第9話:風邪をひいた日の話(その1)

文字数 905文字

誕生日会が終わって、休み明けの月曜日。

いつものように出勤して、職員室のドアをガラッと開ける。

「おはようございます」

「おはよう、高山先生」

他の先生たちにあいさつをしながら、自分の席に着く。

「さてと」

席に着くや否や、カバンからマグカップを取り出した。

そう、このマグカップは西森から『誕生日プレゼント』してもらったものだ。

マグカップもうれしかったけど、それ以上に、西森から『好き』と言ってもらえて、初めてキスをしたことが、おれにとっては衝撃的で最高のプレゼントとなった。

マグカップを見ると、あの時のことが鮮明に思い出される。

西森の真っ赤に照れた顔。
キスした時の、柔らかな唇の感触・・・。

マグカップを見つめながら、ぽ~っとしていると、
「お、やっと新しいのを買ったんだな」
と山根先生が声をかけてきた。

急に話しかけられたので、
「えっ!?あ、はい!?」
と、周りの人たりが驚くような大きな声で返事をしてしまった。

おれの挙動不審な態度を見て、山根先生はクスクス笑って、
「かわいいマグカップだな。
彼女からのプレゼント?」
と小さな声で聞いてきたので、おれはカーッと真っ赤になる。

ううっ・・・
いつもなんで、山根先生はすべてお見通しなんだよ・・・。

ウソをついてもすぐ見破られそうなので、
「はい・・・そうです・・・。
彼女からの大切なプレゼントです・・・」
と小さい声で答えると、山根先生は、
「じゃあ、大事に使わないとな」
と言って、その場を去っていった。

おれはホッとして、マグカップを机の上に置き、今日の授業のスケジュールを確認する。

「今日の授業は・・・」

西森のクラスの授業は入っていない。

ということは、クラスに出向かいない限り、西森とは会えない可能性が高い。

会いたいけれど、キスした後なので、おれも西森もドギマギして変な行動に出るかもしれないから、会わない方がいいのかもしれないなぁ・・・。

とも思ったけど、一目でもいいから会いたい、というのが正直な気持ちだ。

そんなことを考えていると、『キーンコーンカーンコーン』と予鈴が鳴った。

「おっと、1時間目は1年の授業だったな。
そろそろ行かないと」

おれは教材を手にすると、あわてて職員室を飛び出した。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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