「弦楽四重奏曲 第14番」 ベートーヴェン

文字数 1,303文字

<タイトル>

弦楽四重奏曲 第14番 嬰ハ短調 作品131

<作曲者>

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン

<おすすめCD>

アルバン・ベルク弦楽四重奏団

Warner Classics(レーベル)

旧EMI(音源)

<解説>

 ベートーヴェンの全部で16曲ある弦楽四重奏曲の中から、彼の後期作品に位置づけられる第14番をご紹介いたします。

 弦楽四重奏曲というものは通常、全4楽章で構成されますが、この曲はなんと7楽章もあります。

 しかも第3楽章と第6楽章は、次の楽章への導入曲という感じで、わずか数十秒で終わってしまいます。

 いわゆる「標題音楽」――特定のテーマや思想を持つ音楽を創始したのは、フランスのベルリオーズといわれますが、ベートーヴェン先生も「絶対音楽」――音楽はあくまで音楽のみであって、それ以上でも以下でもないという捉え方――の中にあって、「標題音楽」への扉を叩いたといわれます。

 扉を叩くのが好きなイメージですよね、先生(汗)

 それはともかくこの第14番は、どこか世界観のようなものを持っているように感じられます。

 具体的な内容までは、ベートーヴェン先生の頭の中なので知りえませんが、全曲を通して、何かストーリーのようになっているような気がするのです。

 心象風景のようなものを描写しているというか……

 個人的なおすすめ楽章は第5楽章と第7楽章です。

 前者はとても印象的な、しかし短い音型をいくつも積み重ねて構成されており、ハムスターのようなかわいらしい動物が、なにやらてけてけと遊んでいるような、なんともチャーミングな音楽です。

 前の第4楽章が静かに終わったかと思うと、アタッカ――英語の「アタック」に当たり、間髪入れずに次の楽章に突入すること――で「でけでけ!」とチェロが音型を予告し、びっくりして「うおっ!?」となってしまいます。

 後者は激しい嵐のような音楽で、クラシックというよりは、まるでヘヴィメタルです。

 いかにもロックな生き方をしたベートーヴェン先生ですが、もしかして彼の頭の中には、はるかのちに登場するであろう音楽のイメージがあったのかも――なんていったら、いくらなんでも大げさでしょうか。

 全7楽章の大曲ですが、静寂から激情まで、人間のあらゆる感情がぶち込まれている感じがして、息をつく暇もなく、興奮のしっぱなしになります。

 わたしも先生のごとく、苦悩から歓喜へといたりたいものです(難ゲー!)

 CDは弦楽四重奏団の中で王様のように位置づけられているアルバン・ベルク弦楽四重奏団のものをおすすめします。

 最近リマスターされた全集が、廉価で新たに再発されたようですので、ベートーヴェン先生の弦楽四重奏曲をまとめて鑑賞するのにはうってつけだと思います。

 アルバン・ベルク弦楽四重奏団は、のちにライブで全集を再録音していますが、時間をかけて慎重に録音されたこちらの旧全集のほうが、安定感があってとっつきにはよいかと思われます。

 こんなにすばらしい全集が2千円とは、喜んでいいのやら(汗)
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