第42話:トキメキ文化祭 

文字数 734文字

「先生、どうやって西森の気を引いたんですか?」

突然、水野君が聞いてきた。

「え?
きゅ、急にどうしたの?」

まさかそんな質問をされると思っていなかったので、明らかに動揺して声が裏返ってしまった。

水野君は靴で床をコツコツと軽く蹴りながら、
「先生が警備に行った後、西森と二人でジュースを飲みに行ったんです。
でも、ずっと西森、『先生に嫌われてしまったかも』と言って、悲しそうにしてたから、『先生にジュース持って行こう』って、おれが誘って持って行ったんですよ」
と言う。

え、知らなかった。

おれが一人ヤキモチ焼いて、逃げるようにお化け屋敷から去った後に、そんなことがあったなんて。

西森、そんなに悲しそうにしていたんだ・・・。

ちょっと『うれしい』という気持ちが湧いてきたが、すぐに水野君が、
「つまり、西森、先生にベタ惚れじゃないですか。
今までおれが何度かアタックしても、全く興味も示さないし、勉強のことしか言っていなかったのに、なんで先生には引かれたわけなんですか?
何か西森にしました?」
と聞かれ、ギクッと体が固まってしまった。

や・・・やばい・・・。

完全に水野君は、おれと西森の間に何かあることに気づいてしまっている・・・。

どう否定する?
何て言ったら、疑いを晴らすことができる?

必死で頭の中で案を探そうとしたが、何も思い浮かばない。

くそっ!
沈黙のままなんて、ますます水野君の説を認めているようなものじゃないか!

おれが、
「ええと・・・」
と、とりあえず何かを言い出そうとした時、水野君が、
「すみませんでした。
憶測でモノを言って。
ただ、きっと、おれ・・・」
とうつむき、
「先生がうらやましかったんだと思います。
西森があんなに先生のこと気にしてたから・・・」
とボソッとつぶやいたので、おれは驚いた。



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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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