第8話:先生のお誕生日(その19)

文字数 795文字

私の声のテンションが低いので、先生は心配そうな声で、
「西森?
どうした、何があった!?」
と聞いてくるので、思わず、
「素敵なプレゼントが見つかりません・・・」
と言いそうになってしまった。

が、ハッと我に返り、
「いえ、そのっ!
お誕生日会、楽しみにしています!」
と言い換えた。

バカバカバカ!
『プレゼントが見つからない』とか言っちゃうと、また先生に気をつかわせてしまうことになるのに!

そう反省をしていると、先生が、
「う・・・うれしい・・・」
とポツリつぶやいたので、
「え?何がうれしいんですか?」
と聞くと、
「だって、誕生日会を楽しみにしているのは、おれだけかと思っていたから・・・。
西森は仕方なく付き合ってくれているのだと思ってたから、なんかうれしくて・・・」
と、今にもうれし泣きしそうな声を出している。

いつもだったら『何言っているんですか!』と冷たく突き放すところだけど、今日の私は素直みたいで、
「た・・・楽しみですよ・・・。
先生と久しぶりに二人きりでお話できますし・・・」
と本音を伝えた。

が、すぐに恥ずかしくなって、
「あ!もう塾に行かなきゃ!
ごめんなさい、切りますね!」
と、あわてて電話を切ろうとすると、先生は、
「塾、がんばって。
おれも夏菜と二人きりで誕生日、過ごせるのを楽しみにしてるから」
と言ってくれた。

「!!」

ううっ、ずるい・・・。
いつもは「西森」呼びなのに、こういう時だけ「夏菜」って名前で呼ぶの・・・。

電話を切った後もドキドキが止まらない。

この甘い気持ちを、しばらくかみしめていたかったけれど、本当に塾の時間が押し迫ってきていたので、私はあわてて『星のマグカップ』を手に取りレジに持って行った。

とりあえず、何か買っておかないと!

後から、何かを足せばいいことだし、マグカップだけは1つプレゼントとして確保しておかねば!

かわいくラッピングしてもらったカップを受けとると、私は急いで塾に向かった。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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