第32話:トキメキ文化祭
文字数 886文字
「!?」
西森はビックリしたのか、こっちに顔を向けたが、おれは素知らぬ顔で手を握ったまま離さない。
西森もあきらめたのか、それとも呆れたのか分からないが、すぐに何もなかったように前を向き歩き続ける。
ただ、西森がつないだ手をギュッと強く握り返してきた。
分かってる。
さっき水野君に抱きついたのは『事故』だって、分かってる。
だから、おれもさらにギュッと手を強く握り返した。
このままずっとつないだ手を離したくなかったが、すぐにお化け屋敷の出口にたどり着いてしまった。
「あ、もう出口ですね」
水野君がそう言ったので、
「よかった~。
怖かったから、やっと終わってくれて助かった」
と言って、おれは西森の手をソッと離した。
外に出ると、
「おつかれさまでした~。
どう、怖かった?」
と、お化け屋敷の生徒達が、西森と水野君に感想を聞いている。
水野君が、
「雰囲気がすごくよかったね。
お化け役も脅かし方が上手くて、おれもちょっとビックリしたけど、西森の方がもっと驚いていて、怖がっている様子を見るのが楽しかった」
と言うと、西森は顔を真っ赤にして、
「ちょ、やめてよ!
そんなに私、驚いてないし!!」
と否定していたのだが、中でお化け役をやっていた男子が、
「え~、驚いてたよ。
何回も彼氏に抱きついていて、うらやましいなぁ、って思ってたもん
と、サラッと言った。
「え?」
何回も彼氏に抱きついていた・・・
その言葉が、頭の中をグルグルと回る。
西森はおれの方に振り返り、
「ち、違います!!
私そんなに驚いてなんかー・・・」
と何かを言いかけた時、『プルルルル~!!』とおれのスマホの音が鳴った。
あわててスマホを取り出し、
「はい?」
と出ると、
「あ、高山先生?
ちょっと私、急用ができたので、警備の時間を変わってもらえますか?」
と、数学の先生からの連絡だった。
『こんな時に?』と思ったが、『こんな時だからこそ、助かった』という気持ちの方が大きかった。
おれはうなずくと、
「分かりました。
じゃあ、11時30分からおれが行きますね」
と返事をすると、西森と水野君に、
「ごめん、急用が入ったから、後は2人で楽しんできて」
と言って、その場を離れた。
西森はビックリしたのか、こっちに顔を向けたが、おれは素知らぬ顔で手を握ったまま離さない。
西森もあきらめたのか、それとも呆れたのか分からないが、すぐに何もなかったように前を向き歩き続ける。
ただ、西森がつないだ手をギュッと強く握り返してきた。
分かってる。
さっき水野君に抱きついたのは『事故』だって、分かってる。
だから、おれもさらにギュッと手を強く握り返した。
このままずっとつないだ手を離したくなかったが、すぐにお化け屋敷の出口にたどり着いてしまった。
「あ、もう出口ですね」
水野君がそう言ったので、
「よかった~。
怖かったから、やっと終わってくれて助かった」
と言って、おれは西森の手をソッと離した。
外に出ると、
「おつかれさまでした~。
どう、怖かった?」
と、お化け屋敷の生徒達が、西森と水野君に感想を聞いている。
水野君が、
「雰囲気がすごくよかったね。
お化け役も脅かし方が上手くて、おれもちょっとビックリしたけど、西森の方がもっと驚いていて、怖がっている様子を見るのが楽しかった」
と言うと、西森は顔を真っ赤にして、
「ちょ、やめてよ!
そんなに私、驚いてないし!!」
と否定していたのだが、中でお化け役をやっていた男子が、
「え~、驚いてたよ。
何回も彼氏に抱きついていて、うらやましいなぁ、って思ってたもん
と、サラッと言った。
「え?」
何回も彼氏に抱きついていた・・・
その言葉が、頭の中をグルグルと回る。
西森はおれの方に振り返り、
「ち、違います!!
私そんなに驚いてなんかー・・・」
と何かを言いかけた時、『プルルルル~!!』とおれのスマホの音が鳴った。
あわててスマホを取り出し、
「はい?」
と出ると、
「あ、高山先生?
ちょっと私、急用ができたので、警備の時間を変わってもらえますか?」
と、数学の先生からの連絡だった。
『こんな時に?』と思ったが、『こんな時だからこそ、助かった』という気持ちの方が大きかった。
おれはうなずくと、
「分かりました。
じゃあ、11時30分からおれが行きますね」
と返事をすると、西森と水野君に、
「ごめん、急用が入ったから、後は2人で楽しんできて」
と言って、その場を離れた。