第28話:二人きりの夜(その28)

文字数 481文字

宿の朝食はとても豪華で、卵焼きや新鮮なサラダ、焼き魚、煮物にみそ汁などたくさんあって、西森と二人で美味しく食べた。

本当はもっとゆっくり味わいたかったが、涼介と水野君が車で迎えに来ているので、そうも言っていられない。

身支度を整え、部屋を出る。

「忘れ物は無い?
じゃ、行こうか」

「ハイ、大丈夫です」

フロントに向かって歩き出すと、西森がおれの手をギュッと握ってきた。

「え?」

ビックリして振り返ると、西森が顔を真っ赤にしながら、
「そ・・・その・・・
外に出たら、こうやって先生と手をつないで歩くこともできないので・・・」
と言った。

本当だ。

おれもさっきまで『ずっとこのまま、西森と二人きりでいる時間が続けばいいのに』と思ってしまった。

離れたくない、けれど、離れなければいけない時間が迫ってきている。

つないだ手をギュッと強く握り返した。

「本当はずっと『夏菜』って呼んでいたいけれど、それに慣れてしまって、学校でも『夏菜』って呼んでしまうと困るから、また『西森』って呼ぶけど、西森がおれの彼女だってことは変わらないから」

そう告げると、西森はニコッと笑って、
「ハイ」
と答えてくれた。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み