第7話:二人の夏休み(その25)

文字数 744文字

「先生、どうしよう!
西森がどこかに行って姿が見当たらないだ!」

水野君が玄関を開けるや否や、そう叫んだ。

おれはビックリして、
「西森がいない!?
いったいどうしたんだ!?」
と水野君に聞くと、
「その・・・
西森に告白したんですけど、なんかパニックを起こしたみたいで、別荘の裏にある森の方に走って行っちゃたんです。
追いかけようかと思ったけど、追いかけたら余計西森を追い詰めるかと思って、そのままおれだけ帰って来たんですが、西森の姿が見えなくて・・・。」
とうつむきながら答えた。

西森が森に消えた・・・。

一瞬頭の中が真っ白になったが、次の瞬間、
「西森を探してくる!」
と言って、玄関にあった懐中電灯を握りしめて別荘を飛び出す。

後ろで水野君が、
「先生、おれも行きます!」
と叫んだような気がしたが、振り返りもせず森に向かって走った。

西森!
どこに行っちゃたんだよ!!

西森のことが心配で、傘もささずに飛び出したため、すでに全身雨でビッショリ濡れている。

でも、今はそんなことはどうだって構わない。

こんな雨の中、西森はきっと怖い思いをして森の中で泣いているかもしれないから、一刻も早く見つけ出さなくては!

おれは、水野君が『西森が消えた』と言って指さした森の中に足を踏み入れた。

初めてきた場所なので、この森がどれぐらいの広さでどんな形状なのか全く分からない。

おまけに雨はより激しさを増し、夜という設定も手伝って、ますます西森がどこにいるのか分からない状態になっている。

何の手がかりもないのに、あてもなく探し出そうとしているのは、あまりにも無謀な行動ではないのかと思った。

冷静になって考えたらそうだったかもしれないが、身体が動いてしまったんだからしょうがない。

だからもう今は、
「西森!
無事でいてくれ!」
と願うしかなかった。

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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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