「交響曲 第4番」 シベリウス

文字数 1,137文字

<タイトル>

交響曲 第4番 イ短調 作品63

<作曲者>

ジャン・シベリウス

<おすすめCD>

ロリン・マゼール(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
デッカ(レーベル)

<解説>

 シベリウスはフィンランドの国民的作曲家ですが、このエッセイで紹介させてもらうのは初めてとなります。

 交響曲第4番は1911年に完成されましたが、この年にはマーラーが亡くなっているので、個人的には複雑な気持ちがあります。

 その3年ほど前から、シベリウスは体調が悪化し、のどに腫瘍(しゅよう)があると診断を受けています。

 はじめにヘルシンキ、次にはベルリンまでおもむき、それを摘出(てきしゅつ)することに成功はしたものの、シベリウスの心には死への恐怖が芽生(めば)え、その中でこの作品は作られました。

 作曲者自身がみずから「心理的交響曲」と呼んだように、この曲にはシベリウスの精神的な苦悩・懊悩(おうのう)吐露(とろ)が見受けられます。

 音楽はまるで(うめ)(ごえ)のように始まり、すぐに現れるチェロのモノローグは、まるでシベリウスが苦しみを吐き出しているかのようです。

 しかしながら、ときおり顔を出す美しいメロディがそれらとのコントラストを成すのか、天国的な甘美(かんび)さを持っています。

 その晦渋(かいじゅう)さゆえ、初演当初は問題作として(あつか)われましたが、イギリスの音楽研究家であるセシル・グレイによれば、「無駄な音符が一つたりとも存在しない」とのことです。

 わたしの場合、精神的に落ちているときこの曲を聴くと、不思議なことに気分が楽になってくるのです。

 心理学では効果が認めれているそうですが、落ちこんでいるときに暗い音楽をかけると、むしろ精神状態が回復する場合があるということです。

 伝家の宝刀の一つとして、大切に取っている一曲ですね。

 マーラーはかつて、後輩作曲家のシベリウスとの対談の中で、「交響曲は世界のようでなければならないのだ」と語っていますが、シンフォニストとしての先輩の言葉に、本人は実際、どう思っていたのか――そこが気になりますね。

 「こいつ、うぜぇ……」とかだったら嫌ですが(汗)

 おすすめは、故ロリン・マゼールの(あぶら)が乗っていたときに、ウィーン・フィルと録音した全集からのものです。

 過不足(かぶそく)がなく、しかし()()まされていて、シベリウスの交響曲入門としてはかっこうのセットだと思います。

 廉価(れんか)ボックスが出ているので、この際、シベリウスの交響曲全7曲をまとめて聴いてみるのも、アリかもしれません。
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