第18話:トキメキ文化祭 

文字数 895文字

そんなこんなで始まった文化祭。

おれはカフェの入口に立たされ、客の呼び込みの仕事を言い渡された。

「なんか緊張するな・・・」

大学時代にカフェでバイトをしたことはあったが、こんなふうにコスプレさせられて接客をするのは初めてなので、不安が募る。

「ほら、高山ちゃん!
お客さんが来てるから呼び込み、呼び込み!」
と女子達が後ろから圧をかけてくる。

「え・・・」

顔を上げると、他クラスの女子達がいつの間にか目の前に集まっていた。

何事かと思い、目をパチクリさせていると、女子達は、
「わー!
高山先生、本当に執事になってるー!!」
「執事カフェに先生も参加するって聞いてたけど、本当だったんだ!
超かっこいいじゃん!」
と言って、おれの周りをグルッと取り囲んだ。

おれは苦笑いしながら、
「ハイハイ、カフェは教室の中でやってるから、どうぞどうぞ入って」
と中に押し入れようとしたが、女子達は、
「え~、そんなそっけない対応しないでよ。
『お帰りなさい、お嬢様』って言って、手を引いて中に連れて行って」
と無茶な要求をしながら腕を組んできたり、手を握ろうとしてきたりしたので、おれは焦って周りを見回した。

西森の姿は・・・無い。

教室の中だろうか?
それとも図書館にでも行ったのだろうか?

いずれにせよ、あまり見られたくない光景なので、ちょっとホッと胸をなでおろした。

さりげなく女子達をふりほどき、
「ハイハイ、お嬢様方。
わざわざ遠くからお越しいただき、お疲れが出ていると思いますので、ご休憩いたしましょうね」
と、執事っぽい言葉を並べて、なんとかカフェの中に押し入れた。

女子達は、
「え~、この先も先生に相手してほしいなぁ」
とブツブツ文句を言っていたが、教室の中の男子達に引き継ぎ対応をお願いした。

「最初からこんな感じだと、この後もいろいろ大変そうだな・・・」

そうぼやきながら再び受付に戻ると、『パシャリ』とどこからか音が鳴った。

と同時にカメラのフラッシュの光も感じたので、振り返ると、
「高山先生、執事のコスプレ、似合ってるわね!
記念に写真撮っておこう」
と先生仲間たちが3~4人やって来て、ニヤニヤ笑いながらスマホをこちらに向けているではないか。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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