第8話:先生のお誕生日(その20)

文字数 855文字

そして、とうとうお誕生日の日がやって来た。

私は朝から鏡の前でどの服を着ていこうか悩んでいる。

といっても、午前中は塾なので、あまり浮ついた服は着れない。
みんなに『どうしたの?』とか聞かれそうだし。

無難に『制服』にしようかと思ったけど、先生の家に制服を着た女子高生が入って行くのを目撃されたら、かなり問題になるだろうし・・・。

なので、私服を選んでみたけど、童顔な私が私服を着ただけで、大人っぽく変身できるわけでもない。

結局のところ、制服でも私服でも、先生の家に出入りしていたら怪しまれるのは間違いなさそうだ。

時計を見ると、塾に行く時間が迫っていている。

「あ!もうこんな時間!
なんでもいいや、これ着ていこう!」

結局、手に取ったのはセーラー襟の付いた濃い水色のワンピースだった。

子供っぽい感じがするけど、もう迷っているヒマもないので、急いで着替えて家を出た。

塾に着いても、気持ちはどこか上の空。

成績を落とすわけにはいかないので、しっかり授業は聞いて、ノートもとっているけど、ふと気が緩んだ瞬間に午後からの誕生日会のことを考えてしまって、そのたびに胸がドキドキ高鳴ってしまう。

先生と久しぶりに二人きりで過ごせるのは、とってもうれしい。

うれしいけど、先生の家に行くのは初めてで、やっぱり緊張してしまう。

プレゼントも結局、マグカップだけになってしまったし・・・。

ボールペンとか足したほうがいいのかな?
あ、でも、ボールペンはうれしくないか・・・。

そんなことを考えているうちに、あっという間に午前中の授業が終わってしまった。

「バイバイ、また来週ね~」

塾の知り合いとあいさつを交わし、建物の外に出る。

「先生に連絡しなきゃ」

携帯を取り出し、緊張気味に電話のボタンを押した。

トゥルルルル~

「ハイ、西森!?」

1コールで先生が出たので、ちょっとビックリしたけど、
「先生、今、塾が終わったので、これからお家に向かいます。
10分後の電車に乗るので、着くのは30分後ぐらいになるかと・・・」
と伝えると、先生は、
「分かった、待ってるよ」
と言った。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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