第２５話：二人きりの夜（その２５）

「先生、先生」

ん・・・なんだ？

なんか西森の声が聞こえる・・・。

夢かと思い、眠さに勝つことが出来ず、まだ布団の中で眠り続けていると、
「先生、起きてください。
朝ですよ」
と言って、西森が布団の上からおれの体をユサユサと揺らした。

「えっ！？」

夢かと思っていたが、実際に体を揺らされたので、これは夢ではない！

ビックリして目を覚まして飛び起きると、目の前には、浴衣から着替えて朝の身支度を終えている西森が座っていた。

「ん？あ？
ええと・・・」

起きたばかりで頭が働かず混乱していると、西森が、
「おはようございます。
朝ですよ。
旅館の人が、朝ご飯を持ってきてくれるそうなので、早く起きてください」
と言った。

朝・・・

窓を見ると、カーテンの隙間から太陽の光が差し込んできていて、外ではすでに蝉の大合唱が始まっている。

「ミーンミーン」という蝉の大音量の鳴き声を聞いていると、だんだん頭が働き始め、昨夜のことを思い出した。

そうだ、昨日は森で遭難して、西森とこの宿に一緒に泊って、そして両想いになって・・・。

「夢じゃない！？」

おれが突然大きな声を出したので、西森はビクッと驚く。

「な、なんですか、急に大きな声を出して」

おれは西森の顔を見つめながら、
「りょ・・・両想いになれたこと、夢じゃないよな？
あれはおれの夢だったことじゃないよな？」
と聞くと、西森は、
「えっ！？」
と驚いたような声を出した。

ええっ！？
驚くってことは、おれの「夢」だったのか！？

夢か真実か分からなくなって動揺していると、西森がおれの手をギュッと握ってきた。

「に・・・西森？」

西森は頬を真っ赤に染めながら、
「ゆ・・・夢じゃないです・・・。
先生の『彼女』です・・・」
と言った。