第7話:二人の夏休み(その28)
文字数 1,145文字
西森の手を握りしめ、元来た道をひたすら歩いて行く。
「先生、道を覚えているんですか?」
西森が後ろから心配そうに声をかけてきた。
おれはうなずき、
「うん、この道ずっと一本で真っ直ぐ来たし、分かれ道には目印を置いてきたから、こっちでいいはず・・・」
と言ってドンドン歩いて行く。
しかし・・・
「あれ?
もうそろそろ森から出てもいいはずなんだけど、どうなってる?」
歩けど歩けど出口は見えず、森の中。
え?道に迷った?
まさかの遭難?
さっきから雨に濡れているので全く暑くないのに、『遭難したかもしれない』という焦りから、変な汗が出てきた。
『来た道を戻っている』と思っていたが、どこかで間違えたのかもしれない。
そう思い始めると、どんどん焦りが強まって来て、思わず足を止めてしまった。
急に歩くのを止めたのを、不思議に思った西森が、
「先生?」
と、声をかけた時だった。
ピカッと夜空に閃光が走り、『ガラガラドーン!』と激しい音が辺りに響き渡った。
「ひゃっ!」
雷の音にビックリした西森が後ろから抱き付いてきたので、おれも思わず、
「おおっ!?」
とビックリして声を出してしまった。
好きな女の子が後ろから抱きついて来てくれるなんて、うれしい限りのシチュエーションだが、今『プチ遭難』をしているかもしれない状況では、手放しで喜べない。
というか、マジでどうしよう!!
雷も鳴っているし、雨も止まないし、おれも西森もビショビショに濡れてるし、このまま別荘に戻ることができなければ、体調をくずしかねない。
西森はまだおれに抱きついたままで、まだ雷を怖がっている。
そんな状況なのに、ここで『遭難しました』と伝えたら、ますます西森がパニックになるかもしれない。
どうしたらいいものか・・・、と頭を抱えていた時だ。
ふと左の方向に明かりが見えたような気がした。
「え?光?」
もう一度、そちらの方向をジッと見てみる。
やっぱり暗くて何も見えない・・・?
その時、ちょっと強い風が森の中に吹いて、木々の枝がザワザワと揺れた。
木の枝が揺れたおかげで、今度ははっきりと見えた。
やっぱり、何かが光っている!
「明かりだ!
西森、こっちだ!」
おれは西森の手を引っ張り、明かりが見える場所に向かって歩き始めた。
あれは別荘の明かりなのか、それとも、別の建物の明かりなのか。
どちらか分からないけれど、とりあえず、この雨を避ける場所であればどこでもいい。
明かりを目指し、どんどん森の中を歩き進めると、やっと外に出ることができた。
「助かった・・・
というか、この建物なんだ?」
明かりが点いていた建物は、別荘ではなく、ちょっと広めの一軒家のようだ。
家の横には看板が立っていて、この看板の明かりが、森の中から見えていた光の正体だった。
そして看板には、
「お宿『さつき荘』・・・」
と書いていた。
「先生、道を覚えているんですか?」
西森が後ろから心配そうに声をかけてきた。
おれはうなずき、
「うん、この道ずっと一本で真っ直ぐ来たし、分かれ道には目印を置いてきたから、こっちでいいはず・・・」
と言ってドンドン歩いて行く。
しかし・・・
「あれ?
もうそろそろ森から出てもいいはずなんだけど、どうなってる?」
歩けど歩けど出口は見えず、森の中。
え?道に迷った?
まさかの遭難?
さっきから雨に濡れているので全く暑くないのに、『遭難したかもしれない』という焦りから、変な汗が出てきた。
『来た道を戻っている』と思っていたが、どこかで間違えたのかもしれない。
そう思い始めると、どんどん焦りが強まって来て、思わず足を止めてしまった。
急に歩くのを止めたのを、不思議に思った西森が、
「先生?」
と、声をかけた時だった。
ピカッと夜空に閃光が走り、『ガラガラドーン!』と激しい音が辺りに響き渡った。
「ひゃっ!」
雷の音にビックリした西森が後ろから抱き付いてきたので、おれも思わず、
「おおっ!?」
とビックリして声を出してしまった。
好きな女の子が後ろから抱きついて来てくれるなんて、うれしい限りのシチュエーションだが、今『プチ遭難』をしているかもしれない状況では、手放しで喜べない。
というか、マジでどうしよう!!
雷も鳴っているし、雨も止まないし、おれも西森もビショビショに濡れてるし、このまま別荘に戻ることができなければ、体調をくずしかねない。
西森はまだおれに抱きついたままで、まだ雷を怖がっている。
そんな状況なのに、ここで『遭難しました』と伝えたら、ますます西森がパニックになるかもしれない。
どうしたらいいものか・・・、と頭を抱えていた時だ。
ふと左の方向に明かりが見えたような気がした。
「え?光?」
もう一度、そちらの方向をジッと見てみる。
やっぱり暗くて何も見えない・・・?
その時、ちょっと強い風が森の中に吹いて、木々の枝がザワザワと揺れた。
木の枝が揺れたおかげで、今度ははっきりと見えた。
やっぱり、何かが光っている!
「明かりだ!
西森、こっちだ!」
おれは西森の手を引っ張り、明かりが見える場所に向かって歩き始めた。
あれは別荘の明かりなのか、それとも、別の建物の明かりなのか。
どちらか分からないけれど、とりあえず、この雨を避ける場所であればどこでもいい。
明かりを目指し、どんどん森の中を歩き進めると、やっと外に出ることができた。
「助かった・・・
というか、この建物なんだ?」
明かりが点いていた建物は、別荘ではなく、ちょっと広めの一軒家のようだ。
家の横には看板が立っていて、この看板の明かりが、森の中から見えていた光の正体だった。
そして看板には、
「お宿『さつき荘』・・・」
と書いていた。