第9話:風邪をひいた日の話(その21)

文字数 853文字

「あっ、いや、これは、さっきシャワーを浴びてたからであって、特になんの意図もないんだ!!」

上半身裸で夏菜の前に出てしまい、あわてて誤解を解こうと説明してみたが、夏菜は真っ赤になって目をそらしてしまっている。

ああっ!もう!!
これじゃ、完全に変な人じゃん!!

何やってるんだよ、おれ~っ!

と後悔してしまったが、玄関でこんなやり取りをしているのを人に見れれても困るので、おれは夏菜の手を引っ張り、
「と、とりあえず中に入って!」
と言って、部屋に入れるとドアをバタンと閉めた。

夏菜を中に入れると、おれはそのまま部屋に戻り、
「ご、ごめん!
今すぐ、服着るから!!」
と言って、タンスから新しいパジャマを取り出し、急いで裸の状態を終わらせた。

服を着て、改めて夏菜のところに向かう。

夏菜は今日はピンク色のフリルの付いたワンピースを着ていて、またそれがよく似合っていて、かわいかった。

ううっ、いつもかわいい服で来るのはズルい・・・
だって、きっとまた、自分の理性を落ち着かせるのに苦労しそうだからだ。

それはさておき、夏菜に、
「さっきは、ごめん・・・。
お見苦しい姿をお見せしました・・・」
と謝ると、夏菜は首を横に振り、
「いえ、私の方こそ、ちゃんと連絡してから来たらよかったですね。
連絡せずに、急に来ちゃってすみません・・・」
と謝る。

夏菜を玄関で立たせたままだったので、
「さ、どうぞ、中に入って。
散らかったままで申し訳ないけど・・・」
と言うと、夏菜は、
「先生、もう大丈夫ですか?
しんどくないですか、熱はないですか?」
と心配そうに聞いてきたので、
「うん、だいぶん良くなったよ。
だから、こうして起きてシャワーも浴びれたしね。
昨日はそんな気力も無くて、すぐに寝ちゃったし」
と笑顔で答える。

すると夏菜は、ホッとした表情を見せ、
「そうですか、よかった・・・」
とほほ笑んだ。

ん・・・
なんだか良い雰囲気・・・

自分が病気だったことも忘れて、つい、夏菜に手を伸ばしそうになった時だ。

『グルグルグル~』

良い雰囲気をかき消すように、腹の音が鳴り響いた・・・。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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