第9話:風邪をひいた日の話(その18)

文字数 621文字

「えっ!?」

夏菜が食べ物を持ってきてくれる!?

予期せぬ展開に思わず、驚いた声を出してしまった。

う、うれし過ぎる!

そのまま『はい!お願いします!』と返事をしそうになったが、寸でのところで『風邪をうつすかもしれないぞ』と心の声が聞こえたため、
「あ・・・」
と言葉をつまらせてしまった。

躊躇してしまい、何も言えず黙っていると、夏菜が、
「私が来たら、迷惑ですか?」
と、ぽつりととぶやいた。

「え!?」

夏菜の思いがけない発言にびっくりして、
「ち、ちがう!
迷惑なんかじゃない!!」
と否定すると、夏菜は、
「だって・・・
昨日から『お見舞いに行きたい』って言っても、先生はずっと断り続けているから・・・」
と答える。

しまった!!
断っている理由をちゃんと伝えなかったから、夏菜を不安な気持ちにさせていたんだ!!

誤解を解こうと、
「違う!迷惑なんかじゃない!!
本当は昨日から、ずっと夏菜に来てほしかった!
ずっと声が聞きたかったし、顔を見たかった!
一緒にいてくれたら、どんなに元気になれるかと思っていたけど、でも、風邪をうつしたら、かわいそうだし、迷惑をかけるし!
だから、本当のことが言えなかったんだ!!」
と素直な気持ちをぶちまけた。

『9歳も年下の女の子に何を言っているんだ、おれは・・・』と、言った直後に恥ずかしくなってしまったが、これが本当の気持ちだから仕方ない。

すると電話の向こうから、
「よ・・・よかった・・・。
嫌われていたわけじゃないんですね・・・」
と夏菜が言った。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み