「交響曲 第8番」 ブルックナー

文字数 1,308文字

<タイトル>

交響曲 第8番 ハ短調

<作曲者>

アントン・ブルックナー

<おすすめ盤>

ハンス・クナッパーツブッシュ(指揮)

ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

<解説>

 オーストリア・ウィーンの作曲家ブルックナーが完成した最後の交響曲です。

 次に来る第9番は未完成に終わっていて、しかしまぎれもない傑作ですので、また別の機会に取り上げてみたいと思います。

 勝手な推測ですが、クラシック音楽イコール「難しい」というイメージのルーツのひとつは、ブルックナーにあるのではないかと考えてしまいます。

 自分もずっと聴いていてわけがわからない状態でした。

「なんかすごいことやってる気はするけど……」

 という印象ですね。

 時間的な長さも要因だと感じます。

 この第8番もかつては、指揮者の演奏スタイル次第でCD一枚には収まらないという事態が発生していました。

 しかしながら特別なファンが多いことも確かであり、かめばかむほど味の出る、いわゆる「スルメ音楽」の代表格に位置づけられています。

 クラシックってけっこう、努力・忍耐・根性の世界なんですよね。

 あえて言うのなら登山に似ているかもしれません。

 知らない人からは「そんなことをして何が楽しいの?」となるところが近しいでしょう。

 ブルックナーはまさにというか、クラシック音楽のK2と言えそうです。

 彼の作品は学問的には絶対音楽、あくまでも「音の塊」であり、そこに思想や精神の投影など存在しないという部類に選別されます。

 しかしですが、ブルックナーの音楽を聴いていると、彼が生まれ、はぐくまれた自然やその情景がひしひしと浮かんでくるようで、なんだかジーンと来てしまいます。

 理屈も大切ですが、感性も同様ではないかと。

 要はバランスですね。

 この音楽性の流れが弟子であるマーラーへ受け継がれていることを想像すると、グッとこみあげてくるものがあります。

 この交響曲を前にして、自分の悩みなどちっぽけなんだなと。

 表現の力は偉大ですね。

 ちなみにブルックナーはパーソナル的にはけっこうヤバかった人らしく、クラシックファンの中には「なぜこんな人間にこのような偉大な音楽がつむぎだせたのか?」とぼやく向きも少なくないのです。

 興味のある方は検索してみてください。

 漫画のネタになりそうなエピソードのオンパレードですよ。

 おすすめは古い録音ですが、ブルックナー演奏に定評のある指揮者クナッパーツブッシュ、名前が長いのでファンは「クナ」と呼びますが、ウェストミンスターというレーベルから発売されています。

 音楽評論家の故・宇野功芳先生が紹介されていたので、「クラヲタ」には有名な一枚に数えられます。

 四の五の言わないから聴いてくれとしか申し上げられないのがつらいところですが、それくらい刺さる音源です。

 最近はSpotifyで見つけて、折に触れてかけているのですが、いつも結局最後まで聴いてしまうんです。

 「本当の感動は表現できない」と言われますが、もしかしたらその領域なのかも。

 強くおすすめはできないアーティストですが、もしハマる機会があったのなら、自分だけの宝物のようになることうけあいでございます。
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