第10話:教育実習生にメラメラ(その10)

文字数 996文字

「西森、ちょっといいか?」

授業が終わって、吉川先生が私に声をかけてきた。

「ハイ、何ですか?」

何の用かと思っていると、
「悪いけど、中原先生に学校の案内をしてやってくれないか?」
と言ってきたので、
「えっ!?」
と驚いてしまった。

中原先生は私の方をチラッと見て、
「よろしくお願いします」
とほほ笑んでいる。

「西森は学級委員長だし、学年一の優等生でもあるから、安心して任せられると思ったわけだ。
じゃ、頼んだぞ!」

そう言って、吉川先生は職員室へさっさと帰っていった。

頼んだぞ、って!
なんで、よりにもよって「私」なのよ!

「はあ・・・」とため息が出そうになった時、
「西森さんのウワサ、職員室でも聞きました。
本当に成績優秀で、先生達からの信頼も厚いって。
私、勉強は苦手なので、うらやましいです。」
と、うれしそうに中原先生が話しかけてきた。

すごい・・・。

初対面の人にも、グイグイ話しかけて仲良くなろうとする姿勢。

コミュニケーション能力「0」の私からすると、中原先生はまぶしすぎて、クラクラします・・・。

「別にすごくないですよ。
ただ、勉強することしか興味が無いので」

ニコニコと話しかけてきてくれる中原先生とは対照的に、不愛想な返事をする私。

全くをもって、感じが悪い。

「勉強しか興味が無いの?」

中原先生にそう言われて、
「ええ、大学受験は現役合格したいので」
と答えると、
「そっか・・・。
でも、勉強以外のことでも何か興味があること本当はあるんじゃないの?」
と言われた。

「は?別に無いですけど?」

すると、中原先生はクスクス笑いながら、
「だって、高校生ですもの。
恋愛に興味とかあるはずじゃない?」
と、わけの分からないことを突然言い出してきたので、私はビックリして思わず固まってしまう。

「私も高校生の時、ステキな恋愛、いっぱいしていたから。
だから、西森さんも恋愛してるのかなぁ、と思って」

中原先生は、過去の美しい思い出を振り返っているのか、1人目を閉じ、感傷に浸っている。

いやいや、ちょっと待って!

そりゃ、中原先生はステキな恋愛を高校生の時にたくさんしたのかもしれませんが、私はそんなこととは程遠い生活をしているんですよ?

そう・・・
あの人が現れる前は・・・。

その時だ。

「あれ?西森と中原先生?」

この声は・・・。

振り返ると、先生が廊下に立って、不思議そうにこっちを見ている。

わーっ!?
もうっ!!
なんで、このタイミングで現れるのよ!
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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