「幻想交響曲」 ベルリオーズ

文字数 1,161文字

<タイトル>

幻想交響曲

<作曲者>

エクトール・ベルリオーズ

<おすすめCD>

シャルル・ミュンシュ(指揮)

パリ管弦楽団

ワーナー(レーベル)

旧EMI(音源)

<解説>

 ベルリオーズといえば、クラシック作曲家の中でも指折りの変態(失礼!)として有名な人物です。

 恋心を(いだ)いた女性に女装してストーキングしたり、ピアノが弾けないのでギターで作曲したり、サイド・エピソードにはことかきません。

 文学のユゴー、絵画のドラクロアと並んで、フランス・ロマン派の3大グロテスクとも呼ばれます。

 そんな彼の代表作といえば、やはりこの「幻想交響曲」になるでしょう。

 音楽史上おそらくはじめて、楽曲の中にコンセプト性を与えた傑作です。

 若い芸術家――作曲者ベルリオーズ本人の投影――が恋に破れて毒をあおり、夢を見るという、空想(というか妄想)の世界です。

 全5楽章ですが、そのすべてに「恋人の主題」と呼ばれるテーマが顔を出し、それは登場するたびに形を変えます。

 これは「固定楽想(こていがくそう)(イデー・フィクス)」と呼ばれ、のちにワーグナーが「ライト・モチーフ」として昇華しています。

 要するに、音楽の中でどんなことが起きているのかを聴き手に教えるしかけですね。

 「テーマ曲」というやり方の出発点はここからだったのです。

 第1楽章「夢、情熱」では、この恋人の主題に伴奏する形で、低弦のリズムが刻まれますが、これはベルリオーズの心臓の鼓動を表現していて、恋人が目の前に近づくにつれ、「鼓動」も早くなっていきます。

 第2楽章「舞踏会」はテレビなどでも使用される有名曲なので、ご存じの方も多いでしょう。

 ここでは恋人とダンスしている感じですね。

 第3楽章「野の情景」では、オーボエとコール・アングレのかけあいがテーマですが、途中から返事がなくなる描写が興味深いです。

 第4楽章「断頭台の行進」では主人公がギロチンにかけられます。

 聴衆のあざける笑い声、ギロチンが落ち、首が地面にバウンドするなど、よく思いついたなという描写があります。

 ギロチンが落ちる直前に、恋人の主題が一瞬だけ顔を出すのが面白いです。

 第5楽章「サバトの夜の夢」は、地獄に落ちた主人公が、悪魔や魔女たちとドンチャン騒ぎをします。

 グレゴリオ聖歌の「怒りの日」が鳴り響き、音楽はクライマックスへ。

 交響曲というと難しいイメージですが、この曲は入門の一つにいいかもしれません。

 一度ハマると、ベルリーズの暗部にやられてしまいます。

 CDはこの曲を得意としたミュンシュの一番知られている名盤です。

 爆演として有名ですので、血の気のあまっている方はぜひ。
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