第30話:二人きりの夜(その30)

文字数 828文字

「西森の好きな人って、先生じゃないですか?」

「え?」

本当は大きな声で「ええええええええ~っ!?」と叫びたかったが、そこはなんとか抑える。

動揺しないように必死にこらえているが、額からは変な汗がダラダラと流れている。

夏でよかった。

冬でこの汗だったら、間違いなく動揺しているのがバレていただろう。

おれはなるべく冷静を装いながら、
「何言ってるの、水野君。
西森がおれのことを好きなわけないじゃないか。
こんな『おじさん』を」
と言ってみた。

自分では自分のことを『おじさん』とは思っていないが、冗談でも言っていないと間が持たないような気がして。

水野君はじーっとおれの顔を見ると、
「そうですか?
おれは絶対、西森は先生のことを好きだと思うし、もしかしたら先生も・・・」
と核心的なことまで言ってきた!?

「え・・・」

もはや何と返答していいか分からなくなって、頭の中が真っ白になっていると、水野君が、
「あ、大丈夫ですよ。
おれ、絶対に誰にも言いませんし。
ばらして西森を悲しませるのも嫌なので」
と言ってニコッと笑う。

ダメだ。

完全に水野君のペースに巻き込まれていて、何一つ言い返せられない。

でも、ここで変に否定をすればするほど、余計ドツボにはまりそうなので、おれは黙っていることを選択した。

すると、水野君が、
「だから『ライバル宣言』です」
と言った。

おれは目をパチクリしながら、
「え?ライバル?」
と聞くと、水野君はうなずき、
「はい。
今は西森の気持ちは先生の方に向いているかもしれませんが、絶対おれの方に振り向かせますから。
自信はあるので、覚悟しておいてください」
と言って、またニコッと笑った。

その笑顔がまぶしすぎて、おれが女だったら、間違いなく水野君に惚れていたと思う・・・、じゃなくて!

えええええええ~っ!?
まさか水野君に「ライバル宣言」されるとは!?

せっかく西森と両想いになって、ラブラブな日々が待っていると思っていたのに、まさかの・・・

「この先、どうなっていくんだ・・・?」

★つづく★
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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