「ピアノ・ソナタ 第14番」 シューベルト

文字数 851文字

<タイトル>

ピアノ・ソナタ 第14番 イ短調 D.784

<作曲者>

フランツ・シューベルト

<おすすめ盤>

アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)

<解説>

 シューベルトのピアノ・ソナタですが、作曲者の生前に楽譜は出版されず、死後11年も経過した1839年になって、やっと初版が刊行されています。

 モーツァルトのピアノ・ソナタ第8番イ短調からインスピレーションを得たようで、調性も同じになっております。

 シューベルトのピアノ・ソナタでイ短調というと、「のだめカンタービレ」にも登場した第16番のほうが有名で、演奏機会も多いとのことです。

 全3楽章ですが、特に聴きごたえがあるのは、個人的に第1楽章です。

 呪術の儀式のような第一主題と、打って変わって繊細で美しい第二主題が、消えては現れるように展開されます。

 それはあたかも、ロウソクの揺らめきを想起するような。

 あやしくもはかなげと言いますか。

 調性も安定せず、特に展開部では、ソナタ形式の枠組みそのものと格闘しているような、大胆な進行となります。

 シューベルトの葛藤や、もがきをかいまみているような気もしてしまいます。

 彼が試みた調性や形式の破壊、正確には「再構築」と呼んだほうがいいかもしれませんが、のちのグスタフ・マーラーに受け継がれることになります。

 表現のために「型」の限界に挑むというアプローチは、なんだかみなぎるものがあります。

 ソナタ形式が悲鳴を上げているような、この綱渡り感がたまりません。

 陰鬱な音楽ではありますが、一度ハマるとやみつきになります。

 おすすめはこの曲を好んだブレンデルの演奏です。

 複数の録音がありますが、回を重ねるごとに洗練されていく様子に身震いします。

 シューベルトのソナタはどれもすばらしい内容ですが、あまり知られていないのが現実だと思います。

 音楽ファンは宝石のように大切にして、ひっそりと楽しんでいるイメージです。

 さすらい人フランツの暗部のようにも感じ、とても興味深いです。

 こっそりのぞいてみてはいかがでしょうか。
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