交響曲 第1番 「巨人」 マーラー

文字数 1,679文字

<タイトル>

交響曲 第1番 ニ長調 「巨人」

<作曲者>

グスタフ・マーラー

<おすすめ盤>

リッカルド・シャイー(指揮)
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

https://open.spotify.com/intl-ja/album/2l3IspQ4ayL9bLIsY9oEKG?si=AMdgfo_HQmWKiG_LGQsSYw

ジュゼッペ・シノーポリ(指揮)
フィルハーモニア管弦楽団

https://open.spotify.com/intl-ja/album/4Y8L8cALceGVTlhPRvef9A?si=pyUVRfv2ShiX8P6SXaTQiQ

クラウス・テンシュテット(指揮)
シカゴ交響楽団

<解説>

 オーストリア(正確には現チェコ領の村カリシュト)出身の作曲家マーラーによる、記念すべき交響曲第1番です。

 サブタイトルの「巨人」は、彼が当時に愛読していたというジャン・パウルの同名小説から来ています。

 インスピレーションを得たというエピソードからですが、あまり関連性がないという学説もあります。

 われわれ視聴者にすれば、名前があったほうが呼びやすいかもしれません。

 それはともかく、マーラー先生の若さが爆発した名作のひとつであると言えます。

 第1楽章の出だしは、弦セクションによるフラジョレットという奏法で開始されます。

 特有のキーンとした持続音により、聴く者に何かが始まる予感を感じさせます。

 当時は大胆な手法であり、耳に障ると一部でひんしゅくを買ったりもしました。

 しかし現在では、音楽の導入として当たり前のように使用されるのが興味深いです。

 たとえばゲームのファイナルファンタジー7のオープニングでも、このフラジョレットが使用されています。

 マーラー先生、すごすぎる。

 メインの部分では自作の歌曲「さすらう若人の歌」から第2曲「朝の野辺を歩けば」の旋律が使用されています。

 いかにも春の散歩道のような、るんるんした気分になれるパートですね。

 第2楽章はこれまたウキウキとするスケルツォになっており、ずんたった~と小躍りしたくなります。

 第3楽章はフランスの思想家ジャン=ジャック・ルソーによる楽曲、日本では「むすんでひらいて」として知られているメロディが、皮肉的に用いられているのが特徴です。

 この楽章はマーラーが幼少期のトラウマを描写したとも研究されており、途中で警ら隊が演奏する軍楽の旋律が断片的に挿入されます。

 この部分も先生の精神世界に肉薄できるので、たいへん興味深いですね。

 第3楽章が消えるように終わると、静寂をぶち破るかのごとく、第4楽章がはじまります。

 この出だしも、たとえばドラマ「のだめカンタービレ」などで使用されているので有名です。

 嵐のようにうねる音楽は、やがて豪華絢爛なフィナーレへと突入します。

 ホルン奏者が起立するよう楽譜に提示されているので、ライブで見るととても面白いです。

 いっぽうでこのフィナーレは、「偽りの大団円」とも呼ばれています。

 古典交響曲の伝統というか、あえて言うのなら「暗黙の了解」として、交響曲は華麗に終わるものであるという、ある種の強迫観念があったのですね。

 さすがのマーラー先生も、のっけの第1交響曲から、その伝統には逆らえなかったということです。

 なので「いやいやながら」このように「わざとらしく」「わかりやすい」終わり方にしたのだとか。

 ホルンの起立も「毒食わば皿まで」な演出のようにも取れ、非常に好奇心を刺激されます。

 簡単に楽曲解説をいたしましたが、マーラーの交響曲の中では特にとっつきがよいナンバーですので、よろしければ聴いてみてください。

 おすすめ盤は安定感のあるドライブのシャイー盤、手に汗を握るシノーポリ盤と、テンシュテットによるシカゴ響との一期一会のライブ録音を推薦しておきます。

 しかしながら、ほかにもいくらでも名演はありますから、手にとりやすいものがよいかと思います。

 動画サイトにもコンサートの映像が山ほどありますし。

 たまにはがっつりシンフォニーも悪くありませんぞ。
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