第7話:気になる気持ち(その7)
文字数 1,558文字
「同情で飯に誘ったんじゃない!
純粋に西森と一緒にご飯を食べたかったから誘ったんだよ!
もっとおれは、おまえのことが知りたいんだ!」
『先生』という立場を完全に忘れて、西森に思いっきり今の自分の気持ちをぶつけてしまった。
さすがに最後の『おまえのことが知りたいんだ!』というセリフは、かなりマズかったかもしれない。
でも、叫んでしまった以上、もう後に引くこともできず、おれはドキドキしながら西森の反応を待った。
西森は最初、驚いたような表情を見せ、ポカーンとしていた。
が、すぐにおれから目をそらすと
「な、何なんですか、この前から!
先生は、私を困らせたいんですか!」
と、怒った口調で突っかかってきたが、いつものポーカーフェイスが崩れ、顔が真っ赤になっている。
耳まで赤くなって、どう対処したらいいのか分からずうつむいて困った顔をしている西森。
生徒に対して、こんなことを思っちゃいけないと分かっているけど、か・・・かわいい・・・。
いつもニコニコ笑っている女の子の笑顔ももちろんかわいいけど、普段めったに笑ったりしない女の子が急に見せる照れ顔や笑顔は、男にとって爆発的な破壊力を持っていて、おれは完全にノックアウトされてしまった。
いわゆる、これが『ギャップ萌え』というものだろうか。
でも、このまま西森を困らせ続けるのはかわいそうなので、
「い、いや、困らせたいわけじゃなくて、一人で飯を食うのがさみしかったから、西森と一緒に食べたいなあ~、と思ったわけで・・・」
と変な言い訳をしていると、
「一人でご飯食べるのがさみしいって、先生、何歳なんですか」
と西森が突っ込んできた。
25歳です、とも言えず、おれはガックリと肩を落とした。
「そ・・・そうですよね・・・。
1人で家に帰って食べます・・・」
さすがにこれ以上、イヤがっている西森を誘うと本当にしつこいだけの男になるので、今日のところは潔く身を引いた方がいい。
そう考えたおれは西森から離れ、パン売り場に向かおうとした時、急にグイッとシャツの裾を引っ張られた。
驚いて振り返ると西森がシャツをしっかりとつかみ、
「ちょっと待ってください、逃げるんですか?」
と詰め寄ってくる。
「に、逃げる?」
「そうです。
この前から散々人のことをふり回しておいて、今日も何か『言いたいこと』がありそうなのに、本当のことを言わずに帰ろうとするなんて先生は卑怯です!」
西森にそう指摘され、ギクッとしてしまった。
確かにそうだ・・・。
この前の夜も、そして今も、西森に意味ありげな言葉を投げかけるだけ投げかけておいて、西森に拒絶されそうになると怖くなって逃げ出してしまう。
そりゃ、西森も煮え切らないおれの態度にイラつくよな。
結局のところ、おれの頭の中には『先生』という立場の区切り線があって、西森のことが気になるけど、特別な感情を持って一線を越えてしまう勇気がないんだ。
『勇気がないなら西森にちょっかいを出すのは止めろ』
心の中の『もう1人のおれ』が叫んだ。
今ならまだ戻れる。
先生と生徒の関係でいられる。
頭の中ではそう自分に言い聞かせて、暴走しようとする心に急ブレーキをかけようとした。
が・・・
次の瞬間、体が勝手に動いていて、西森の手をギュッとつかんでいた。
西森は驚いてパッと顔を上げる。
「西森、今日も帰ったら勉強するんだよな?」
「そ・・・そうですけど・・・」
「じゃあ、勉強の邪魔にならない程度の時間でいいからご飯食べに行こう。
西森ともっといろいろ話をしたいし、言いたかったこともちゃんと話すから」
心臓の音が、西森に聞こえるのではないかと思うぐらい激しくドキドキ鳴っている。
25歳にもなって、なんでこんな年下の女の子にドキドキしているのか分からなくて、情けなくて仕方なかったが、西森と真剣に向き合いたかったから、まっすぐ目を見つめた。
純粋に西森と一緒にご飯を食べたかったから誘ったんだよ!
もっとおれは、おまえのことが知りたいんだ!」
『先生』という立場を完全に忘れて、西森に思いっきり今の自分の気持ちをぶつけてしまった。
さすがに最後の『おまえのことが知りたいんだ!』というセリフは、かなりマズかったかもしれない。
でも、叫んでしまった以上、もう後に引くこともできず、おれはドキドキしながら西森の反応を待った。
西森は最初、驚いたような表情を見せ、ポカーンとしていた。
が、すぐにおれから目をそらすと
「な、何なんですか、この前から!
先生は、私を困らせたいんですか!」
と、怒った口調で突っかかってきたが、いつものポーカーフェイスが崩れ、顔が真っ赤になっている。
耳まで赤くなって、どう対処したらいいのか分からずうつむいて困った顔をしている西森。
生徒に対して、こんなことを思っちゃいけないと分かっているけど、か・・・かわいい・・・。
いつもニコニコ笑っている女の子の笑顔ももちろんかわいいけど、普段めったに笑ったりしない女の子が急に見せる照れ顔や笑顔は、男にとって爆発的な破壊力を持っていて、おれは完全にノックアウトされてしまった。
いわゆる、これが『ギャップ萌え』というものだろうか。
でも、このまま西森を困らせ続けるのはかわいそうなので、
「い、いや、困らせたいわけじゃなくて、一人で飯を食うのがさみしかったから、西森と一緒に食べたいなあ~、と思ったわけで・・・」
と変な言い訳をしていると、
「一人でご飯食べるのがさみしいって、先生、何歳なんですか」
と西森が突っ込んできた。
25歳です、とも言えず、おれはガックリと肩を落とした。
「そ・・・そうですよね・・・。
1人で家に帰って食べます・・・」
さすがにこれ以上、イヤがっている西森を誘うと本当にしつこいだけの男になるので、今日のところは潔く身を引いた方がいい。
そう考えたおれは西森から離れ、パン売り場に向かおうとした時、急にグイッとシャツの裾を引っ張られた。
驚いて振り返ると西森がシャツをしっかりとつかみ、
「ちょっと待ってください、逃げるんですか?」
と詰め寄ってくる。
「に、逃げる?」
「そうです。
この前から散々人のことをふり回しておいて、今日も何か『言いたいこと』がありそうなのに、本当のことを言わずに帰ろうとするなんて先生は卑怯です!」
西森にそう指摘され、ギクッとしてしまった。
確かにそうだ・・・。
この前の夜も、そして今も、西森に意味ありげな言葉を投げかけるだけ投げかけておいて、西森に拒絶されそうになると怖くなって逃げ出してしまう。
そりゃ、西森も煮え切らないおれの態度にイラつくよな。
結局のところ、おれの頭の中には『先生』という立場の区切り線があって、西森のことが気になるけど、特別な感情を持って一線を越えてしまう勇気がないんだ。
『勇気がないなら西森にちょっかいを出すのは止めろ』
心の中の『もう1人のおれ』が叫んだ。
今ならまだ戻れる。
先生と生徒の関係でいられる。
頭の中ではそう自分に言い聞かせて、暴走しようとする心に急ブレーキをかけようとした。
が・・・
次の瞬間、体が勝手に動いていて、西森の手をギュッとつかんでいた。
西森は驚いてパッと顔を上げる。
「西森、今日も帰ったら勉強するんだよな?」
「そ・・・そうですけど・・・」
「じゃあ、勉強の邪魔にならない程度の時間でいいからご飯食べに行こう。
西森ともっといろいろ話をしたいし、言いたかったこともちゃんと話すから」
心臓の音が、西森に聞こえるのではないかと思うぐらい激しくドキドキ鳴っている。
25歳にもなって、なんでこんな年下の女の子にドキドキしているのか分からなくて、情けなくて仕方なかったが、西森と真剣に向き合いたかったから、まっすぐ目を見つめた。