「教皇マルチェルスのミサ」 パレストリーナ

文字数 1,147文字

<タイトル>

教皇マルチェルスのミサ

<作曲家>

ジョヴァンニ・ピエルルイージ・ダ・パレストリーナ

<おすすめ盤>

マッシモ・パロンベッラ(指揮)

システィーナ礼拝堂聖歌隊

<解説>

 16世紀の作曲家パレストリーナによる、音楽史的に重要なミサ曲のひとつです。

 歴史にくわしい方は「トレント公会議」というワードを聞いたことがあるかもしれませんが、それにまつわるエピソードがあったとかつて言われていました。

 要約すると、ミサ曲において歌詞を的確に伝えようとしたいのに、当時のポリフォニーという複雑な音楽形式ではマッチしているとは言えず、これを廃止してはどうかという流れになったそうです。

 現代の音楽は基本的にホモフォニーといって、それぞれのパートが独立して演奏されますが、ポリフォニーにおいては各パートが有機的に絡み合い、それぞれが部分でありながら全体と言いますか……

 理論にうといので説明するのに難がありますが、ジャンルでいうとフーガとかパッサカリアとか、有名な名前のものが多いかと思います。

 とにかく、ポリフォニーを廃止しようとした協会に対して、パレストリーナは歌詞の聞き取りやすいこの「マルチェルス」を作曲し、その運動を阻止したと言われていたのです。

 近年の研究によって、ミサの作曲はトレント公会議とは直接的な関係はないとされており、逆にちょっと残念な気もします。

「音楽の力で~」のほうが夢がありますものね。

 曲のほうはというと、時代的なものもありますが、いわゆる「ザ・クラシック」とは少し違う印象を受けるかもしれません。

 たとえば古典派・ロマン派などの音楽に比して、抑揚はかなりおとなしい感じです。

 しかしながら「静謐」という単語がまさにぴったりで、水の流れをイメージするような静かな、美しい合唱曲になっております。

 パレストリーナは生涯のほとんどをヴァチカンのサン・ピエトロ大聖堂の中で過ごし、ミケランジェロが設計した同大聖堂の工事現場に毎日立ち会っていたようです。

 その様子からの着想も少なくないのではないかと、あくまで可能性としてですが、言われていたりします。

 これも夢のある話ですね。

 ミケランジェロと交流はあったのでしょうか?

 歴史のロマンのひとつと言えます。

 おすすめ盤はドイツ・グラモフォン・レーベルの録音で、システィーナ礼拝堂聖歌隊による合唱ですから、ガチの本場であると言えます。

 それが絶対というわけではありませんが、特に少年合唱がくっきりしている点が面白い名盤です。

 長くなってしまいましたが、秋の夜長などには最高のナンバーですし、長さも30分程度ですから、聴きやすい部類だと思います。

 読書でもしながら、ルネッサンス当時の光景を思い浮かべてみるのも、ある種の妙味ではないでしょうか。
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