弦楽四重奏曲 「皇帝」 ハイドン

文字数 965文字

<タイトル>

弦楽四重奏曲 作品76-3 ハ長調 「皇帝」

<作曲者>

ヨーゼフ・ハイドン

<おすすめ盤>

エンジェルス弦楽四重奏団

モザイク弦楽四重奏団

<解説>

 オーストリアの作曲家ハイドンが書いた弦楽四重奏曲で、6曲からなる「エルデーディ四重奏曲」の3曲目になります。

 「五度」や「日の出」でも触れましたが、エルデーディ伯爵からの依頼で作曲され、献呈したことからこの名がついているのでした。

 サブタイトルの「皇帝」は、第2楽章が神聖ローマ帝国皇帝フランツ2世に捧げられたオーストリア国歌「神よ、皇帝フランツを護りたまえ」の変奏曲になっていることからこう呼ばれています。

 ハイドンはエステルハージ侯爵という貴族のおかかえ作曲家としておよそ30年間も勤務しましたが、侯爵の死後、興行主のザロモンからの誘いでイギリスへと渡ります。

 そこでイングランドの国歌「神よ、国王を護りたまえ」(ゴッド・セイブ・ザ・キング)を耳にし、祖国オーストリアにも国歌が必要だと、なみなみならぬ意欲を燃やすようになります。

 ある種のホームシックもあいまって帰国したのち、上述の国歌「皇帝フランツ」を作曲しました。

 追って彼は、そのメロディを使用した弦楽四重奏曲を書いたのです。

 ハイドンが全人生で培ってきた技術や書法が結実した、濃密な一曲になっております。

 ちなみにこの「皇帝フランツ」の旋律は、歴史のどさくさで現在のドイツ国歌に転用されています。

 たとえばサッカーのワールドカップなどで耳にしたことのある方もいらっしゃるでしょう。

 ナポレオンが率いるフランス軍がオーストリアに侵攻したときも、ハイドンは国民を鼓舞し、また慰めるため、このメロディを弾きつづけたといいます。

 そして祖国が征服された日の翌日、すでに病魔に蝕まれていた彼は息を引き取りました。

 歴史とは涙なくしては語れないものですね。

 それでも音楽は残っているのですから、表現とはかくやと感じてしまいます。

 おすすめは全集を出しているエンジェルス・カルテットと、ハイドンが存命の時代におけるスタイルで演奏しているモザイク・カルテットのものです。

 ほかにも名盤はたくさんありますから、いつものように動画サイトやアプリで探されるのがよいでしょう。

 背景を知ると音楽の聴き方もまた、変わってくるかもしれません。
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