』は覆らない。
 サキには伝えていないが……
 一応、猶予期間内は、清い関係でいようと決意していたから。
 
 凄く「ぶーたれる」けど、サキは俺と一緒に居るだけで嬉しいのだろう。
 言いたい事を言い終わると、すぐ笑顔になり、やがて俺の胸の中で、安心してぐっすりと眠ってしまう。
 
 こうして……
 サキが眠ったのを、しっかり見届けてから眠った俺。
 そんな俺の心の中へまた、聞き慣れた『あの声』が響いて来たのだ。

『こんばんはぁ、ケ~ン君、お疲れ様ぁ』

 おお、管理神様だ。

 気が付けば、やはり俺は意識だけの感覚。
 例によって居る場所は、何もない真っ白な空間である。
 転生した時から、もう見慣れた『異界』って、奴だ。
 
 そもそも、いくらレベル99の俺だって、自ら天界の管理神様へ会いに行く事は絶対に不可能である。
 なので、ほぼ諦めていたのだが……管理神様の方から来てくれた。
 
 今回の件では、聞きたい事がた~くさんあった。
 だから、あちらから、いらして頂いて凄く嬉しい。
 気持ちはズバリ、渡りに船。
 呼び掛けに答える声にも、一段と気合が入る。

『は~いっ! 管理神様、こんばんはぁ! お疲れ様です、すご~く、お待ちしておりましたよおっ』

『おやおや、気持ちは分かるけど、いつもより声の張りが一段と凄いね』

『そりゃ、そうです。今回はいろいろありましたからっ』

『いろいろか……確かに、いろいろあったよね』

 あれ?
 何か、管理神様が普通に真面目だ。
 物言いが軽くないし、いつもの「よ~ん」って口癖がない。
 
 「神様が真面目」って、俺が言うのも、いかがなものだけど……
 言葉遣いも含め、何か、いつもと様子が違う。

『まずは今回のお礼を言っておくよ。よくぞ、サキ・ヤマトを導いてくれた』

 あれ?
 管理神様がお礼を言って来た。
 確かに、天界の緊急事態とやらで頼まれたけど。
 今回は当たり前の事をやっただけ。
 
 前にも言ったけど、転生後、管理神様には本当にお世話になっている。
 俺は素直にそう思う。
 
 そして、こちらこそ、まずはお礼を言わないといけない。
 ジュリエットこと、ヴァルヴァラ様が快くOKしてくれたけど、サキの『移籍』は管理神様の尽力もあったからに違いないもの。

『いえいえ、こちらこそありがとうございます! 本来なら違う世界へ転生するサキを、俺の居るこの世界へ移す許可を頂きまして、嬉しい限りです』

『おお、そう言ってくれるのかい?』

『はい! いろいろと天界の(ことわり)が難しそうなのは分かります。俺一瞬でも、神様をやらせて貰いましたから。失礼な言い方かもしれませんが、神様って凄く大変だなって認識していますよ』

 臨時の神になった俺は、天界にこそ行かなかった。
 だが、『神様のお仕事』ってとても大変なのは分かる。
 創世神様が定めた、厳しい(ことわり)(のっと)って、生きていかねばならない。
 ヴァルヴァラ様の、深~い話を聞いても然りだ。
 
 その点、俺は下界で自由に暮らさせて貰っている。
 確かに転生したこの異世界で、血のつながった身内が皆無の、天涯孤独な身の上ではある。
 だけど、様々な素敵な出会いをさせて貰った。
  
 特に女性達との出会いは、運命的で素晴らしいとしか言いようがない。
 結果、いっぱい大恋愛をして、8人もの嫁を貰う事が出来た。
 愛の結晶ともいえる子供も8人。
 
 そして、サキも俺の嫁となる。
 一生かけて守る、愛する大切な家族の一員になる。

 今回のサキの件に関しても、俺は管理神様へ、心の底から感謝していたのだった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

☆ケン・ユウキ(俺)
本作の主人公。
学校卒業寸前、22歳の時に突然謎の死を遂げ、管理神から、サポート女神付きの異世界への転生を打診される。いくつかの選択肢を与えられたが、結局新人女神クッカを選び、外見は15歳の少年として西洋風異世界へ転生。その際、究極ともいえるレベル99の力を与えられた。

結局、転生して流れ着いた先はヴァレンタインという王国の南方、辺境ともいえるボヌール村。その後、数奇な運命に翻弄され、苦難の末に幸せを掴んだ。
転生して約3年後の現在……『ふるさと勇者』としてだけではなく、『ボヌール村村長代理』としても、大車輪の活躍振り。愛する家族と仲間を守る為に日々奮闘中である。

☆クッカ・ユウキ(クッカ)
元々はケンが異世界へ転生した時に、管理神から付けられた新人サポート美女神。レベル99の力を使いこなせるよう、異世界に不慣れなケンを全身全霊でサポート。

出自に重大な秘密を持っており、その後、人間に転生。相思相愛で、ケンの妻となった。
ユウキ家長女タバサの母。ハーブの知識に長けた、優れた魔法使い兼治癒士で上級の力を持つ。

☆クーガー・ユウキ(クーガー)
突如ケンの住む異世界へ降臨した、クッカそっくりの美しい女魔王。クッカと同じく出自に重大な秘密を持っており、ケンに深く執着、世界を滅ぼそうとした。その後、人間に転生し、相思相愛でケンの妻となる。
ユウキ家長男レオの母で、上級の力を持つ優れた魔法使いで戦士。厳しい教育方針の為、子供達から怖れられ、付けられた渾名は『ドラゴンママ』


☆リゼット・ユウキ(リゼット)
ボヌール村村長、ジョエル・ブランシュの娘。

病気になった祖母の為にハーブを摘みに行った際、ゴブリンの大群に襲われ、絶体絶命のピンチに陥る。だが転生したばかりのケンに救われ、運命の出会いを遂げる。
現在はケンの妻でユウキ家第一夫人、母フロランス似のしっかり者。良妻賢母タイプの美人で、フラヴィの母。ライフワークであるハーブ園の経営にも力を入れている。


☆レベッカ・ユウキ(レベッカ)
ケンの妻のひとりで、イーサンの母。唯一ケンを「ダーリン」と呼ぶ。門番ガストンの娘で、整った顔立ちをしたモデル風スレンダー美人。弓術に長けた、優秀な戦士で狩人。結婚しても面食いで、イケメン好きは変わらず。
ケンと初めてした『デート』の際、超ツンデレな性格から、暴走。オーガに襲われ、危うく喰い殺されそうになるが、ケンにより命を救われ、ふたりは結ばれた。

☆ミシェル・ユウキ(ミシェル)
ケンの妻のひとりでボヌール村唯一の商店、大空屋の店主。シャルロットの母。経済感覚に長けた金髪碧眼の超グラマラス美人で、拳法の達人。
明るい性格故、表には出さなかったが、父を魔物の大群に殺され、生きる事に絶望していた。ケンとの出会いで立ち直り、本来のポジティブな性格で家族を支えている。レベッカとは親友同士。母のイザベルは、領主オベールの妻となった。

☆クラリス・ユウキ(クラリス)
ケンの妻のひとりでポールの母。リゼットの親友で、優しそうな垂れ目が特徴。顔立ち通り、大人しい性格の、癒し系美人。洋服作り、絵画、工作などマルチな才能を発揮する。ケンだけしか呼ばないが、別名ボヌール村の、レオナルド・ダ・ヴィンチ。
子供の頃、両親を魔物に殺され、孤独に耐えて懸命に生きて来たが……農作業を手伝ってくれたケンにひとめぼれ。恋に落ち、見違えるように明るくなって、ケンに愛を告白し、結ばれる。


☆ソフィ・ユウキ(ソフィもしくはステファニー)
ケンの妻のひとりで、品のある凛とした美人。ララの母。
正体を隠す為、ケンの魔法で髪と瞳の色を変えてはいるが、実は領主オベールの愛娘ステファニー。貴族社会のしがらみから、寄り親へ『妾』として差し出される寸前に、ケンに救われて結ばれた。

☆グレース・ユウキ(グレースもしくはヴァネッサ)
 ケンの妻のひとりで、ソフィ同様、品のある凛とした美人。
 魔法で正体を隠してはいるが、実は元貴族で、ドラポール伯爵家令嬢ヴァネッサである。
 領主オベールの元・後妻でもあり、血の繋がらない娘ソフィことステファニーとは犬猿の仲だった。
 家の駒として3度も政略結婚をさせられ、心身が疲弊してしまったが……

 ケンに救われ、後に結ばれる。
 村で暮らすようになって、角が取れたのか、芯は強いが本来のおっとりした性格に……

 ユウキ家は勿論、村の子供達全員から、人気ナンバーワンのグレースママとして慕われている。

 ソフィとも和解、実の姉妹以上の間柄となった。

☆サキ・ヤマト(サキ)

16歳の少女。可愛いが、とてもわがままできまぐれ。

ケンが元居た世界・日本で暮らしていたが、不慮の交通事故で死亡し、転生。

管理神により、ケンとは違う異世界へ送られた。

サポート女神の休暇から、臨時の神様を命じられたケンが『担当』となり、いろいろ世話を焼くが……


☆管理神

ケンの住む異世界を含め、いくつかの世界を管理する神。

口癖に独特な特徴がある。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み