第8話:先生のお誕生日(その6)

文字数 614文字

教室から少し離れた場所に出て、メールを開くと、
「西森!誤解しないでくれ!
おれは、決して軽い男ではない!!
女子達が何の話で盛り上がっているのか知らないけど、ウワサは鵜呑みにしないでくれ!!
それは完全にウソだから!」
との文字が。

必死過ぎる言い訳のメールを見て、
「何もこんなに否定しなくてもいいのに・・・」
とつぶやいて、携帯を閉じる。

うん、ちゃんと分かってる。

先生が軽く手を出してこないのは、私がまだ『高校生』で、先生は『先生』だから。

きっとそんな立場上の問題もあって、いろいろ抑えてくれているんだろうなぁ・・・。

それで充分だと思うのに、でも、何か物足りない。

『物足りない』って言っても、だからどうしたいとか、具体的な案は無いんだけど・・・。

教室に戻ろうとした時、少し離れた先で先生が立っているのが見えた。

先生はスマホをじっと見つめている。

私からの返信、もしかして待っているのかな・・・。

辺りを見回すと、あまり廊下に人が出ていない。

世間話をするぐらいなら、周りの人も変に思わないだろうと思って、
「あ、先生・・・」
と、声をかけようとした時、
「高山先生!」
と背後から誰かが先生を呼び止めた。

「え?」

ビックリして振り返ると、そこには保健の城山先生が立っていて、小走りで先生に近づいていく。

城山先生は良い香りの香水を漂わせながら、私の横を駆け抜け、先生のそばまで行くと、
「高山先生、再来週の土曜日がお誕生日なんですね!」
とうれしそうに言った。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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