第22話:教育実習生にメラメラ(その22)

文字数 779文字

「せ、先生!?」

何が起こっているのか頭が追い付いていないけれど、先生の広くて大きな胸の中に自分がいることだけは痛いほど分かった。

お互いの心臓の音が感じとれるぐらい、先生が強くギュッと抱きしめてくる。

拒否すればすぐに離してくれるだろう。

でも、このまま先生の「ぬくもり」を感じていたかった。

さっきまで中原先生に対して抱いていたドロドロした気持ちが消えていく。

それぐらい不思議な幸せ感に包まれていくのはナゼなんだろう?

そんなことをポーッと考えていると、先生が耳元で、
「やばい・・・
めちゃくちゃうれしいんだけど・・・」
と、ポツリとつぶやいた。

う、うれしい?

え?
どういうことなの?

私、イラッとして先生に暴言を吐いたのに、何がうれしいの?

首をかしげていると先生が、
「だから・・・その、西森がおれにー・・・」
と、言ったので、
「お、おれに?」
と聞き返す。

何を言いたいのか確認しようと、先生の胸にうずまっていた顔を上げた。

すると・・・

先生の顔が、すぐ目の前にあった。

抱き合っていたため、私が顔を上げると、まるで今すぐにでも、その・・・キスしてしまいそうなぐらいの近さ。

「あ・・・」

こういう状況の時、どうしていいか分からない。

顔をそらそうかと思ったけれど、ジッと見つめてくる先生の瞳が私に魔法をかけたのか、体が固まって身動きができない。

『どうしよう!どうしたらいいんだろう!』
と、心の中で叫んでいると、

「わーっ!!
ダメ、ダメ、ダメだーっ!」
と急に先生が叫んで、あわてて私から体を引き離して4~5メートル位向こう側に走って逃げた。

え?

何が起こったのかよく分からず、しばらくポカ~ンとその場に立ち尽くしていると、先生が、
「西森ーっ!!
嫌だったら、ちゃんと拒否して下さい!!
あやうく、おれは自分を見失いそうでした!
ごめんなさい!!」
と、草むらにしゃがんで、意味不明なことを叫んでいた。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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