第11話:教育実習生にメラメラ(その11)

文字数 979文字

「西森と中原先生、どうしたの?」

中原先生に校内案内をしている最中に、突然先生が現れた。

私は、びっくりして、その場で体が固まってしまっていたのだが、中原先生はパアッと顔を輝かせ、
「高山先生こそ、どうしたんですか?」
とうれしそうに先生の方へ駆け寄って行く。

「いや、職員室へ戻っていたんだけど、二人の姿が見えたから、なんか珍しい組み合わせだなあ、と思って」

そう言って先生は私の方をチラッと見た。

思わず目が合って、ドキッとしてあわててうつむく。

そんな私と先生のやり取りに全く気づいていない中原先生は、
「今、西森さんに校内の案内をしてもらっていたんです。
西森さん、優等生で頼りになると聞いたので」
と、うれしそうに言うと、
「ええ、西森は頭も良くてしっかりしていて、うちの学校の自慢の生徒ですから」
と、こちらを見ながらほほ笑む。

自慢の生徒・・・。

先生に褒められたけど、なんか全然うれしくない。

うれしさよりも、イライラ感が積もっていく。

というのも、中原先生が完全に私を放置して、先生と楽しそうに話しているからだ。

「案内といえば、この前、私が校内で迷子になっていた時も高山先生に助けていただいて、ほんとにありがとうございました!」

「いや、別にそんな大したことじゃないし」

「そんなことないです!
道案内だけじゃなくて、私が教育実習で不安になっている話も、ちゃんと聞いてくれて、アドバイスもしてくれて。
ほんとに優しくて、救われました!」

楽しそうに話している二人の会話を聞いて、「何それ」と思ってしまった。

先生は、道案内だけじゃくて、中原先生の相談にも乗ったんだ。

いつ?
どんなシチュエーションで?

なんだろ、急に心の中がどんどんモヤモヤしてきた。

というか、このイチャイチャしている二人を見ていたくない。

「あのー」

私が声をかけると、2人がこちらに振り返る。

「高山先生、中原先生に校内案内してあげてくれませんか?
私、模試のために休み時間も勉強したいんで」

「えっ!?」

明らかに先生は動揺している様子だ。

でも、そんなの関係ないし。

「じゃ、お願いします。」

私はそう言って、その場から離れようとした。

「おいっ、西森!?」

後ろで先生が何か騒いでいるけど、聞こえないふりをして教室に戻った。

ふーんだ。
二人で仲良く校内散策でもすればいいじゃない。

別に私は関係ないし、先生のことなんてどうでもいいし・・・。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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