第10話:気になる気持ち(その10)
文字数 2,011文字
「に・・・西森?」
思わず接近しすぎて、顔をパッとそむけた西森。
強引に隣に座ったのがイヤだったのだろうか。
それで、おれのことを完全に嫌いになってしまったのだろうか。
いろんな不安が頭の中をグルグルとかけ巡る。
すると西森が、
「先生、さっきコンビニで言っていたことの続きなんですけど・・・」
と切り出してきた。
「先生は、私が1人でいるのがさみしそうに見えたから声をかけたわけじゃない、同情じゃない、と言っていましたが、じゃあどんな気持ちがあるから、私に声をかけたり、誘ったりしてくるんですか?」
西森はおれの方に振り返り、真剣な目で見つめてくる。
「そ・・・、それは・・・」
確かに、この感情は『同情』ではない、と言い切れる。
でも、改めて『どんな気持ちなの?』と問われると上手く言葉で表現することができない。
しかし、ここでまた逃げたり、はぐらかしたりすると、それこそ本当に西森のことを傷つけてしまう気がしたので、おれは覚悟を決めた。
「に・・・西森の・・・」
「西森の?」
緊張のあまり西森の目を見つめられず、うつむいていたが、グイッと顔を上げ、勇気をふりしぼって気持ちをぶつける。
「西森の『笑った顔』や『照れた顔』がかわいかったから、一緒にいたかったんだ!」
「!?」
言っちゃった、言ってしまった!!
この発言がさらに西森を困惑させることになると、100%分かっていたけど、これがおれの本心だから、仕方ないだろ!!
西森は案の定、突然の告白に驚いて、顔をさらに真っ赤にさせている。
そんな顔さえ、かわいくて仕方がない。
お互い、しばらく驚きと動揺で沈黙が続いていたが、先に西森が口を開く。
「かっ、『かわいい』って、冗談はやめてください!
私、そんなこと今まで1回も言われたことないんですけど!」
西森は自分の『かわいさ』を否定して、そして怒って、おれをメニューでバシバシ叩いてくる。
だけど、怒って叩いてくる姿でさえも、おれにはかわいく見えるんだ!
「冗談じゃないって!
おれが教師生命を危険にさらしてまで、生徒に『かわいい』発言をすると思うか!?
本当のことを言わないと、それこそ西森に失礼だと思ったから、本心を言ったまでだ!」
「教師生命を危険にさらすって、先生はバカですか!?
私が他の先生に告げ口したら、本当に失職しちゃいますよ!?」
『失職』・・・
確かにこの言葉はおれにとって重みがあって、西森が『バカ』というのも当然だと思った。
やはり、この行動は軽率過ぎたのか、心の中だけで秘めておいた方がよかったのか、今さらながら『後悔の念』みたいなものが頭の中をよぎっていく。
でも・・・
「職を失うことになったとしても、西森のことが気になってしょうがなかったんだ・・・」
「・・・」
お互い、気まずくなって黙り込んでしまったところに、
「りゅうちゃん、注文決まった?」
と、大将が部屋に入って来た。
大将の『のん気そうな顔』が、この気まずい雰囲気をいくらか和らげてくれたので、おれは少しホッとする。
「あ、注文ね、注文!
えーと、ちょっと待ってね・・・」
西森とワーワー言い合っていたため、何を食べるか全く決めてなかった。
というか、なんかもうドキドキしすぎて食欲が消え失せてしまったというか・・・。
焦って考えがまとまらないおれの隣で、西森が大将に、
「オススメはどれですか?」
と聞いている。
「オススメかい?
やっぱりうちの看板メニューの『スタミナラーメン』かな」
と言って大将はメニューど真ん中に載っている大盛もやしとチャーシューの上に、さらに大量のニンニクが乗っているラーメンを指しながら答えた。
「ほら、この時期『五月病』でスタミナが無くなっちゃう人が多いだろ?
そういう時はニンニクが効くんだよ。
疲労回復にはもってこいの栄養がたっぷり入ってるからね。
麺の量が多めだったら、少なくすることも可能だよ」
大将の説明を受けた西森は、
「へー、そうなんですね。
私も最近、勉強ばかりで疲れていたので、これ食べてみたいです」
と『スタミナラーメン』に興味を持ったようだ。
大将はうれしそうに
「じゃあ、スタミナラーメン1丁ね。
ニンニクはどうする?
この後、キスする予定とかあれば量は減らすけど」
と突然変なことを言い出したので、おれと西森はビクッと飛び上がった。
「ちょっ、大将!?
何を言ってるんですか!?」
おれはあわてて大将の口をふさごうとすると、西森が隣で、
「ニンニク、大盛でお願いします!」
と叫んでいる。
ガーン!!
これは明らかに『先生とキスする予定は無いです!』と宣言しているようなものだ!
いや、おれだって今日の今日でいきなりキスなんてしないけどさ!
でも、そんなあからさまに否定されるとショックすぎて泣きそうだ。
がっくり落ち込んでいるおれの肩を大将がポンと叩いて、
「りゅうちゃんは何にする?
スタミナラーメンにする?」
と憐れんだ目をしながら聞いてきたので、
「今日は『しょうゆラーメン』にします・・・」
と力なく答えた。
思わず接近しすぎて、顔をパッとそむけた西森。
強引に隣に座ったのがイヤだったのだろうか。
それで、おれのことを完全に嫌いになってしまったのだろうか。
いろんな不安が頭の中をグルグルとかけ巡る。
すると西森が、
「先生、さっきコンビニで言っていたことの続きなんですけど・・・」
と切り出してきた。
「先生は、私が1人でいるのがさみしそうに見えたから声をかけたわけじゃない、同情じゃない、と言っていましたが、じゃあどんな気持ちがあるから、私に声をかけたり、誘ったりしてくるんですか?」
西森はおれの方に振り返り、真剣な目で見つめてくる。
「そ・・・、それは・・・」
確かに、この感情は『同情』ではない、と言い切れる。
でも、改めて『どんな気持ちなの?』と問われると上手く言葉で表現することができない。
しかし、ここでまた逃げたり、はぐらかしたりすると、それこそ本当に西森のことを傷つけてしまう気がしたので、おれは覚悟を決めた。
「に・・・西森の・・・」
「西森の?」
緊張のあまり西森の目を見つめられず、うつむいていたが、グイッと顔を上げ、勇気をふりしぼって気持ちをぶつける。
「西森の『笑った顔』や『照れた顔』がかわいかったから、一緒にいたかったんだ!」
「!?」
言っちゃった、言ってしまった!!
この発言がさらに西森を困惑させることになると、100%分かっていたけど、これがおれの本心だから、仕方ないだろ!!
西森は案の定、突然の告白に驚いて、顔をさらに真っ赤にさせている。
そんな顔さえ、かわいくて仕方がない。
お互い、しばらく驚きと動揺で沈黙が続いていたが、先に西森が口を開く。
「かっ、『かわいい』って、冗談はやめてください!
私、そんなこと今まで1回も言われたことないんですけど!」
西森は自分の『かわいさ』を否定して、そして怒って、おれをメニューでバシバシ叩いてくる。
だけど、怒って叩いてくる姿でさえも、おれにはかわいく見えるんだ!
「冗談じゃないって!
おれが教師生命を危険にさらしてまで、生徒に『かわいい』発言をすると思うか!?
本当のことを言わないと、それこそ西森に失礼だと思ったから、本心を言ったまでだ!」
「教師生命を危険にさらすって、先生はバカですか!?
私が他の先生に告げ口したら、本当に失職しちゃいますよ!?」
『失職』・・・
確かにこの言葉はおれにとって重みがあって、西森が『バカ』というのも当然だと思った。
やはり、この行動は軽率過ぎたのか、心の中だけで秘めておいた方がよかったのか、今さらながら『後悔の念』みたいなものが頭の中をよぎっていく。
でも・・・
「職を失うことになったとしても、西森のことが気になってしょうがなかったんだ・・・」
「・・・」
お互い、気まずくなって黙り込んでしまったところに、
「りゅうちゃん、注文決まった?」
と、大将が部屋に入って来た。
大将の『のん気そうな顔』が、この気まずい雰囲気をいくらか和らげてくれたので、おれは少しホッとする。
「あ、注文ね、注文!
えーと、ちょっと待ってね・・・」
西森とワーワー言い合っていたため、何を食べるか全く決めてなかった。
というか、なんかもうドキドキしすぎて食欲が消え失せてしまったというか・・・。
焦って考えがまとまらないおれの隣で、西森が大将に、
「オススメはどれですか?」
と聞いている。
「オススメかい?
やっぱりうちの看板メニューの『スタミナラーメン』かな」
と言って大将はメニューど真ん中に載っている大盛もやしとチャーシューの上に、さらに大量のニンニクが乗っているラーメンを指しながら答えた。
「ほら、この時期『五月病』でスタミナが無くなっちゃう人が多いだろ?
そういう時はニンニクが効くんだよ。
疲労回復にはもってこいの栄養がたっぷり入ってるからね。
麺の量が多めだったら、少なくすることも可能だよ」
大将の説明を受けた西森は、
「へー、そうなんですね。
私も最近、勉強ばかりで疲れていたので、これ食べてみたいです」
と『スタミナラーメン』に興味を持ったようだ。
大将はうれしそうに
「じゃあ、スタミナラーメン1丁ね。
ニンニクはどうする?
この後、キスする予定とかあれば量は減らすけど」
と突然変なことを言い出したので、おれと西森はビクッと飛び上がった。
「ちょっ、大将!?
何を言ってるんですか!?」
おれはあわてて大将の口をふさごうとすると、西森が隣で、
「ニンニク、大盛でお願いします!」
と叫んでいる。
ガーン!!
これは明らかに『先生とキスする予定は無いです!』と宣言しているようなものだ!
いや、おれだって今日の今日でいきなりキスなんてしないけどさ!
でも、そんなあからさまに否定されるとショックすぎて泣きそうだ。
がっくり落ち込んでいるおれの肩を大将がポンと叩いて、
「りゅうちゃんは何にする?
スタミナラーメンにする?」
と憐れんだ目をしながら聞いてきたので、
「今日は『しょうゆラーメン』にします・・・」
と力なく答えた。